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"最強"サムライブルーの明日はどっちだ?

通算戦績1勝2敗1分け。一見すると、サッカー日本代表がW杯ロシア大会で残した戦績は、これまでの日本代表の実績と同じくきわめて残念な結果と言える。ただ今回が異なるのは、どの試合も内容が抜群に良いところだ。いずれも格上相手にもかかわらず、臆することなく立ち向かい、"油断ならない日本"を世界に印象づけた。歴代の代表のうち、こんな痛快なチームは他になかった。悲願の8強入りこそ逃したが、"最強"サムライブルーと呼んでも良いだろう。今後、伝統の"詰めの甘さ"という悪い習慣が治れば、南米や欧州の強豪と肩を並べることも夢ではなさそうだ。

お決まりのパターン

「またこのパターンになったね」ー。一緒に夜なべしてテレビ観戦していた奥さんががっかりした表情でポツリとこぼした。8強入りを目指したベルギー戦。日本代表が2点先行するも残り20分強で逆転され、W杯敗退を告げるホイッスルが吹かれた後、しばらくしてからのことだった。

奥さんはそれほどサッカーに興味があるわけではない。ただ日本代表の試合に限っては、少なくともここ5年間、ほぼ全試合を見ている。こうした中で、先行しても逆転されるというイメージが自然に植え込まれたのかもしれない。そして、その思いは十分に共感できる。

日本代表がW杯に出場したのは今回を除いて全部で5回。このうち、06年ドイツ大会と14年ブラジル大会は先制しながらも逆転負けを喫した。今大会は初戦でコロンビアに勝って以降、勢いに乗っていただけに「またか」という思いが特に強い。

決めきれず守りきれない

代表チームを率いた西野朗監督はベルギー戦後のインタビューで「2点を先取したメンバーをそのままにして3点目を取りに行くという気持ちが強くあったし、そういうチャンスもあった」と話す。ただ、そこでどうしても決めきれない姿はこれまでの代表チームとほとんど変わらない。

リードしても守りきれないことも同様だ。韓国メディア「スポーツソウル」は日本代表が敗れた理由について「体格の良い相手に弱い弱点がそのまま表れた。日本は韓国やイランに比べて技術力はあるが、代わりにフィジカルは弱い」と見る。癪に障るが、実に的を射た評価と言える。

こうした詰めの甘さは代表メンバーもそれぞれ自覚があるようだ。代表DFの吉田麻也選手は「試合の終わらせ方とか試合の運び方は、まだまだベルギーのような大国とはだいぶ差がある」とする。こうした教訓が次代の代表チームに生かせれば、将来はそう悲観するものでもなさそうだ。

海外メディアも評価

今大会の日本代表チームは"歴代最強"と言えるほど強かった。海外メディアでも評価がうなぎ上りだ。8強入りを争ったベルギーのヘット・ラートステ・ニュースは「歴史に残る試合。ベルギーは生き残った。サムライブルーは驚くほど強かった」と健闘を称えた。

英BBC放送(電子版)は「勝って準々決勝に進んだのはベルギーだが、感銘を与えたのは日本。この試合のMVPの乾を含めて日本の選手の評価はベルギーの誰よりも上だ」とする。英スカイスポーツは最も輝いていた選手に敗者側の吉田麻也選手を選出するなど異例の扱いだ。

独ディーツァイトは「今大会のベストシーンには日本は確実に含まれるだろう。W杯に何かを残した。22年のカタール大会の彼らに期待している」とし、さらに前独代表監督のクリンスマン氏も「彼らは顔を上げて帰国するだろう。最後まで戦い、自分たちの強さを証明した」と称賛した。

同氏は次期日本代表監督の最有力候補として名前が挙がっている。そのほか、伊トゥット・スポルトが「素晴らしいまでの犠牲精神をアイデンティティーとする不屈の日本は頭を高く上げてロシアを去る」、スペインのマルカが「技術的には最高だった」と報道するなど、枚挙にいとまがない。

存在感示した喜び

無論、多分に追従もあるだろう。韓国のスポーツソウルは日本代表の敗退を「虚しい敗北」とし、「アジアで16強を通過したチームは、未だに02年の韓国だけだ」と相変わらず見下した物言いだ。ほかにも日本代表の健闘を称えながらも、本音では認めていないメディアがありそうだ。

ただW杯という大舞台で、今大会の日本代表が"南米の雄"コロンビアを破り、躍進著しいセネガルと分け、欧州の強豪であるポーランド、優勝候補の一角を占めるベルギーと競った実績は否定できない。決して"安牌"ではないことを幾らか世界に示し、それが我が事のように嬉しい。

(写真〈上から順に〉:ベルギー戦後の日本代表=サッカーキング、代表MF・香川真司選手〈写真左下〉=フットボールアクション、代表チームを率いた西野朗監督=超ワールドサッカー!、日本代表監督として有力視されるクリンスマン氏=ハフポスト)


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