見出し画像

スーパーマーケット文学 〜ライフは私の人生でした。〜

原始、ライフは太陽であった(個人的には)(このフレーズが使ってみたかっただけ)。

今は昔、私こと綿生しあのは数年だけ東京で働いていたことがありました。東京に憧れて……というよりは、犬も歩けばブラック企業に当たる勢いで転職活動が下手だったため、出稼ぎ労働者の心持ちで上京したのであります。

そんな私が東京で一番困ったのが「馴染みのスーパーがない」問題でありました。私が関東出身であれば話も違ったのでしょうが、関西ほのぼの村(こりん星やちぇるちぇるランドの類)出身の私にとって、東京を筆頭に関東圏のスーパーはどれも馴染みが無かったのです。

「土地勘」ならぬ「スーパー勘」がない……!

関西で耳馴染みのあったスーパーの多くは関西のみを拠点にしているし、東京で見付けたスーパーを検索してみると関西には出店していない。なんという分断。なんというカルチャーギャップ。

私は衝撃の事実に直面し、膝から崩れ落ち、わなわなと肩を震わせ、これからの人生をどのように生きていけば良いものか、途方に暮れました。

私は、どこのスーパーに行けばいいの……!?

東京での暮らしや仕事には少しずつ慣れていくのに、生活もルーティン化していくのに、馴染みのスーパーだけがない。私は仕事が早く終わる度に自転車で近隣のスーパー探索に東奔西走しました。見慣れぬ街をチャリで爆走するのは怖いものです。一度すっ転んで死ぬかと思いました(マジで)。

そんな迷える子羊のソテー赤ワインソースの私を天は見ていてくれたのでしょうか。ついにある日の夜(と言っても上京から割と早い段階で)、救いの手が差し伸べられました。

そう、私は「ライフ」と出会ったのですーー!

ライフは関西出身ながら関東にも出店している手広いスーパーで、店内は清潔な印象で品揃えも良く、価格は高くもなく安くもないけれど品質が安定していて、営業時間も長く、一人暮らしを始めたばかりの私にとっては条件もぴったりでした。

本当のことを言えば、関西にいた頃もライフに行ったことは一度もありませんでした。だけどチラシを見たことは何度もあったし、この「東京」という無縁スーパー地帯において、ほんの少しでも関西のにおいを含むお店には強い安心感があり、そして私は決めたのです。ライフについて行こうと。これからライフを愛していこうと。

それはさながらマッチングのようなものだったのかもしれません。それとも本当は一目惚れだったのでしょうか。

条件で出会った私とライフは、幾度もの逢瀬を重ねて親交を深め、時には大量の見切り品に無邪気にはしゃぎ、閉店間際の店内をほたるの光と追いかけっこして(ほたるの光じゃなかったかもしれない)、やがて愛は生まれ、私たちは永遠の絆で結ばれたのです。

病めるときも健やかなるときも
ライフを愛し
ライフと共に生きていくことを
ここに誓いますか……?

心底ライフを愛した私は、友達や会社の人にまでライフの良さを語るようになり、ライフの伝道師となりました。あの頃の私は本当にライフと共に生きていた。ライフは私の生活を支え、ライフは私の人生でもあったのです。

だけどどうしてでしょう。愛し合う二人の「永遠」は少しずつほどけていきました。

私はより良い「ライフ」を求めて二人目のライフの元へと通うようになりました。もちろん一人目のライフのことも愛してはいましたが、ライフは枝でありながら幹でもあり、いくつもの分身を持っていたので、私は二人目のライフも一人目のライフもさほど変わりがないとどこかで感じていたのかもしれません。

私は二人目のライフに走り、一人目のライフを忘れ、やがて一人目のライフが住む土地を離れることになりました。二人目のライフが住む土地はもっと輝いて見えたからです。私は荷物をまとめ、かつての「ライフ」と出会った土地を、二人が愛し合った土地を、去ることにしたのでした。

結局は二人目のライフとの生活は始まる前に終わってしまい(諸般の事情)、もはや何を言っているのかわからなくなってきましたが、私は今でも思い出すのです。

深夜見慣れぬ町並みを、ライフの明かりを目指して自転車を漕いで走ったあの夏のことを。真っ暗闇の東京の路上で、関西の実家で眺めていた新聞チラシのあのマークと同じ看板に向かって、ただただ真っ直ぐ向かっていった夜のことを。

どんなに離れても、ライフは私の人生です。



ご清聴ありがとうございました。(ハンターハンターの読みすぎで熱が出たので自分でも何書いてんだかわかりません笑)


――――――


「#スーパーマーケット まとめ」noteマガジンが面白かったので私も書いてみたらこんな怪文になってしまいました。🍅





HAPPY LUCKY LOVE SMILE PEACE DREAM !! (アンミカさんが寝る前に唱えている言葉)💞