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【ファジサポ日誌】61.ファジは前へ進んでいる~第25節徳島ヴォルティスvsファジアーノ岡山~

※カバー写真は以前に訪ねた際の徳島駅より徳島線の特急「剣山」

ファジアーノ目線に立った時、このゲームの捉え方は今のファジアーノをどのように認識するかによって変わってくると感じた一戦でした。
そこでまずは、今のファジアーノの立ち位置について、筆者の認識を先にお示ししたいと思います。

前回の水戸戦レビューの最後に「獲らぬ狸の皮算用」と題して、岡山が勝点65(6位以内)(※筆者の想定です)を獲得する星勘定について記しました。
大まかには、シーズン前半戦で十分な勝点を積み上げられていないことから、各対戦相手との再戦で前半戦以上の結果を上積む必要性について述べたつもりです。
(中略)
6位甲府と9位岡山の勝点差は7、数字上は6位以内を諦めてはならないのですが、ここに岡山が食い込むには今後上位陣との6ポイントマッチを複数得失点差で勝利することが求められます。
つまり、岡山には劇的な試合内容の改善、向上が求められるのです。

【ファジサポ日誌】60.期待と崩壊~第24節ファジアーノ岡山vs藤枝MYFC より

藤枝戦の拙レビューの一部です。
整理しますと、プレーオフ圏内進出の条件として、
①各対戦相手との再戦で前半戦以上の結果を上積む
②上位陣との6ポイントマッチを複数得失点差で勝利
③劇的な試合内容の改善、向上が求められる
ということになります。

①については、前回勝利した徳島相手に引き分けたという結果は十分ではありません。②は今回は該当せず、③については劇的とまではいえないものの、確実な改善、向上はみられたと思います。

つまり、プレーオフ進出に向けては結果は残せなかったが、試合内容は改善・向上したということがいえます。このどちらにフォーカスするかによって、この試合の評価は大きく変わります。
(19)木村太哉の「岡山らしい」同点ゴールに気持ちが救われたサポーターが多いと思いますが、どこかしら残るモヤモヤした感情は、「結果への不満」と「内容への手応え」の二つの感情が入り混じることから生まれているのではないのでしょうか?

今週末にはホーム長崎戦を控えています。長崎は今節で7位に後退しましたが、勝点上ではプレーオフ圏内とみてよいでしょう。岡山にとっては6ポイントマッチになります。
この長崎戦に向けて複数得失点差で勝利できる要素を見い出せたのか、今節の徳島戦から考えてみたいと思います。

1.試合結果&スタートメンバー

第25節 徳島vs岡山 時間帯別攻勢・守勢分布図(筆者の見解)

岡山にとっては前半26~40分の攻勢の時間帯(桃色・赤色)に得点を奪えなかったことが最後まで響いたと思います。直近の勝ち試合(水戸戦)では、前半に先制点(田部井のゴール)を奪えており、やはり前半での得点の有無と勝敗には相関性があると考えられます。

続きましてメンバーです。

J2第25節 徳島vs岡山 スタートメンバー

岡山はFW陣に怪我人が続出しており、この試合は(18)櫻川ソロモンと(48)坂本一彩の2トップでスタート、ベンチには前節に引き続き(32)福元友哉が控えます。ボランチには(44)仙波大志が戻り(41)田部井涼と組みます。おそらく(41)田部井が序列を上げたものと考えられます。LSBには(43)鈴木喜丈が戻ってきました。水戸戦は前半で交代していましたが、足の違和感は大したことがなかったようで安心しました。

一方、徳島の注目は前回対戦時に欠場(出場停止)していたLWB(24)西谷和希です。

戦前は(24)西谷への対応がこの試合のポイントのひとつになるのかなと警戒していたのですが、この点については16~20分の間に岡山が4-4-2から5-3-2(3-5-2)に守備時のシステムを変更、前回の対戦時同様ミラーゲームに持ち込んだことで、意外にもあっさり対応出来ていたように見えました。もちろん(16)河野諒祐の頑張りもありました。

昨シーズンの対戦時と比べますと、(24)西谷のプレーに関しては単独突破や早めにクロスを入れる傾向が強く、岡山守備陣としては対応しやすくなっていたと思います。これは大雑把な言葉ですが、徳島のサッカーが昨シーズンよりも縦に速いサッカーを指向していることが影響しています。
結果的にこの試合のポイントにはあまりならなかったという印象です。

2.レビュー

(1)前半の決定機逸からみえた岡山の進化

先ほども述べました前半の決定機逸について振り返ってみたいと思います。
27分(18)櫻川、40分(14)田中雄大のクロスバーを叩いたシュートについてです。
この2本のうち1本でも決まっていれば、この試合は勝利していた可能性が高かったと思います。非常に痛い決定機逸であったことに間違いはないのですが、筆者は特に(18)櫻川のシュートについてはあまりネガティブな感情を持たなかったのです。

