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台湾の本好きたちの奮闘記。『台湾書店百年の物語:書店から見える台湾』台湾独立書店文化協会

真実は細部に宿るという言葉が、ぴったりの1冊。日本植民地時代から、国民党による独裁の戒厳令時代を経て、民主化した現代まで。どういう人達がどこから台湾にやってきて、台湾のどこで書店を開いて、どんな本を扱ったのか、可能な限り網羅した本がこれです。多くの書店の関係者が、なるべく事実のみを記述するという寄稿方法でまとめられたシリーズ本の中の1冊とのこと。

初めて書店らしきものが台湾にできた時代から、現代のインターネットでの書籍販売や、電子書籍の流行、少子化などへの対応の試行錯誤までカバーしているので、日本と同じ悩みを抱える(というか、先進国のどこの国でも同じ悩みがあるはず)台湾の書店のいろんなチャレンジを知ることができます。

私がいつも台北で専門書を買う「三民」は、てっきり孫文の「三民主義」からとった名前で、政府系の書店だとばかり思っていました。なんせ、店員さんは台湾にしては愛想はイマイチだし、閉店時間も早いので。でも、全然違う草の根の歴史がありました。

台北だけでなく、日本時代に文化の中心だった台南、私があまり行ったことのない台中や嘉義、宜蘭、花蓮など、誰がどんな風に書店を始めたのか、店ごとに紹介されています。戒厳令の時代から、民主化後の台湾ブーム、そして現在の書店に厳しい時代まで、各地の店主たちの創意工夫がわかります。

かつて海賊版やコピー版を堂々と売っていた時代。反政府的な書籍の露天販売、中国大陸の本(社会主義、共産党関連)の販売を売る話もちゃんと書いてあるのがすごい。そして、2000年以降のチェーン店の発展やネット書店の人気ぶり、本以外のものがメインになりつつある誠品書店など、すべての時代の変化を肯定しつつ、専門に特化した書店(ジェンダー、農業、LGBTなど)の話や、古書店まで目配りはばっちり。

この本を読めば、今すぐ台湾に行って、紹介されている街を旅して、本屋を1つ1つまわって、併設されているカフェでお茶しつつ、読書したい欲求を抑えられなくなること間違いなし。3ヶ月くらいかかるかな? 円がもっと高くなってくれたら、ぜひチャレンジしたいです。


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