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左右盲

趣味、と言うには下手すぎて自信がないのだが、1年半続けているものがある。

キックボクシングだ。

始めてから1年半経っても全然上手くならないので、本当に才能がないんだと思う。

それでも継続できているのは、ひとえにトレーナーさん達のおかげである。

元々運動大嫌い&運動神経が悪いので、まさか自分がお金を払って運動をするなんて夢にも思っていなかった。

が、数年前にあることがきっかけで半ば強制的に運動をさせられる、という機会があり、そこで運動の効果を知ることになった。

健康に良いのはまあ当然と言えば当然なのだが、メンタルにめちゃくちゃ良いということが分かった。

身体を動かしている間は何も考えずに済むので、脳がある意味瞑想のような状態になるのだと思う。

ところで、タイトルにもした「左右盲」という言葉をご存知だろうか?

その名の通り、右と左が分からなくなる症状で、発症原因は不明。

英語ではleft-right confusionともいい、この症状を持つ人は世界中に一定数いるらしい。

「症状」と表現してしまったが、正確に言うと左右盲は病気ではないと言われている。

しかし、右左が分からなくなる、というのは間違いなくハンデではあるため、少なからず日常生活に支障が出ることがある。

そして私は左右盲なのだ。

左右盲によって今までで一番困ったのは、運転免許を取る時だった。

「その角を左折して」「右に曲がって」等々、教官の指示を悉く間違え、

「えっ、何で左右が分からないの?」
「ひょっとして外国生活長かった??」

など、担当教官をかなり困惑させてしまった。

キックボクシングも右、左、という要素をよく使うスポーツである。

レッスンの中にミット打ちという時間がある。

右ストレート左フック、右アッパー、右ミドルキック、左ローキック、右前蹴り、左ハイキック…etcとトレーナーの指示通りに打ったり蹴ったりを練習するのだが、私が行うと右ハイキック!と言われているのに左で蹴り上げようとしてしまったり、右フック!と言われているのに左フックを打ってしまったり、と混乱極まる時間である。

トレーナーさんがプロで良かったとつくづく思う。

もし、ミットを持つ相手がアマチュアだったら、怪我をさせてしまう可能性があるからだ。

当然ことながら、左右という方向や場所に関する表現なんて、感覚的に咄嗟に認識できた方が良いに決まっている。

分からないと指示したりされたりの難易度が途端に高くなってしまう。

なので、この感覚を共有したいとは全く思わないのだけど…

私が見ている、感じている、このこんがらかった世界、感覚を、どうにか他の人に伝える術はないだろうか、なんて思うことはある。

「へー、そんな風に見えるんだね」
「そんな感じなんだね」

と解ってもらえるだけで、問題自体は解決しなくても、この感覚の檻から少しは抜け出せたような気がするからだ。

追記:

一旦書き終わってから読み直してみたら、何となく「左右盲だから運転やボクシングでミスっても許して」というようにも読めてしまったので、そこは断じて否定しておきたい。

人の生命や安全を守らなくてはいけないのは当然で、一番大切なこと。

もし自分が誰かの安全を脅かすかもしれない、という可能性があるのならば、車も運転するべきではないし、格闘技もやるべきではないと思う。



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