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【フリーランス考】フリーランスが日銭を稼ぎつつ自分の価値を上げるためには

2022年の10月から管理職サラリーマン→フリーランスに転身した私が、フリーランスについて思考の整理も兼ねて語るシリーズ。

今回は「日銭を稼ぐ仕事」と「自分の価値を上げる仕事」のそれぞれへのスタンスについて考えてみたいと思う。
(本記事ではIT業界のフリーランスについて考察しているため、ライターやクリエイターといった業種には当てはまらない旨ご了承いただきたい)

上記を考えるにあたり、まずは会社員とフリーランスの違いを整理してみたい。

会社員とフリーランスの違い

数えればキリがないが、一番大きいのは
①毎月貰えるお金の流れの違い
②教育投資の主体と位置づけの違い
だと思う。

①毎月貰えるお金の流れの違い

会社員は月給が決まっている。SE/ITコンサルの場合、案件にアサインされることでクライアントからフィーをいただき、それが原資になって給料が支払われるが、多くの会社では案件にアサインされずに待機している状態であっても給料は満額支払われる。
細かいことを言うと、以下のようなシステムで「待機しても待機しなくても給料が変わらない」という状況を防いでいることが多いが、それでも何らかの給料が支払われる(=会社が赤字分をかぶる)ことに変わりはない。

<待機中の給与問題に対応したシステム例>
・待機期間に比例して賞与が少なくなるシステム
・待機している月はアサインインセンティブが支給されない
・待機している月は休業扱いになる
・あまりに待機が続くと退職勧奨される

その代わりに、いくら高単価の案件にアサインされていたとしても、支払われる給与はあくまで社内の給与テーブルに基づいた金額である。
※最近単価連動型の高還元SESの会社も増えているようだが、ここでは従来型の会社を念頭におくこととする

クライアントへの売上から、従業員の給与・社会保険料の会社負担分を引いた分が会社の粗利になるわけだが(正確にはバックオフィスの販管費とかもあるが割愛)、この粗利の積み重ねによって待機時の給与支払いや従業員への教育投資が可能になるわけだ。

対してフリーランスは、案件への従事がなければ収入はゼロである。
これがフリーランスの圧倒的なリスクだ。
その代わり、売上はすべて自分のものになる。これが圧倒的メリットだ。
ある意味シンプルとも言える。
売上を途切れさせないためには、既存クライアントからリピート発注をもらい続けるか、定期的に新しいクライアントから発注をもらう必要がある。

②教育投資の主体と位置づけの違い

次に教育投資について。

正社員なら新入社員研修中は勉強しながらお金がもらえるし、ベンダ製品の研修に参加費を出してもらい参加しつつ給料をもらうこともできる。
私も前々職で1カ月で100万円を優に超える長期の研修に参加させてもらったことがある。

観点は研修だけではない。
チャレンジングなプロジェクト・ポジションへのアサインも投資になりえる。
「彼/彼女をマネージャーにしたいので、次の案件ではサブPMを任せよう」とか、「クラウド案件をやりたいと言っていたので、次は未経験だけどAWS構築の案件にアサインしよう」とか、従業員の成長のために計画的なアサインを行うことも立派な教育投資だ。

これは従業員のためでもあるが、従業員が成長してより難易度の高い仕事をできるようになればその分会社も儲かるわけで、従業員が起点であったとしても教育投資の主体は会社なのである。

一方でフリーランスはどうか?
フリーランスに対して「研修費用は払うのでどうぞ勉強してください!その間のフィーもお支払いします!」なんていう酔狂なクライアントはまずいない。
自分自身で仕事の合間を縫って本を読んだり資格試験の勉強をするしかない。まあこの辺は会社員とそんなに違いはない。会社員でも特にITエンジニアは業務外の時間に勉強をすることも多いだろう。

