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中世フランスからのメッセージ。(『結婚十五の歓び』岩波文庫)

結婚十五の歓び (岩波文庫 赤 571-1)

本好きにとって、ブックオフはたまらない場所です。

アマゾンで便利に本を買えるようになりましたが、
あくまで欲しい本が決まっている場合のこと。

不確実な出会い、新しい種類の本との出会いは、
昔も今も、本屋さん、古本屋さんでしか生まれません。

ブックオフに入り、
本で満たされた本棚の前に立ち、
店内をウロウロして、見たことも聞いたこともない本を眺め、
興味があった本を見て、良さそうであれば買ってみる・・・

そんな風にして出会った、未知の世界に連れて行ってくれた本たちは、
自分の人生で数知れません

先日友達と結婚についていろいろ話していました
その友人は、いかに自分の時間がなく、
なかなか自分らしく生きられないと嘆いていました

ふとそんな話が頭に浮かび、
たまたま見つけたブックオフで、
本棚を見ていると・・・

『結婚の一五の歓び』

という本を見つけました。

普段の生活やネットショッピングでは、
間違えなく探さない、自分では絶対見つけられなかった本です。

値段を確認してみると・・・

結婚十五の歓び (岩波文庫 赤 571-1)

ブックオフに感謝の110円。
早速レジに行って購入しました。


中世のフランスで書かれたということで、
時を超えた物語が、コンビニのコーヒーと同じ値段で買える国、
ブックオフ、日本、最高です。

肝心の中身は、フランスの溢れんばかりの皮肉に満ちた内容。
結婚がいかに素晴らしいかを語る本かと思えば、
全くの逆で、結婚がいかに人の自由を奪いひどいものにする可能性があるかという自虐的内容に溢れています。

岩波文庫のオフィシャルの紹介文はこちらです↓

結婚を男を獲える仕掛けにみたてて,女の性悪な所業をあげつらい,無惨な結婚の現実をユーモラスに語った中世フランスのコント集.度し難い妻,あくせくと努めるその夫のみじめな姿を描くうちに,作者は思わず溜息を漏らし,つぶやく.「この悲惨は,はたから強制されたものではないのに……」と.

岩波書店オフィシャルサイト
https://www.iwanami.co.jp/book/b248094.html

15の歓びに関するストーリの中で、特に印象的だったお話がこちら。

ところで、善良な男が邸の様子を見ると、家事がまるでうまくいっていないので、工合の悪い点を直すことに、たいそう苦労する。

要するに、独りであらゆる苦労をするわけだが、
なにか工合よくゆくことがあると、
奥方は、私のおかげですわ、
私が上手に家政を司ったから、
などと言うであろうし、
また、もしうまくゆかぬとなると、
わめき散らして、あなたのせいよ、
と言うことだろう。

結婚十五の歓び (岩波文庫 赤 571-1)

この奥方、一度味をしめたからには、
これから先も、なんとかして、旅に出て、
方々に足を伸したがる。

家運が傾き、ご亭主は老けこんで、
痛風病みとなり、家の構えも大きくなり、出費も増える。

しまいには、
奥方は、子供の世話や旅で体をこわした、などと言い出し、
年じゅうわめき散らし、完全な山の神になるでもあろう。

お人好しの夫は、魚梁に封じこめられ、苦しみ申くのであるが、
ご当人には、それが結構歓びなのである。

その中に入って、いついつまでもそこにとどまり、
惨めにその生を終えることとなろう

結婚十五の歓び (岩波文庫 赤 571-1)

良心的な旦那が、欲望まみれの妻に翻弄され、
なんとか自分の置かれた境遇がいいものであると信じようとしたが、
はたらか見れば、それは惨めな人生だったという話。
(男女関係なく、こんな話は世の中に溢れているでしょう)

中世フランスの話として書かれていますが、
文化や時代を超えた物語として読めます

結局は、人間の本質は変わらないし、
結婚という枠組みの中で、うまく行かないケースというのは、
古今東西変わらず、人間が人間でいる限り、
ずっとずっと同じような問題が存在するように思うのです・・・

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