谷底から羽ばたき始める騎士 ファンタジー短編小説

 かつて当時の王が逝去されたとき、諸外国の介入により国は王家争いで揉めようとしていた。あらかじめ逝去した王から密命を受けていた騎士の家柄であった我がウェスハー家は周囲を欺くため意図的に家を没落させ、当時の主わたし、デニスは国の裏側で国を狙う諸外国の人間たちと争いあった。

 それから二十年以上の月日が流れ、新たな王の元、国は繁栄していた。没落したされるウェスハー家は長らく貴族や騎士から蔑まれていた。それでも国のため身を砕いたわたしは必死に堪え続けてきた。王の命とはいえ先祖の栄光を意図的に汚したのだから。だが蔑まれる日々にも出口が見えてきた。

「ゲレオンよ、主のためそして国家のためにその力を使うのだぞ」

 手には先祖を守ってきた兜、体には先祖と共に戦場を駆けた鎧に身を包んだ息子ゲレオンに激励する。ゲレオンは知己である貴族に近々騎士として任じられる予定となっている。ゲレオンが騎士となればウェスハー家は再び表舞台で羽ばたくことができる。

「はいわかっています父上。必ずわたしの力を必要としてくれる方々のために務めます」

 気合に満ちた声でゲレオンは宣言した。没落の原因となっているわたしは表には二度と出れぬ。だからこそゲレオンよ。ウェスハー家に再度栄光を掴ませてくれ。 

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