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外資IT営業で役に立った本10選

明けましておめでとうございます。
新年初投稿ということで本ネタでいきたいと思います。テーマは営業で、特に私が過去8年間営業をしてきた中で役に立った本を紹介します。営業といっても個人向け、法人向け、商材も有形・無形とありますが、IT営業、とくに外資ITでの経験をもとにおすすめ本10冊まとめました。

読み方としては気になったのからまず手に取って読んでみる、1回読むだけだと実践に落とし込むのが難しいので、半年後とかにもう一回読んでみる、その際はメモをとってみると読み返すときにスムーズなのでお勧めです。


『チャレンジャー・セールス・モデル 成約に直結させる「指導」「適応」「支配」』

この5年間くらいの間で一番有名になった”営業本”、”外資IT営業のバイブル”なんじゃないでしょうか。私の経験でも会社を移るたびに参考図書として配られて家に3冊あります(その度に読んでいつも新しい気づきがあります)。
営業のタイプを5つに分けて、その中で「チャレンジャー(論客タイプ)」が一番高いパフォーマンスをあげているとしており、そのチャレンジャーは顧客が”気づいていなかった”新しい視点(インサイト)を提供し、商談を支配して進めていけるとしています。そのためのノウハウや事例がこの本に記載されています。
単純に顧客が教えてくれた課題に対して、自社ソリューションの説明を行うのではなく、まだ顧客が認識してない課題と紐づけることが重要です。そのためには、自社の強みに直結するインサイトが必要で、営業一人がそれを考え出すのではなく、会社事として作っていくことが必要であるとの指摘は印象的でした。
自社が提供できるインサイトとは何か?を考えてみては如何でしょうか。

『隠れたキーマンを探せ! データが解明した 最新B2B営業法』

『チャレンジャー・セールス』の続編となる本書。邦題は『隠れたキーマンを探せ!』となっていますが、英語の題名は『The Challenger Customer』となっており、顧客側の「チャレンジャー」が必要不可欠だとしています。
顧客側の「チャレンジャー」を「モビライザー」としており、モビライザーは一人ではなく、複数の顧客タイプが集まって形成されるとしている指摘は大変参考になります。”キーマン”とか”チャンピオン”とかと混同されているケースもありますが、顧客が買うための意思決定には顧客内の複数の合意形成が必要で、ただ一人だけに向かうのもリスクだし、全員にアタッチするのも不可能なので、モビライザータイプの人を中心に、顧客意思決定を促進し、購入のハードルを下げていけるか、それをファシリテートすることが営業として重要だと、本書は書いてます。
具体的にはモビライザーは3タイプ(「ゴー・ゲッター」「ティーチャー」「スケプティック」)に集約され、「変革に着手し、複雑な購買や変更をめぐる合意をとりつける可能性・能力」をもっている人と指摘しています。

『The JOLT Effect: How High Performers Overcome Customer Indecision』

『チャレンジャー・セールス』『隠れたキーマンを探せ!』に続く?本書は、顧客の契約間際におこるためらいや意思決定ができない問題に焦点をあててます。インサイトも提供でき、顧客のモビライザーを抑えてたとしても、最後契約の際にやっぱやめましたや、コンタクトが途切れ意思決定に至らず商談が破談したり、止まってしまったりするケースへの処方箋として本書は活用できます。
このケースでは、顧客のOmission Bias(不作為バイアス:何かをして失敗するよりも、何もしない方がましと考え、何もしない選択をすること)が影響し、買うことによって何か大きな失敗をしてしまうのではないかという心理が働く、これが意思決定が最後できない要因になります。
面白いのは、顧客はStatus Quoは克服していて、挑戦したら現在よりも状況がよくなると分かっていても、最後Omission Biasが勝ってしまうこともあるという点、またそれを営業が解決しようとする際は、Status Quoに対峙するための方法とは別のアプローチが必要だとの指摘はなるほどなと思いました。
そのアプローチ方法を題名にもあるJOLT:「Judge the indecision」「Offer your recommendation」「Limit the exploration」「Take the risk off the table」です。特に3番目の情報を与えすぎるよりも、indecisionを解消するために必要な情報に絞ることは、商談最後になって多くの機能紹介や比較、効果測定結果を出しても顧客が意思決定できなかった商談はあったなと思い、この本はその経験を言語化してくれました。

