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ある死刑囚

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ある男の死刑が執行された。 彼は冤罪であったが、法で裁かれ死刑との判決を受ける。 何度も冤罪だと、訴えてはみたが、彼の想いが届かなかった。 彼は復讐を誓う。 死んで悪霊となっ… もっと読む
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守護霊の役目(140字の小説)➕追伸(160字)

守護霊の役目(140字の小説)➕追伸(160字)

私は閻魔様に守護霊になる事を命じられた
守護霊の責任はその人を守る事だが
私はその能力が無い

私が憑いた男は、悲惨な目にあい
遂に自殺してしまう

私は閻魔様から呼び出された
「今回の任務は成功した。あの男は極悪非道な人間。
生かしては置けぬ。君の様な力の無い守護霊を取り憑かせる事で
成敗出来る」

追伸
今回はオチは有りませんが、少しホラーな小説。
人間の運命が、守護霊によって影響するのか?し

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ある死刑囚(1)

ある死刑囚(1)

1

廊下から靴音が響く。
渇いたいつもの靴音であるが、
何故か今日は少し違う音だ。
その靴音は私の独房に近づいてくる。
それは、恐怖の音。

私の部屋の扉が静かに開いた。
「松本秀。今日の午後、刑の執行を行う。
身の周りの物を片付けておきなさい。」
と、静かな声で刑務官に言われる。

その声は悪魔の響きにも似た人間の温かさを
感じる事が出来ない音であった。

覚悟はしてはいたが、いざ刑が執行され

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ある死刑囚(2)

ある死刑囚(2)

2
「貴方は誰ですか?」
と、聞いてみた。
きっと「死神です」と答えるだろうと、
予測のした上で聞いてみた。

「貴方の希望を叶えに天国からやって来た天使です」
と、言葉が明るい。
「天使だって?死神じゃないのか!
普通死んだ人の迎えは死神だろう!」

「普通はそうですが、貴方の場合は違います。
私は、天国から見てました。貴方は可哀想な人です。
真面目に生きてきたのに、人殺しと言う冤罪をかけられた

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ある死刑囚(3)

ある死刑囚(3)

3

「えっ、運の悪い霊だって!
そいつがそんな目に私をあわせたのか!
誰だそいつは?」
と、叫んでみても今となっては虚しいだけだ。

「その霊はもういません。
貴方が死刑の執行と聞いて、
役目は終わったみたいで居なくなりましたよ。
また他の所に行くみたいです。」

「何と、言う事だ!また私の様な可哀想な
人を作るのか?・・・・」
私は言葉に詰まった。
…私の様な不幸な人を出したくは無い。
それな

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ある死刑囚(4)

ある死刑囚(4)

4
「何故、君の口から言えないんだ?
秘密にしないといけない事なのか?」
と、私はイラだった。

「別に秘密にしなければいけない事では無いのですが・・・・。そんな事はどうでもいいじゃ無いですか。」
と、言葉を濁した。
私は、相手の立場を尊重してそれ以上の追求はやめておいた。

「そんな事よりも、今からどの様にしますか?
最初にどこに行きますか」
と、天使は聞いてきた。

「先ずは、あの刑事だ。あの

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ある死刑囚(5)

ある死刑囚(5)

5
私の下にはあの憎き刑事がいる。
暇なのか、椅子に座って茶を飲んでいる。
奴の背中に誰かが見える。
俺は天使に訊ねた。

「あれが、あいつの守護霊か?」

「そうだ、守護霊だ。あんまり良く無い守護霊だな。」

「良く無いって、どの様に良く無いのか。
教えてくれ。」

「あんなのに憑かれると、運は良くはならない。
アイツはそのままにして置いても
良い人生にはならないよ。
あの守護霊と、話してこよう

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ある死刑囚(6)

ある死刑囚(6)

6
霊になると便利なもので、全ての物をすり抜けて
悪徳弁護士の元に俺は行った。
いつもの様に奴の上を旋回し観ていた。
天使も同じ様に旋回し観ている。

不思議な事に、守護霊が見当たらない。不思議に思い
「守護霊が居ないのか?」
と、天使に聞くと天使はこの様に答えてくれた。

「人によっては、守護霊が不在の人もいます。
その人は、嫌われている人ですね。
誰も憑くのが嫌みたいです。
そんな時は、閻魔様

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ある死刑囚(最終回)

ある死刑囚(最終回)

最終回

「貴方には辛いかも知れませんが、恨みなど捨てて、
また、呪うなんて馬鹿な事を考えずに、
天界行きの列車に乗る事をお勧めします。
私はその為に来たのです。
貴方を救いに来たのです。
貴方は確かに、少年時代はグレてどうしようも無い人でした。
でも、心を入れ替え、真面目に生きて来ました。
なのに不幸にも冤罪の判決を受け、悲惨な目に遭った。
貴方の考えていた事は、閻魔様には全てお見通しなのです。

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ある死刑囚からの伝言➕追伸(530字の小説)

ある死刑囚からの伝言➕追伸(530字の小説)

顔は人から見えても、自分の顔だけは見る事はできない。
鏡を使わなければ、自分の顔は分からない。
写真はその一瞬の表情だけしか解らない。
人が見ている自分と、自分が見ている自分と
違うのは当然の事だ。

私は人がどの様に見ようとも、自分から見る自分に
恥じない様に生きるぞ。
それは心の向くままと言う様な生き方では無くて、
自分のプライドを傷つけない生き方だ。

正義ぶった悪は、人目を気にする。
そん

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