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【ファジサポ日誌】73.再びの緊急事態~第35節モンテディオ山形vsファジアーノ岡山~

朧げな不安が支配する週末でした。
週中、有料記事により離脱者が発生している現状が伝えられました。
チームの情報管理という観点からは不要な情報とも思えましたが、今シーズン初の4連勝をマークし、チームへの更なる期待感も高まっていた現状を踏まえますと、緊急事態の発生についてサポーターの心の準備も必要であったのかもしれません。

コロナなのかインフルエンザなのかはわかりませんが、どうやらチーム内ではクラスターが発生、この山形戦が近づくに伴い離脱者が断続的に発生していた模様です。出場メンバーの確定も試合当日朝まで出来なかったとのことでした。
チーム史上初の5連勝を目指す中で、このような事態が発生するとは皮肉なものです。

予兆はありました。
岡山県内の小中学校を中心にインフルエンザによる学級閉鎖が度々発生していましたし、個人的に企業等での感染者の増加、医療機関受診者の増加も伝え聞いていました。チーム内でもこれまで何度か数人の選手が「体調不良」で欠場することはありました。しかし、そうした(おそらく)感染はこれまで幸いにも単発的なもので済んでいて、今回クラブとしてクラスターを想定するのは困難であったという気が致します。

ましてや、今シーズンは社会全体が日常を取り戻そうとしている動きの中、クラブも段階的にファンサービスの解禁等に踏み出しました。これらの交流や選手の日常生活の自由に再び制限をかけるには相当の根拠が必要です。

レビュアーとしてはこのようなチームに降り注いだ困難を対戦相手の山形との因縁めいたモノに結びつけたくなる気持ちも湧きますが、結びつけてもその根拠は非科学的で結論は「因縁は残った」となるだけですので、この点については述べません。

それよりは昨シーズンの経験、チーム内でコロナ感染者が急増し、即席メンバーで臨んだ約1年前の横浜FC戦の経験を活かせないのか、学べるものがないのか、そちらへと筆者の意識は傾いていました。

約1年前の横浜FC戦も出場停止も含めて主力9人が離脱する非常事態でした。当時は前線のミッチェル・デュークに当てて中盤の選手の運動量でセカンドボールを回収するサッカーをやっていましたが、この試合ではパスワークを主体に横浜FCゴールに迫っていたことがわかります。

つまり、チームコンセプトというよりは出場選手の特性に合った戦法を優先したことになります。
もちろん、当時とはメンバーも大きく異なりますが、今回の山形戦ではチームはどのような戦法を選択するのか?
筆者が大きく注目した点です。

1.試合結果&スタートメンバー

J2第35節 山形vs岡山 時間帯別攻勢守勢分布図(筆者の見解)

残念ながら緊急事態を跳ね返す勝利とはなりませんでした。
結論から述べますと、今シーズン取り組んできた繋ぐサッカーを継続していましたが、大幅なメンバー変更の影響は大いに見てとれました。
岡山としてはメンバー構成に不利がありますから、いつもよりも巧みに試合をコントロールする必要がありましたが、この点については最初のプレーが全てであったと思います。

J2第35節 山形vs岡山 スタートメンバー

そのメンバーについて振り返ります。
サブのメンバーがGKを除いて全て攻撃的な選手であったことから、この試合でベンチ入り可能なFPは全て山形に連れてきたのだと推測します。
現在の主力級では(5)柳育崇、(43)鈴木喜丈、(41)田部井涼、(48)坂本一彩、(19)木村太哉が欠場、また守備的なバックアッパーとしては(4)濱田水輝、最近練習やTMで評価が高まっていた(20)井川空も不在でした。

2.レビュー

(1)不在選手の「穴」について

① 柳の穴=バイスの衰え

特にCB(5)柳育崇とFW(48)坂本一彩の不在は勝敗に影響を与えたと思います。
率直に述べますと(5)柳の代わりにCBの中央を務めた(23)ヨルディ・バイスの状態がよくないと感じました。失点の場面ではRCB(15)本山遥が自身のサイドをガラ空きにしたことを悔やんでいましたが、最初のキックがあそこまで浅くなるとは、(15)本山に限らず味方も想像がつかなかったと思います。
LIH(27)河井陽介の試合後のコメントは、意識的な部分に寄せられていましたが、この試合での(23)バイスの左足のキックはRWB(17)末吉塁への惜しいロングフィードがあった右足と比べると、利き足でない点を差し引いても以前より力強さがなく、ビルドアップで危険なシーンもありました。その点に山形のねらい(岡山の3CB脇を攻める)が重なっての失点であったと思います。

