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書くことで人は伸びる #90 情報の具体化

人は一人で成し得ることができることに限界があります。
だからこそ、組織などで利害関係者と協力し合います。
しかしながら、情報が曖昧で抽象的では利害関係者と共有することが困難です。

経験や勘に頼った抽象的な傾向が強く、それを共有したり再現することが難しいとされる代表がスポーツの世界かと思います。

対して、具体的な情報を駆使して科学的に進めていくIDという手法を用いたのが、プロ野球の故・野村克也氏かと思います。

野村氏と言えば選手としても三冠王になるなどの輝かしい実績を残されると共に監督としても、弱小チームを優勝させたり、選手育成あるいは再生など素晴らしい成果を上げられた方です。

IDとはImportant Dataの略で、 監督がチームを作り上げていく場合や選手がプレイする場合に、重要な情報を経験や勘に頼ることなく、ロジックを構築して具体化することによって、それを駆使して科学的に進めていくという手法です。

そのために野村氏が選手やコーチに課したのが、自分が話したことやボードに書いた図解などをとにかくノートに書かせることだったそうです。

ある記事において、野村氏がヤクルトの監督を務めていた当時の主力選手が次の様なコメントをされています。

「野村監督の基本的な考えは目に見えないもの、形にならないものをどう捉えるかということなんです。速い球を投げる、打球を遠くに飛ばすといった目に見える能力は才能で限界が決まる。どんなにがんばってもイチローみたいにボールを捉えることはできない。でも野球はイチローがそろえば勝てるというものでもない。弱いチーム、才能で劣る選手が集まったチームが強いチームを倒すために何をするか。駆け引き、データの活用、心理を読んだ攻め、そうした無形の力を駆使して有形の力で上回るチームに勝つ。それが野村監督の根本にある考えで、それまで自分が教わってきた野球というものの考え方にはまったくないものでしたね。」

野村氏が監督を務めたチームには、「野村ノート」と呼ばれたものがあったとされています。
組織で共有すべき情報は、曖昧で抽象的ではなく、言語、数値、図解などによって具体化させてアウトプットさせることが重要です。

「野村ノート」

これによって、初めて、目に見えないものや形にならないものが可視化、共有され、目的を果たすための問題意識を持つことが可能となります。

選手たちに配られた「野村ノート」には、野村氏の考えである組織理念や理論、技術などの情報が具体化されており、チーム内で共有されました。

また、野村氏は、「失敗と書いて成長と読むと教えている」と表現するくらいに「人間は失敗しないと覚えない。」といっています。
ところが人間は、20分経過すると42%、1時間経過すると56%、1日経つと74%も忘れてしまうのだといいます。(ヘルマンエビングハウスの忘却曲線より)

そのためにも、書かないと忘れるために、特に失敗したことは忘れないように書き留めさせることを徹底させたのだそうです。

ノートを取る目的には、大きく3つあると考えています。

1つ目は、情報を、そのまま再現するために記録することです。
情報を再現させることで、忘却しても、思い出したり、あらためて記憶させる効果があると考えます。
スピーチを、そのまま文字に起こすなどが、これに当たるかと思います。
この場合は、ノートでなくとも、パソコン入力、録画、録音などでも事足りるかと思います。

2つ目は、情報に何らかの思考を加える場合に、その脳内を可視化させる役割です。
例えば、問題提起的な情報であれば、脳内だけで思考を膨らませるのは限界があります。
ノートは、脳内の不透明な部分を可視化させてくれると考えます。

3つ目は、思考を働かせてノートを取ることで、内部記憶の短期記憶への定着を促進させることです。
つまり、忘却を抑止し、さらに思考の活性化をサポートし、促すことが期待できると考えます。
以上の考え方から、私は、記憶力、更には思考力を高めるためにも、ノートを取ることを推奨しています。

「書くことで人は伸びる」

如何に情報を具体化することが、マネジメント能力を高めることにつなげられるのかを再認識したいと思います。

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