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『父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』を読んで、自由を考える。

タイトル長い。
最近、多い。こういう系のタイトル。
この本に関しては、このタイトルはマーケティング的にどうなんだろうとちょっと思った。
内容が一ミリも伝わらない。
この本の隣に並ぶのは、『○○で1億稼いだ✗✗が教える△△』とかなので、圧倒的に弱い。
ちょっとオシャンに全振りしすぎよ〜、と思わずにはいられない。

それはともかくどういう本かというと、アメリカとかで流行っている「FIRE ( Financial Independence, Retire Early ) ムーブメント」的な本です(詳しくはwikiで)。
若いうちから、積極的な節約と投資信託orそれに類する投資商品に投資して、30代後半でアーリーリタイヤしましょう、という考えである。
で、この本もその通りのことが書いており、年収の50%貯蓄に回しましょう。金融市場は長期的に見れば成長するものだから、多少暴落しても無視して、投資しましょう。そして経済的自由を得ましょうという内容である。

言っていることはシンプルで、単純である。その分、自分でもできるんじゃないかという思いになってくる。
筆者独特の面白い言い回しや例え話で飽きずに、さらっと最後まで読めてしまう本である。
良著かどうかは人によるのではないかと思う。
ただこの本で重要なのは、なぜ50%の貯蓄ができるのか。そして、投資してお金を貯めてどうするべきなのか、ということだと思う。

よく考えると50%の貯蓄ってどうすればいいんだろうか。正直、自分の家計簿では不可能である。
お金をいっぱい稼いでいるからそんなことデキるんよー、と思わないでもないが、著者が言うには、稼いでいる額ではなく、どこで満足するかというところである。彼は言う、坊主のように慎ましく生きろ、と。
要は、不要なものには一切見向きもせず、自分に必要なものだけにお金を使えということである
そう言われると、煩悩にまみれた自分は「テヘペロでやんす」と言って舌を出して片目でウィンクせざるを得ない。
つまり、著者はちゃんと選択・選別しなさいということを言っているのである。
選別を行えば、本当に必要なものだけ残り、それだけで満ち足りた生活が送れると書いている。書いてなかったかもしれないけど、そんな感じのことは書いていた。
自分にとって必要であれば、旅行してもいいし、ゴルフしてもいい。ただ必要もないのにそんなことはしてはいけないということである。

本書の中には、具体的な投資先や、その割合など、貯蓄した後のシンプルな切り崩し方の指南など役立ちそうなことが多く書かれている。
娘に伝えると銘打つだけあって、その知恵は平明でわかりやすく、語り口はとても優しさに満ちている。
しかし、本当にこの著者が伝えたいことは、そんな数字に支配されたことではない、と思う。
ここに書かれているのは、人生の選択についての考えである。
50%の貯蓄率は必要なものを選んで、慎ましく満ち足りた生活を送ることで達成する。
では、お金を貯めるのは何のためなのかというのが気になるところだ。
それは。

人生の選択肢をお金(仕事)に縛られないようにする。

と言って、朝からシャンパンを飲み続けろというわけではない。
慎ましく生きるのをやめるわけではない。ただ、お金のために働き続けるのをやめられるようにしておきましょう、という意味である。
別にお金を持っても、そのまま働いていてもいいわけである。だが常にいつでもやめられるという選択肢を用意しておくことで、人生を自由なものにしなければいけないと書いている。
そのことに私は何となく共感した。そらそうやんけ、と。

世の中に不要なもののナンバーワンは家賃だと思う。毎月、それなりの額を持っていかれるのだから、バカにならない。
それを払い続けている我々はバカなのかとすら思う。
家を買えばいいんだよ、財産になるから。という考えがあることも知っている。
だが、本書では家は贅沢品だとされている。重要視されていない。ローンを組むのは最低の選択だとされている。
なぜだろう。
ここで私ははたと思い当たる。選択肢が狭まるからだ、と。

自分はしばらくの間、持ち物はトランク一個分くらいしかなかったことがある。いまはそうでもないが、それほど物は多くない。辛うじて未だに電子書籍を使ってないので、本はやたらある。
子供の頃から不自由を嫌うところがあった。なのでスキーやマリンスポーツなんかも意味がわからない。なんでわざわざそんな不自由な装備をつけなければいけないのか。かけっこで充分だ、かけっこで。
とまあ、そんな感じだった。
そんな性分だから、「家」というものを最後に持っていればいいや、くらいに考えている。ちなみに、家というものに付帯するすべてのものについてである。家族。車。猫。ひょろひょろで面長の犬。などなど。
そのどれもを持っている友人なんかも多い。これはお金の問題と言うよりも、選択の問題だと思う。負け惜しみではなく、マジで。
それらは選択の自由を奪うものだからである。
ちなみの本書でも、ある程度の経済的自由を手に入れたら、結婚を考えてもいいだろうと書かれている。「家」は最終的なものなのである。

マイケル・マン監督の名作『ヒート』という映画(おそらくGTA5に多大な影響を与えた)で、ロバート・デ・ニーロ演じるプロの強盗が言う哲学がある。
30秒フラットで高飛びできるよう、面倒な関わりを持つな」というものである。
我々は強盗でもないし、逃げる必要はないのだが、例えばどうしようもないブラックな会社や上司にあたってしまった場合に、やはり30秒フラットで逃げられるようにしとくべきなのではないかと思う。
それがローンや家を持ったために選択の自由を奪われたというのでは、不自由を嫌う自分としては、ちょっと違うな〜、と言う気分になる。
著者もそういう場合や例えば育休したい時やお金は安くてもやりがいがある職を選択できるようにしておくために、経済的自由を得ろと書いている。
働かずにシャンパン飲めとは書いていない。

本書に書かれている自由、つまり人生の選択肢をお金(仕事)に縛られないようにする、というは、実はこの程度のことなのである。
だが、ある世代においては当たり前だった就職、結婚、住宅購入という考え方が、崩壊しかかっている現代日本において、当たり前ではありつつ、当たり前に実行できていないことでもある。
私なんかよりももっと若い人は、本書を読んで、実践してみるのもいいかもしれない。あるいは実践している人もいるだろう。だからこそアメリカで「FIREムーブメント」などというものが流行っているのだろう。
ただ、この流行が一過性のものではない、と個人的には思う。
生活の基盤となる経済や環境がこうした生き方を求めているからである。サバンナのど真ん中ではこうした生き方は求められていない。
なぜならサバンナは初期状態から自由だからである。真っ裸の凶暴な自由。
私もサバンナで人生を謳歌したい。ぞなもし。

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