山形(10)チアゴ・アウベスの利き足(右)を消しにいったのかとは思いますが、シュートに対する寄せの甘さも気になりました。この一連の(23)バイスの不安定な立ち上がりを観て、ひょっとしたら今日は大量失点があるのかもしれないと背筋が寒くなったというのが本音です。

岡山にとって幸運であったのは、先制点を奪って以降、前半の山形が引き気味になったことでした。直近の山形は、町田、清水と上位陣との対戦が含まれていた点を差し引いても3試合で9失点と守備に課題を抱えていました。
まずは守備を固めてリードを保つことを優先したのだと思います。
山形の守備ブロックは最初5-3-2、その後4-4-2に変わっていたように見えましたが、前節対戦した仙台と比べると陣形がそこまでコンパクトではなく、最終ラインで跳ね返す意図を持っているように見えました。
よって岡山は比較的容易に山形のライン間でボールを受けることが出来ていたと思います。前半途中までの岡山のボール保持率が68%に達し、決定機を創り出せていた要因は山形側の試合運びにもありました。

話をいったん(5)柳の穴の件と申しますか(23)バイスの話になってしまっていますが、この件に戻します。
仙台戦では(15)本山の持ち出しが、相手陣内でギャップを生み出し効果的でした。この試合でも(15)本山の良い持ち出しがあったのですが、持ち出しの回数自体が少なかったと思いますし、全体のラインを押し上げる効果という点でも不足していたように感じました。
その原因は、岡山が途中から山形の攻撃のねらいを外すべく、(17)末吉塁を下げた4バックで守ったことにもありますが、(23)バイスが攻撃時に前方へ上がっていくことも影響していたと思います。つまり上がった(23)バイスの後方を(15)本山がカバーしていた。これも大きかったと思います。
これらの細かい動きの約束事については、さすがに詰め切れてなかったと感じました。(23)バイスにとってはいつもどおりのプレーなのですが、現状のチームのストロングを出すには(15)本山がもっと上がれる状況を創り出したかったところです。

(15)本山に限らず、この試合ではGK(1)堀田大暉も普段以上に最終ライン中央をカバー、そしてこちらも急造CBとなった(2)高木友也もかなり中に絞る場面が多かったと思います。最終ライン全体で中央をケアしているように見えました。しかし、(2)高木が守備に気を遣う分、LWB(42)高橋諒へのサポートが手薄となり、仙台戦と比べると左サイドからの攻撃が(42)高橋の単発で終わる場面も多かったです。

(23)バイスが中央に入るのは久々であったと思いますが、今までであれば、こういう状況だからこそ燃え上がるような闘志を見せつけてくれていたと思います。それが今、少なくともサポーターにわかりやすいような形では見えない。以前のレビューでも書きましたが、おそらく心身共にベストではないのだと推測します。その上で周囲の若手の自立を促しているようにも見えるのです。ファジゲートの有料記事なので引用はしませんが、試合後の(15)本山が失点に繋がった(23)バイスのキックに対して、批判とも読めるコメントを残していました。この事は見ようによっては、もう(23)バイスが特別な選手ではなくなったことも意味しているのかなと筆者は思いました。(23)バイスに意見をするといった若手の精神的自立も見てとれるのです。

② 坂本一彩の穴
(48)坂本一彩の中盤に下りて受けて前線に持ち運ぶ能力は、今の岡山にとって唯一無二のものです。シーズン後半戦のキーマンを(48)坂本と考えるサポーターも多かったと記憶しています。
この(48)坂本の欠場により中盤に下りてくる人がいなくなった、(6)輪笠祐士や(44)仙波大志をサポートする人がいなくなってしまったのです。実は試合では(48)坂本の動きをカバーしようとしていたのが(7)チアゴ・アウベスであったような気がします。
相棒が前で収める(18)櫻川ソロモンであった影響もあると思いますが、(7)チアゴが一列下がる、そしてサイドで起点をつくるシーンが普段以上に多かったように見えました。この動きは意識的、意図的であったと思いますし、実際にチャンスも創ってはいました。しかし、岡山のトップスコアラーとしての(7)チアゴの強みを出せれていたかというと、そうではなかったと思います。

最近の(7)チアゴのゴール、決定機を思い出しますと裏抜けの場面が多かったと思います。「裏抜け」が現状の(7)チアゴの最も得意とする形といえます。ところが下がって受けることで(7)チアゴ自身が裏に抜ける場面は少なくなる、そして相手DFを前に置いてシュートを撃つ場面が増えてしまいます。そうなると左足の力に頼ることになる、シュートブロックにあう、力んで浮かしてしまう訳です。
また裏を狙うにしても、マイボールをすぐに(7)チアゴに蹴り出すので、相手DFとの駆け引きの時間もつくれていなかったように見えました。
この試合で(7)チアゴは7本のシュートを放ちましたが、不発に終わった理由はこの点にあったかと思います。

