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リコの手作りチョコ

◇◇ショートショート

リコは小学4年生になってバレンタインチョコを手作りする事にしました。お爺ちゃんにあげたかったのです。

お爺ちゃんはいつもリコに優しくて、いろいろな所に連れていってくれます。そんなお爺ちゃんに喜んでもらいたかったのです

リコは手作りキットが売っているお店でチョコレート作りに必要なものを買ってから、何軒か先にある変わったお店に入りました。

アンティークで、ヨーロッパのレトロなサーカスのテントの中にありそうな、ちょっと不気味な感じもするお店です。

中に入るとバレンタイングッズが置いてありました。
仮面を付けた店員さんが「何をお探しですか」と、尋ねます。

「あのー、バレンタインの・・・」と言いかけると
「面白いのがありますよ、この粉を手作りチョコに振りかけると、バレンタインデーの日だけ、夢が叶うんですよ、その日一日だけですけど」

「えー、夢が叶うんですか、面白い」

酸っぱいものに、チョコレートのコーティングをした後、最後にパラパラッと振りかけるんですよ、とっても簡単です、誰に作るんですか・・・」

「お爺ちゃんに」

「それなら、これ、お爺ちゃんにはこの粉がいいよ・・・」

「ありがとう、やってみます」

「お嬢ちゃん、たくさんかけても効果は同じだからね、一日しかもたないよ

「わかりました」

リコは、何だか面白そうだと思って、早速買って帰りました。その日はお爺ちゃんのために一生懸命手作りのチョコを作りました。

魔法の粉の取り扱い説明書にこう書いてありました。

「この粉をパラパラとかけると、チョコレートを食べた人が、大好きな女の子の姿を見ることが出来ます、でもそれはバレンタインデーの日だけ、だって魔法の粉ですからその日のうちに食べてしまわないと、残念なことになりますよ」と。


リコは何だか分かりませんでしたが、とにかく面白そうなので作ったチョコに魔法の粉をパラパラと振りかけました

酸っぱいものでチョコを作らないと効果ないので、あるものにコーティングしました。ちょうど丸くてトリュフチョコにするにはぴったりのあるものです。


バレンタインの日に、リコはチョコを5個作って可愛くラッピングしてお爺ちゃんに渡しました

「おー、リコ手作りチョコか、じいじはうれしいわい」
「お爺ちゃん、このチョコは特別なので今日中に食べないとダメだよ、一個ずつしっかり味わってね」

そう言われてお爺ちゃんはもったいないからと2個だけ残して、3個食べることにしました。

まず一個目を口に入れると、ちょっとビターな大人のチョコで、口溶けが最高でした。目を閉じて味わっていると、お爺ちゃんには亡くなったお祖母ちゃんの若い頃の姿が浮かんだのです。お爺ちゃんは何だか幸せな気分になりました。


「おー、このチョコは凄いなー、お祖母ちゃん会えたがな」
そう思って2個目を口に入れると、柔らかく甘い香りと共に、生まれた頃の娘の姿が浮かんだのです。真っ白い産着を着た娘がお祖母ちゃんに抱かれていました。

「おー、懐かしいな・・・、あれからもう35年も経ったんか・・・」

そしてお爺ちゃんは3個目を口に入れました。ストロベリーの甘酸っぱい香りと共に、ウェディングドレスを着たリコちゃんの成人した姿が見えました
「おー、リコの結婚式か、爺ちゃんは見られるんかな・・・」

お爺ちゃんはチョコを三個食べて、思いっきり幸せな気持ちになりました

もうそれで充分満足したお爺ちゃんは、残りの2個は食べないで取っておくことにしました。

そして次の日、また素敵なシーンが見られるかと思って、チョコのケースを開けると大きな丸い梅干しが2個入っていました

何故なのか、お爺ちゃんは不思議でなりません。
「リコ、なんで、トリュフチョコが梅干しになっとるぞー

「お爺ちゃん、昨日のうちに食べてねって言ったでしょう、魔法が解けたんだよ

お爺ちゃんには何のことかだか分かりません。でも3つの幸せなシーンを見ることが出来きてとても喜んでくれました。

「お爺ちゃん私、今度またあの不思議なお店に行ってみるよ、行けるかな・・・」そう言いながら、首をかしげるリコちゃんでした

【毎日がバトル:山田家の女たち】

《まさか梅干しとはねー》


「3つ夢が叶って良かったねー、梅干しも美味しいよ、私はそれでもええ、欲張るんはいかん、作ってくれたことに感謝じゃ、とにかく3つ食べたんが良かった

「このストーリーはどう」

「面白かったよ、まさか梅干しとはねー

この物語の母のツボは梅干しだったようです。実は母は梅干しが好きなのです。トリュフチョコもいいけれど、梅干しも捨てがたいと思ったようです。

ご褒美はベルギーチョコよバレンタイン


私たち親子はご褒美チョコとして、ベルギー王室御用達のチョコレートを買って、一個一個、ゆっくり味わいながら食べることにしました。
ラッピングから心ときめきます。
たった一個で、幸せな気分になるのです。
ご褒美チョコは、やっぱりリッチに味わいたいですね

最後までお読みいただいてありがとうございました。たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。


私のアルバムの中の写真から

また明日お会いしましょう。💗

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