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お腹を抱えて笑いたい人におすすめ。『イン・ザ・プール』奥田英朗


「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。 

『チーム・バチスタの栄光』の白鳥に似てるという、精神科医の主人公にひかれて入手。以前、雑誌にも紹介記事が出ていたのを思い出して。結果は即、読了。あんまりおもしろかったので、夫にも見せたら、これまた一晩で読んでしまったようです。

主人公は伊良部医師ではなく、彼の病院を訪ねてくる患者たち。それぞれ1人づつの短編があつめって、1冊になっています。どの人たちも、なんだかそれぞれ身につまされる部分があって、共感できます。人間ってのは、つくづく精神でできていて、脳はときどき暴走して身体と不協和音を起こすものなんだなあと。いや、小説なんですけどね。

本職のお医者さんが読んだら、どういう感想を持つのか知りたいですし、仕事先の同僚にすすめたら大うけしてました。むふふ。

『イン・ザ・プール』に続く、シリーズ第二弾の『空中ブランコ』も、期待通りでした。この本を読んだときは、娘がかなり小さくて、一日中、相手をしてクタクタ。だから、日曜日の息抜きにぴったりでした。いくつかの短編に分かれている中で、気に入ったのはタイトルにもなっている「空中ブランコ」そして「女流作家」、ハリネズミ」かな。

でも、伊良部センセ、前作に比べてアクがぬけちゃって。なんだかそれがとっても残念。あの過剰な幼児性と自己愛の強さが結構チャームポイントだったんですが。

余談ですが、伊良部と夫はよく似ている気がします。根拠のない自信満々さと、どんなときでも自己肯定できちゃうあたりが。私みたいな人間からすると、「ちっとはわが身を振り返れよ!」と、腹立つことがしばしば。いつもあきれるけれど、でも、かなりうらやましいです。


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