では岡山はどうするべきであったか?
今まで筆者のレビューをお読みくださってる方は勘づかれるかもしれませんが、「もっと河井」に預けてほしかったと思うのです。
預けてる場面もありましたが、同時にそこで預ければもっと時間つくれるのにと感じる場面も多かったです。これは(27)河井の加入後ずっと感じていることです。

(2)ソロモンに光は見えているが…

主要選手の穴を感じさせながらも、勝機はあったと思えたこの山形戦です。
(18)櫻川が2度の決定機を決めていればと思わずにはいられません。
しかし、彼の決定力不足という課題にも光は見えていると感じました。

本当は、彼がゴールを決めた時に採り上げたいと思ったのですが、このタイミングでアップします。

ファジサポさんでしたら、皆さんご覧になっていると思います。
「政田INSIDE TRAINING」です。
12分59秒から(18)櫻川と(33)川谷凪のトレーニング映像になっています。膝下を振ってシュートを撃つトレーニングをしています。
これまでの(18)櫻川の足でのシュートシーンを振り返りますと相手GKやDFに詰められているシーンが多かったと思います。彼のサイズの大きさがアダになっているともいえるのですが、具体的に相手の詰めよりも早くシュートを撃つ練習をしているのです。
そしてこれを指導しているのが何と木山監督なのです。練習の最後では「毎日続けていこう」と呼び掛けていました。
政田で練習見学されている方はこうした彼らの具体的な努力もよくご存知かとは思いますが、筆者はこの場面を見て胸が熱くなりました。
監督は彼らの成長も、彼らが戦力になることも諦めていないのだなと。
9分(7)チアゴのシュートに反応、ゴール方向に飛ばせたのはこの練習の成果ではないかと筆者は思いました。
あの場面だけを見ますと、決まらなかったということで「またか」との想いも湧きかけるのですが、あえて(18)櫻川の夜明けの近さも感じたと述べたいと思います。

しかし、悩ましいのは(1)の項目とも関連しますが(7)チアゴの強みを活かすという観点では(7)チアゴ-(18)櫻川の組み合わせはベストではないということです。現状の2トップのベストな組み合わせは、守備面も含めてあくまでも(7)チアゴ-(48)坂本なのでしょう。
そうなりますと彼が練習の成果を発揮する時間は今後限られます。
少ない時間で結果を残せるのか?
彼にとってもチームにとっても正念場です。

3.まとめ

以上、今回の欠場者多数の岡山側の「穴」についてポイントを絞って述べました。こういう試合で勝てるようになれば、本当に強いチームになったといえます。
欠場選手の穴を感じさせながら勝てそうな雰囲気もあったのですが、そこをモノに出来ない現状の勝負弱さは認めざるを負えないと思います。

ゲーム全体を見渡しますと岡山も山形もまだ色々な意味で「自分たちと戦っている」段階であるとの感想を持ちました。
シーズン終盤を迎えた時、筆者はリーグ全体を「相手と戦っているチーム」、「自分たちと戦っているチーム」、「自分たちと戦えていないチーム」の3つに分かれると考えています。

今のJ2の順位に当てはめますと、8位群馬より上は「相手と戦っているチーム」であると思います。そして9位岡山から数チームはまだ「自分たちと戦っているチーム」であると思います。

具体的には、自分たちのスタイルを安定化させ「相手と戦う」ことに専念出来ているチームとは「安定性」の部分で少々差があるように感じます。

そんな差を感じるからこそ、何とか応援の雰囲気でチームに足りない部分を後押しできないかと思うのです。昨シーズンの「緊急事態」後のゲームはアウェイでしたが、今回はホームで出来ます。
今のところチケットの売り上げは好調を聞いています。満員にすることも大事ですが、より諦めない雰囲気をつくれるのかに懸かっていると思います。
再びチームが上昇気流に乗るためにも、多くのサポーターの声援が必要です。

今回もお読みいただきありがとうございました。

※敬称略

【自己紹介】
麓一茂(ふもとかずしげ)
地元のサッカー好き零細社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。
JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、
ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに
戦術に興味を持ちだす。
2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。

アウトプットの場が欲しくなり、サッカー経験者でもないのに昨シーズンから無謀にもレビューに挑戦。
持論を述べる以上、自信があること以外は述べたくないとの考えから本名でレビューする。
レビューやTwitterを始めてから、岡山サポには優秀なレビュアー、戦術家が多いことに今さらながら気づきおののくも、選手だけではなく、サポーターへの戦術浸透度はひょっとしたら日本屈指ではないかと妙な自信が芽生える。

岡山出身ではないので、岡山との繋がりをファジアーノ岡山という「装置」を媒介して求めているフシがある。

一方で鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派でもある。


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