平成最後の誕生日（下）

平成最後の誕生日、奥さんがバースデープレゼントをくれた。SONY製のワイヤレスヘッドホン。デジタル機器の近距離間データ通信に使う無線通信技術「ブルートゥース（Bluetooth）」に対応するため、コードレスであるほか、耐水機能も備え、スポーツクラブで泳ぐときにも使える優れものだ。このヘッドホンとは長い付き合いになりそうだ。

※「平成最後の誕生日」3部作：「"蛮勇"はいらない」「父からの返信」

ワイヤレスヘッドホン

いつも欲しい欲しいとは思っていたが、長いコードの煩わしさを我慢さえすれば、音楽を聴くなどの目的は達せられるため、敢えて購入を控えていた。そんな姿を見兼ねたか、あるいは月ごとに決まった会員料金を支払っている割に、ほとんど利用していないスポーツクラブに通うよう促しているのか。奥さんの思いは分からないが、とてもありがたい。

早速、このヘッドホンを周囲のパソコンやスマートフォンに認識させて使えるようにした。とても良い。実のところ、奥さんも欲しかったらしく、使い勝手に興味津々。そのため、奥さんのスマホにも認識させて試してもらった。Tシャツの裾で、イヤーパッドを軽く拭いて手渡す。奥さんは一瞬ためらったものの、ヘッドホンを受け取り、耳に付けて目を見開く。

ためらいのワケ

気に入ったようだ。奥さんは音質が良いBOSE製とどちらにするか最後まで悩んだとのことだが、SONY製も及第点に達した模様。誕生日に関係なく、次は奥さんのヘッドホンを買う番だ。その際の参考にすることにしよう。ところで気になったのは、奥さんがヘッドホンを受け取る直前の一瞬の躊躇。そのことを奥さんに尋ねると、再びためらいがちに一言：

「だってイヤーパッドに耳あかが付いているかもしれないじゃない」

なるほど、分からない理由でもない。気にすると嫌がるだろうから、敢えてジョークにもしなかったところもある。苦笑いを浮かべるだけの反応にとどめ、「奥さんのヘッドホンを買うまでは、このヘッドホンを共有して使えば良い」という提案は口にせず、腹の底にグッと落とし込む。一つ年輪を加え、そんな大人の対応ができるようになった自分を褒めてやりたい。

（「平成最後の誕生日」3部作おわり）

（写真〈上から順に〉：水中でも音楽が聴けるワイヤレスヘッドホン「WF-SP900」、防塵機能も装備、さまざまなスポーツシーンに対応＝いずれもソニーHP）