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父と娘のつよい絆。映画『ダンガル きっと強くなる』2016年、インド


大好きなアーミル・カーンの映画。
見る前から、きっと傑作だと確信させてくれる主演俳優さんは、この人くらい。しかも、新作がいつもインド映画最高の興行収入を更新するのに加えて、この作品は中国でもすさまじい大ヒット。日本で公開されるのがおそすぎて、本当に待ち遠しかったです。そして、やっぱり最高でした。

元レスリングの強豪選手だった主人公のアーミル・カーン。でも、家が貧しかったのでレスリングは続けられず、インドの協会も有望選手を援助してくれませんでした。悔しさの中で彼が誓ったのは「息子ができたらレスリング選手にする」こと。なのに、生まれたのは女の子ばかり。

現実を受け入れ、夢をあきらめようとしていたお父さん。ところが、アーミルの娘たちにはレスリングの素質があることに気づき、娘たちを鍛えることにする。男尊女卑の田舎だし、菜食主義の家だし、なにより若い娘に足を出させたり、髪の毛を切ったり、普通ならありえないことをやらせるお父さん。一歩間違わなくても、虐待です。現代日本の感覚でもハラハラします。

でも、娘が試合に出て、勝つことの喜びを覚えると、本人も周囲も味方が変わっていきます。地元の大会に出れば賞金ももらえたし、称賛も浴びるようになります。なにより、特訓させられる娘より、理不尽な扱いをされている甥っ子が、頑固親父に振り回されて、ユーモラスにかわいい。父親の寡黙で一本気なのと対象的。このあたり脚本が本当に上手いです。一緒に見た娘も、彼がかなり気に入ったみたいです。

そして、若い女の子だから、おしゃれもしたい、遊びたい。思春期になると、父親に反抗したいってあたりのエピソードもかわいい。ナショナルチームに選ばれて、都会に出て、トレーニング漬けの日々に疑問を感じたり。父親以外の指導者との葛藤も見どころあり。

なにより、父親の娘への愛情が不器用だけどすばらしくて。試合のシーンも当然、迫力満点。最後は、父がいなくても、父の教えたことを思い出して、「自分の力で」闘う娘。かすかに聞こえるインド国歌に涙する父の姿は本当にすばらしいシーン。他のインド映画もいいけれど、私はやっぱりアーミル・カーンの映画が大好きです。

邦題:ダンガル きっと、つよくなる(原題:Dangal)
プロデューサー: アーミル・カーンほか
主演: アーミル・カーン
製作:インド(2016年)161分(日本版140分)


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