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分類ってなんだろう-『分類思考の世界 なぜ人は万物を「種」に分けるのか』


日本で最も高い山といえば、富士山である。

では、日本で最も低い山はどこだろう?


現在日本で最も低い山は、宮城県仙台市宮城野区にある天保山(標高3m)と認定されている。
高さから見て、「これは山です」と言われてようやく山だと認識できるレベルの低さである。

(引用先)https://blogs.yahoo.co.jp/kroraina2/5604894.html


天保山の次に低い山も見てみよう。
日本で二番目に低い山は、大阪湾にある天保山(標高4.5m)と認定されている。下の画像の右真ん中に映る、小さな看板が立っている付近が、天保山の山頂である。

(引用先) https://www.travel.co.jp/guide/article/6351/

ただ、この2つの山を実際に調べて、写真を見て思ったのは、「山ってそもそもなんだろう」という疑問である。

山は高いものだと普通は認識しているので、山の定義など自明のように思える。だが、低い山に一度目を向けると、その自明の定義が崩れる。何が山なのかの境界がぼやけてくる。



現状では、国土地理院が「これは山だ」と認めたものが、山として認定されている。しかし、国土地理院は山の定義を明らかにはしていない。

Q2.8:山の始まりは、どこですか?

A2.8
国土地理院では、山の定義はしていません。
辞典等によりますと、山というのは,周りに比べて地面が盛り上がって高くなっているところと言われています。よって、山の始まりは平らな地面が盛り上がり始めたところと考えられます。ただし、それぞれの山によって異なりますので、地面の高さが標高○○m以上とか、地面の傾斜が○○度以上になったらというようには決めることはできません。もしあなたが、山の始まりはどこ?という興味をもったなら、その山の前に立って、この辺が山の始まりかなというところを感じて探してみてください。

(出典)「2 国土の情報に関するQ&A|国土地理院」http://www.gsi.go.jp/kohokocho/FAQ2.html


三中(2009)によれば、こうした「山とは何か」という定義の問題は、分類が一般的に抱える問題そのものだという。
ここでいう後者の問題というのは、本来分けられないはずの大地の連続的な凹凸を、「これは山である/山ではない」の二者択一のグループに分ける行為そのものを指している。


「連続なつらなり」からいかにして「離散的な群」を切り出すのか-分類という行為の根幹はまさにそこにある。そして、元々分けられないものをあえて分けるという、分類そのものが抱える原罪的難問が同時に生じる。

(出典)三中信宏(2009)『分類思考の世界 なぜヒトは万物を「種」に分けるのか』講談社
強調部分は引用者。

普段、私たちは何気なく分類を行っているが、この行為は案外問い詰めたら複雑で、答えの見えない深い部分が詰まっているのかもしれない。そんなことに気づかせてくれた本である。

本書を読み進めると、専門科学としての分類学に突っ込んで、より学術的な話が展開されていく。そのため、読むのに少し骨は折れるかもしれないが、ぜひおすすめしたい1冊。






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