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白い糸

ー世界に広がる腹痛リスク

サンマやサバなどに付く寄生虫。"赤い糸"と言えば、ラジノリンクス。一方、"白い糸"と言えば、アニサキスだ。激しい腹痛や吐き気を伴う「アニサキス症(アニサキスによる食中毒)」を引き起こし、タレント・渡辺直美やお笑い芸人・山里亮太らが相次いでかかったことでも知られる。マスコミに取り上げられることもしばしば。そのせいもあり、ラジノリンクスに比べて知名度が高い。厚生労働省によると、直近3年間でアニサキス症の患者数は、毎年300人を超えている。

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氷山の一角

厚労省の資料では、2018年のアニサキス症の患者は478人と、500人に達しそうな勢いだった。19年は338人と前年に比べ100人以上減って落ち着くかに見えたが、20年は396人と再び勢い盛り返している。21年はどうかー。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う"巣籠もり"がアニサキス症患者の増減にどう影響するかに注目したい。

21年の日本の総人口は1億2557万人。このうち、アニサキス症患者を400人前後と想定。この割合を見て、多いと考えるか少ないと考えるかは、その人次第ということになるだろう。もちろん、患者数は海外に比べて圧倒的に多いが、日本人に刺身や寿司といった生食文化が根付いている背景を踏まえると、意外に少ないようにも見える。

ただ、この数値を氷山の一角に過ぎないと見る向きもあり、年間2000ー3000人以上との推定も過去にはある。魚をさばくと、そこそこの確率で"白い糸"を見かける経験からすると、こちらの推定が妥当かもしれない。東京顕微鏡院によると、20年10月から12月に発生したアニサキス症78件について、原因としてアジやサバの刺身が多く、寿司、海鮮丼も目立つという。

ゾッとする試算

海外も決して安心とはいえない。米ケーブルニュース局CNNのウェブサイト版では、17年に「スペインでは約8000件発生している可能性がある」との記事を掲載した。スペインでは、生、あるいはマリネにしたアンチョビ(カタクチイワシ)の消費が多く、アニサキス症の腹痛リスクにさらされているという。試算とはいえ、鳥肌が立つ話だ。

世界的な寿司ブームもある。"白い糸"のリスクは一段と広がりそうだ。

(写真:『りすの独り言』トップ画像=フリー素材を基にりす作成)

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