見出し画像

要塞都市マレーシア・マラッカと華人

マラッカの様相

先日マラッカを訪問した。シンガポールからはバスで約3時間ほど。
陸路で国境を超えるということは、日本人にとっては少し馴染みのないもので、かく簡単に異国へ旅することが出来るのは不思議な感覚である。


マラッカ海峡の中心に位置


マラッカは、オランダ・スペイン・イギリス・日本、と複数の植民地された歴史を持ち、都市の中心部は要塞の遺跡が残っている。
数百年前までは、マラッカは、名の通りマラッカ海峡の拠点であり、地政学上重要な役割を担っていた。欧州とアジアを航海する船はこの海峡を通る必要があるため、先進国各国はこの場所に拠点を構えようと争っていたわけである。今となっては、その座はシンガポールに譲ってしまった感はぬぐえないが、マラッカ政府としてはその役割を取り戻そうと尽力しているようである。
一方、中国は一帯一路の重要なポイントとしてマラッカに強い眼差しを向けており、町中に中国政府と関係のある標識や、開発計画などが掲示されていた。ただこの開発計画は5年以上も放置されており、特に進展は見られないようである。

中国との国交を祝う看板
多くの要塞遺跡が残る

華人の街

マラッカの人々の多くは華人である。この点は、マレーシア的でなく、シンガポール的である。マレーシアは国全体でみると、マレー系が最も多く、中華系は4割ほど。一方のシンガポールは中華系が最大で、7割との統計だ。

中華系の店が立ち並ぶ街角


彼らの祖先は中国潮州からの移民である点もシンガポールと共通しているが、今の世代が話す中国語には違いがある。
シンガポールでは華語(≒普通話)を話すのに対し、マラッカでは各地方方言が話されている。
マラッカの華人も華語を話せるようではあるが、本当に聞き取りづらい。Grabの運転手や街角のおばさんと話しても、「外国人が話す中国語」といった感じであり、声調も有気音
・無気音間の区別もいい加減であるため、中国東北地方の発音方式で学ぶ中国語学習者にとっては、かなり理解しづらい。
(これはネイティブスピーカーも同様のようである。Youtubeでマラッカ旅行の動画を見たが、字幕が「???」「#@^*$」との表記となっていた(苦笑))

ゆとりのある時間

また、性格にも違いがみられ、シンガポールよりも、田舎っぽい。語弊がないようにいうならば、形式的でない。
シンガポールでは、お店で物を買った場合、店員のルールとしてお礼を言うし、顧客もそれを期待している。日本と同じだ。
一方、ここでは、過剰なサービスはもちろん、店員からのお礼もない。確かに彼らの給料に直結しているわけではない(いくら売れても給料は変わらない)ので、特に何もルールがなければ、お礼を言うモチベーションもないし、本来顧客と店は公平な立場という考えかもしれない。
日本人の店員は、異様なほどにお客様に感謝を示すが、それは本心というよりかは、そういうルール・形式みたいなものがあり、そこに忠実なだけであるように思った。

一方で、マラッカの人には人情・温かさがある。シンガポールは、ビジネスライクで他人とは陌生(他人行儀)な感じがするし、皆が生き急いでいる都市という印象がある。
ここは、昔の中国地域のコミュニティが強く残っている都市であり、人への話し方、接し方もリラックスした感じがある。
都市化が進み、ホワイトカラーのビジネスマンが増えてくると、仕事優先や個人主義的になり、このようなコミュニティは徐々に消えてしまうのかもしれない。

いずれにせよ、マラッカで流れるゆとりのある時間は心地よかった。
ずっと、生き急ぐ都市に居続けるよりか、こういった人間らしい街で時間を過ごすのも、人生には有意義なものだと思った。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?