低次元な視点と言われてしまいそうですが、(18)櫻川についてはまずシュートを撃てたことが良かったと思いました。ほぼボールを収められず前半で交代した藤枝戦から中3日でしたが、この短期間のうちにしっかりプレーを修正できていた点は良かったと思います。
本人もファジゲートのインタビューで少し触れていますが、自ら下りて積極的に楔を受けることでチーム全体がスムーズに前進できていました。70分の難しい体勢からのヘディングシュートも徳島GK(1)ホセ・アウレリオ・スアレスの好セーブに遭いましたが、しっかり枠内に飛ばしていました。
チームの為に様々な形でボールを受けることができた、そしてストライカーとしての感覚が戻りそうなプレーができたという点は、次の試合にも繋がると思います。
今シーズンの岡山はこうした選手個人の良い流れが案外続かないという面もあるのですが、藤枝戦からの経緯を踏まえますと(18)櫻川はよく頑張って修正していたと思います。自信にしてほしいと思います。

更にこの27分のシーンには個人的に非常に興味深いポイントがありました。

J2第25節 徳島vs岡山 27分 岡山決定機

(18)櫻川の決定機に繋がったボール奪取を図示しました。
徳島のビルドアップに(18)櫻川や(48)坂本がプレスし、徳島ボールはLCB(4)安部崇士へ。(4)安部から左サイドの(24)西谷へ渡りますがここには(16)河野が対峙します。
ここに5-3-2(3-5-2)に変更した効果があった訳ですが、前進できない(24)西谷は中でフリーになっている(7)白井永地へパスを出します。
(7)白井は難なくパスを受けたように見えましたが、ここへ(48)坂本と(44)仙波が前後から猛チャージをかけます。慌てた(7)白井はボールを浮かして逃れようとしますが、このこぼれ球を(41)田部井が奪取。そのまま(18)櫻川にパスして前述の強烈なシュートに繋がりました。
相手ボランチ(アンカー)を泳がせて、ボランチ(アンカー)に入ったところを狙うというボールの奪い方は、今まで岡山にはあまり無かったと記憶しています。

(7)白井は徳島の配球役です。
通常であれば(7)白井にボールを入れさせまいとマークについたり、パスコースを消したりするものです。
しかし(7)白井はフリーでした。岡山があえて(7)白井を泳がせていたのであれば、大きな進歩であると感じたのです。

「相手コートでの戦い」を追究した時、敵陣のボランチ(アンカー)の所でボールを奪えれば、サイドや自陣内で奪うよりもゴールまでの距離も短く、ゴールの確率が高くなります。

実は金Jの新潟vs神戸戦でも似たようなシーンがありました。15分(10)大迫勇也の先制&決勝ゴールに繋がった神戸のボール奪取です。

J1第20節 新潟vs神戸 15分 (10)大迫のゴール

新潟のビルドアップに対して、ボランチの(19)星雄次がフリーでGK(1)小島亨介からのパスを受けるのですが、パスが入ったところで(11)武藤嘉紀と(16)齊藤未月が前後から猛プレス、奪い切った(11)武藤から、動き直していた(10)大迫へ素早くショートパスが入り(10)大迫がゴールへ流し込みます。
神戸は最初から(19)星を消して、サイドの(2)新井直人や両CBに誘導するのではなく、あえて(19)星に入ったタイミングを狙ったことでゴールに直結させているのです。

サイドからボランチ、GKからボランチとボールの入り方の違いはありますが、ボランチへ誘導するという発想は同じです。岡山が目指すべき前線の守備の完成形は今の神戸にあると言っても過言ではないでしょう。

40分の(14)田中のシュートは正直なところ決めてほしかったというのが本音なのですが、このシーンもこれまであまり見られなかった(18)櫻川がサイドに流れて起点になっていましたので、このシーンもやはり岡山の成長ぶりを感じたというのが筆者の感想です。

では、決定力不足以外の攻撃面の課題は何であったのか?
それはCKの数だと思います。この試合のCKはたったの2本でした。
そのうち1本が(19)木村の劇的ゴールであったことを考えますと、やはりもっと積極的にCKを獲りにいく意識があってもよいと思います。
CKを獲るためには、相手がゴールラインに逃れざるを得ないようなシュートを撃ち、クロスを供給する必要がありますからやはりこれらの質を高めていくことが重要といえます。

(2)木村太哉の姿勢から学びたい

89分、CKから値千金の同点ゴールを決めた(19)木村は試合終了直後のインタビューで「ターゲットは自分ではなかった(柳であった)」、「それでも自分の前に来たら決めてやろうと思った」と語っていました。
今シーズンの(19)木村の働きは、水戸戦の同点ゴール、仙台戦の同点ゴールに繋がるクロス、そしてこの徳島戦の同点ゴールと数字として見える部分のみを足し上げても勝点3に相当します。
彼の復帰は実質、前線の補強に等しい価値があると思いますが、彼がチームにもたらしてくれたものは、自分で決めてやろうとする主体性にあります。