問題はチャレンジングなプロジェクト・ポジションの経験だ。
私は会社でフリーランス人材を「雇う」側だったこともあるのでよくわかるが、フリーランスをアサインする時には将来性なんて見ない。見るのは「いま、何ができるか?」だ。
裏を返せば、フリーランスは「いま自分が当たり前にできるレベル」を超えた案件を受注することは難しい。
よく「フリーランスは今まで貯めたスキルの切り売りになる」という話を聞くが、その理由は上記の通りなのだ。

フリーランスが日銭を稼ぎつつ自分の価値を上げるためには

ここでようやくタイトルのテーマに。
ここまでの流れをまとめると
フリーランスが売上が途切れないようにするには、自分が当たり前にできるレベルの案件を継続受注しないといけない
・フリーランスが成長して自分の価値を上げるためには、チャレンジングな案件を経験することが重要

となる。
相反するこの要件をどう整合させるか?

今のところ私がそれなりに行けそうだと思っているパターンは以下の2つだ。

Ⅰ 信頼を得ているクライアントから未経験の領域を任せてもらう

例えば既に長い付き合いで、自分が業務理解も進んでいるクライアントがいたとする。
そのクライアントでIT課題があり、どうやらあるクラウドソリューションで解決できそうだが、そのソリューションの経験は持っていない。
こういった場合、ある程度完成のイメージさえ持っていれば、「自分がやりましょう」と言ってしまってよい。
クライアントからすれば、少なくとも業務はよくわかっている人が解決のイメージを持っているのであれば、任せないという選択肢はあまりないはずだ。
ユーザ企業と直でやっている場合でなくても、取引先のSIerやITコンサルファームに「アプリだけじゃなくてネットワークもやりましょうか?」といった具合で、垂直展開でスキルを広げていけばよい。
ポイントは「信頼を武器に守備範囲を広げる」ということだ。

Ⅱ 既存スキルセットとの組み合わせで新規案件を受注する

新規クライアントでも、既存スキルセットとの組み合わせで未経験領域を受注することは可能だ。
例えば以下のようなケースが考えられる。

ERP導入のPMO経験が豊富なコンサルタントが、CRM導入のPMO案件を受注
PMOを軸にCRMという新たな経験を取りに行くパターンだ。
PMOは以下の記事でも書いたが、プロジェクト成功のためにあらゆる推進を担うポジションだ。
扱うシステム種別が変わっても基本的な考え方は通用する。

某パッケージ導入に精通したコンサルタントが、同パッケージのプリセールス支援案件を受注
SAPやSalesforceといったパッケージ/SaaSの導入(インプリ)を経験した人が、見込み顧客へのプリセールスを新たに経験するパターンだ。
導入経験があるため、製品のことは割と細かい部分まで熟知しているはず。
製品知識を軸に案件獲得プロセスへと進出するわけだ。

某業界の個別企業IT導入経験が豊富なエンジニアが、同業界特化型SaaSの開発案件を受注
業界知識を軸に、個別企業への導入側から、業界全体を相手にしたサービス開発へと移るパターン。
業界特化型SaaSは、基本的にその業界をよく知った人が作る必要があるわけで、業務を知っている開発者というのは喉から手が出るほど欲しいのではないか。SaaS企業はプロダクトを自社開発するところが多いが、その場合でも雇用形態が正社員ではなく業務委託としているところも結構あると聞く。フリーランスにもチャンスがあるのではないだろうか。

まとめ

以上、フリーランスが日銭を稼ぎつつ自分の価値を上げるためにはどうすればいいかを考察してみた。

短くエッセンスをまとめると
・「軸」となる信頼・スキルをベースに、経験の「輪」を広げていく
・その「輪」がいずれ「軸」となり、描ける輪の数や大きさが増していく

といったところだと思う。

軸と輪のイメージ

これはフリーランスに限った話ではないと思うが、フリーランスは会社員より強くこれを意識する必要があると思う。

それではまた。

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