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ことば遊びとショートショート12『畳、駆ける』

 近所の畳屋に行列ができていた。

 潰れかけていたのでは?気になった俺は並んでみることに。

 列が進み、中へ入るとコースター乗り場のようだ。

 ついに俺の番。

 一畳分の畳が廊下を流れてきた。俺は靴を脱ぎ、畳へと乗り込む。

 畳が駆ける!木造の廊下を右へ、左へ。正面は行き止まり。ぶつかる!と思った瞬間、床下へ!途チュー、鼠が逃げる闇を抜ける畳!

 止まった……蝋燭が灯る。小部屋のようだ。からくりで部屋は上昇する。

 障子が開き、大広間へと出た。

 コース上は大宴会!女中や客人や花魁やものの怪を避ける畳!

 いくつもの襖が開くと……

 体が浮く。空?直後、板張りの滑り台を急降下!目の前は庭園だ。命を懸けて、畳が空を翔る!

 すると池の錦鯉が跳び、畳ごと飲まれた。鯉は池の中を優雅に泳ぐと、俺を吐き出した。そこは畳屋だった。


 俺は再び行列に並んだ。

 この日、俺は畳に六乗した。

 畳屋は大繁畳。当分はたためない床だろう。

 (了)

【雑記12】

 ショートショートの1st Album『ワンダーメーカー』より、本日は3曲目の『畳、駆ける』を。
 昨日の2曲目の『バトルオレンジ』はこちらから。 

 家の近くに畳屋がある。
 ぱっと見で畳屋が繁盛しているかはわからないが、おそらく繁盛はしていない(すみません)。畳の張り替えはそうそう頻繁に行うものではないし、そもそも和室のある部屋が少なくなってきているはず…。
 
 その畳屋の前を通る度に、この畳屋を流行らせるならどう仕掛けるか?と大きなお世話も良いところで、ショートショート的な発想で考えていた。
 その時に浮かんだのが、畳や和に特化したジェットコースターだった。
 実際に畳に座ることで座り心地であったり、い草の香りを楽しみながら体験してもらえるなと考えた。
 また走るコースも木製で、日本家屋や日本庭園をモチーフにした和のコースが畳が走るのにはふさわしいと。
 そんな妄想だけが膨らんでいき、実際に作り上げる資金や技術を持ち合わせていなかったので、空想の物語となったのだけど。

 街を歩いていると、そんな風に物語が生まれるときがある。
 日々の生活の中に不思議な物語への入口があって、気がつくとふらっと吸い込まれて、1作ひっ書けたくなる。

 お読みいただき、ありがとうございます!

 8月末まで毎日、400字ショートショートと雑記の2本立てnote を投稿することに挑戦中です。

 文章で物語で、読んだ方を笑顔に元気にできたら最高です!良かったら、また明日もふらっと遊びに来てください!

文章や物語ならではの、エンターテインメントに挑戦しています! 読んだ方をとにかくワクワクさせる言葉や、表現を探しています!