攻守一体がサッカーの原則でありながら、今の岡山には何やら分業制のような匂いを感じてしまうのです。
ただ、これは筆者の杞憂かもしれません。

【ファジサポ日誌】60.期待と崩壊~第24節ファジアーノ岡山vs藤枝MYFC より

再び拙レビューからの引用で恐縮なのですが、ちょうど筆者はこんなことを最近の岡山から感じていましたので、(19)木村のコメントが非常に沁みたのです。

セットプレーは柳キャプテンにお任せとまで、各選手思ってはいないでしょうが、ターゲットが(5)柳育崇であるにせよ「自分が決めてやる」という準備をどれだけの選手がしているのかということだと思います。
こぼれ球への反応は(23)ヨルディ・バイスをはじめ、各選手意識しているのかもしれませんが、相手守備陣とのギャップをつくるという意味で(5)柳以外の選手がCKに直接触る必要はあるものだと考えます。
おそらく徳島守備陣は、まさか(5)柳の前で(19)木村が触るとは思っていなかったのではないでしょうか?
このゴールは、岡山がセットプレーでの得点を再び増やす大きなヒントになるものだと思います。

(3)失点シーンについて

失点シーンについてはまずボールの奪われ方が非常によくなかったと思います。
(42)高橋諒をLSHに入れたことで(22)佐野航大が右に回ってきましたが、正直なところ右サイドでは攻守において精彩を欠いていたと思います。
この日の(22)佐野は左サイド奥から左足で鋭いクロスを入れたり、切り返してシュートを撃つなど、LSHでのプレーぶりは最近では最も良かったと思います。これが右に移ったことで一気に良さが消えましたので、やはり右サイドの選手ではないのだろうなと思います。

徳島の(15)棚橋尭士が交代で入ったばかりということもあり(16)河野も捕まえ切れなかったのですが(8)柿谷にボールが入った際に(5)柳、(23)バイスの両方が行ってしまい、お見合いして抜かれてしまいました。岡山CB陣の悪い癖が出てしまったといえます。

この後(16)河野が中へ絞りましたので、(23)バイスはもう少し外へ(15)棚橋を追いやっても良かったのかもしれませんが、最終的にボックスの中に引き込んでしまいました。(23)バイスはニアへのシュートコースを切って、しっかり(1)堀田にセーブさせましたが、ボールを弾く先を読んでいた(8)柿谷にきっちり決められてしまいました。
きっと(1)堀田は弾いた方向を悔やむのだと思いますが、このシーンに関しては最終ラインの意思が噛み合っていなかったように見えました。

相手陣内での守備については進境を見せた岡山でしたが、自陣でのカウンター対応については依然不安を感じさせます。

3.まとめ

以上、徳島戦を振り返ってみましたが、今後の上位進出の条件は前半に得点(先制点)を奪うことであると思います。前半に先制することで、セーフティに守備をしながらカウンターの機会を狙う。この戦い方であれば、上位チームに複数得失点差で勝利することも可能です。
この徳島戦からは先制点を奪うために必要となる前線へのボール運びや、相手コートでの守備について岡山に前進がみられたことを確認しました。
「岡山らしさ」が詰まった(19)木村のゴールのみで語るにはもったいない「チームとしての前進」があったことをお伝えして、徳島戦のレビューを終えたいと思います。
週末の長崎戦、目指すは2-0での勝利です。

今回もお読みいただきありがとうございました。

【自己紹介】
麓一茂(ふもとかずしげ)
地元のサッカー好き社会保険労務士
JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ
ゆるやかなサポーターが、いつからか火傷しそうなぐらい熱量アップ。
ということで、サッカー経験者でもないのに昨シーズンから無謀にもレビューに挑戦。
持論を述べる以上、自信があること以外は述べたくないとの考えから本名でレビューする。
レビューやTwitterを始めてから、岡山サポには優秀なレビュアー、戦術家が多いことに今さらながら気づきおののくも、選手だけではなく、サポーターへの戦術浸透度はひょっとしたら日本屈指ではないかと妙な自信が芽生える。

応援、写真、フーズ、レビューとあらゆる角度からサッカーを楽しむ。
すべてが中途半端なのかもしれないと思いつつも、何でもほどよく出来る便利屋もひとつの個性と前向きに捉えている。

岡山出身ではないので、岡山との繋がりをファジアーノ岡山という「装置」を媒介して求めているフシがある。

一方で鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派でもある。
アウェイ乗り鉄は至福のひととき。多分、ずっとおこさまのまま。






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