見出し画像

「遠野物語と呪術」レポート

遠野市立博物館(岩手県遠野市)で2023年7月21日~9月24日まで開催中の夏季特別展「遠野物語と呪術」を訪れた。

遠野市立博物館は1980年(昭和55年)開館の、日本で初めての民俗専門の博物館。館内の会場1と2は常設展でこちらも見所満載で、展示室3が企画展という構成だった。特別展「遠野物語と呪術」のはじめに以下の文言が。

イギリスの人類学者フレーザーは、その著書 『金枝篇』 の中 で呪術を類感呪術と感染呪術の2種類に分類して説明している。
類感呪術というのはある現象を模倣することによってそれを 実際に引き起こそうとするもので、 例えば雨乞いで水を撒き 太鼓を叩いて雷の音をあらわすことは代表的な例である。
一方の感染呪術は、一度接触したものあるいは一つのもので あったもの同士は、遠隔地においても相互に作用するという 考えによるもの。 狩の獲物の足跡に槍を突き刺すと、その影響 が獲物に及んで逃げ足が鈍るとするような行為や誰かを呪う ときその人の爪や髪の毛を使うなどの例がある。

会場内説明パネルより

フレーザー(Sir James George Frazer, 1854-1941)の『金枝篇』(The Golden Bough) は、民俗学系の展覧会では頻繁に引用される書物で、今回の展示もこれを念頭にご覧下さい、ということだろう。

品々の解説は館のSNSに詳しいのでここでは説明を省くけれど、正直、展示品に残っている念が強すぎて、接写できない品も沢山。しかし関心のある人にとっては魅力的なものばかりであることは疑いなかった。

ずっと訪ねたかった遠野という地に、この展示をきっかけに初訪問することができたのも、今がタイミングだったのだろう。

市街地の「とおの物語の館」では語り部による遠野の昔話を聴くことができ、夜神楽も、柳田國男展示館もすばらしい。
翌日はレンタサイクルし、「キツネの関所」、「オシラサマ」、「カッパ淵」、「土淵山口集落(国選定重要文化的景観)」などを見学できたことも意義深い。

民話の世界と現世とが地続きになっている、混淆の地、共存の地・遠野。建物の外にでると清流の香りが立ち込めていたり、原野でふと女性たちの歌声が風に乗って聞こえてきたりしたのも、印象的な体験だった。


中島光信(僧侶)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?