『大型商談を成約に導く「SPIN」営業術』

『チャレンジャー・セールス』が出る前は、この本が営業本界隈で一番有名だったのではないでしょうか。特に大型商談で必要となってくる顧客の潜在ニーズを顕在化させ、顧客が抱えている課題が本当に解決しないといけなく、アクションをさせるかを4つの質問アプローチ(SPIN)をもとに解説してくれています。
『チャレンジャー・セールス』で重要視されていましたインサイトは、このSPINを使って抽出することができると思うので、『チャレンジャー・セールス』と補完的な本ともいえるでしょう。
SPINはSituation, Problem, Implication, Need-payoffの頭文字をとってるもので、質問の構成を、状況→問題→示唆→解決の流れで進めることにより、顧客の課題を浮き彫りに、かつ行動を促せるとしています。問題→解決の流れではなく、途中で示唆を与えることによって、課題が解決しないと深刻な状況に陥ることを示す、行動を促すことにつながるとしている本書は、ITソリューションを提案しているすべての方に必要な質問スキルだと思います。

『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』

出版年は2019年、私が読んだのは2022年と、もっと早くに読んでおけばよかったと思った本の一つです。『SPIN』と同じく、商談においての質問力・質問の構成を具体的な言葉遣いや、使える枕詞など、シチュエーションに応じて書いてくれています。
『SPIN』に比べてより実践的で、ある意味日本的ともいえるので、『SPIN』を読んだ後、じゃあ実際どうすればいいのか、となった際は『無敗営業』を手に取るといいでしょう。
商談中はヒアリングをしていきますが、何のためにヒアリングをするのか?どういう観点でヒアリングをしたほうがいいのか?、人によっては経験に依存していたり、質問攻めをしてしまって顧客を疲弊させたり、抑えておかない情報を聞けず無駄が生じたりと、成功も失敗もあるのが、営業あるあるだと思います。すべてがこの本で書かれているものでOKとは言えませんが、ある程度フレームワークや質問も例を交えて本書は提供してくれてるので、適宜振り返りながら、自身の商談や営業に活かせるのでは?と感じた次第です。

『The New Strategic Selling』

ここで紹介した10冊のうち読む優先度としては一番下でもいいかもしれません。Complex Sales(特徴:商談期間が長い、商談関係者が多い、商材単価が高い)と呼ばれる分野で、営業方法論を説いた本です。
初版が1998年で、改訂版が2005年に出されてます。残念ながら邦訳は出てないようですが、外資IT企業の営業研修では、この本の要素が多く取り入れられていると聞いてます。
貴重な営業時間を最大限有効活用するため、また、各商談の質を見極めるため(良い意味でも悪い意味でも顧客に振り回されないようにするため)、6つの営業アプローチ(Six Key Elements of Strategic Selling)と、特に顧客プロファイルを「Economic」「User」「Technical」「Coach」の4つに分けて分析する手法は今でも使える考え方です。

『THE MODEL  マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』

Oracle、Salesforce、Marketoで営業キャリアをつまれ、現在は海外SaaS企業の日本展開を支援しているJapan CloudでCEOを務めてらっしゃる福田氏が書いた、SaaS企業における営業プロセス全体を紹介した本です。The Modelと呼ばれる営業プロセスは、起源としてはSalesforceが生み出したとされ、今では多くの(ほぼ全てだといっても過言ではない)SaaS企業でこのモデルが使われています。
セミナーやHPからの資料請求等の一次問い合わせを、マーケティングからインサイドセールス(内勤営業)に引継ぎ、商談の初期見極め行います。インサイドセールスが、その商談の確度を一定以上と判断すれば、(外勤)営業に引継ぎ、営業が商談を進め契約、契約後はカスタマーサクセスが入りプロジェクトや製品活用をフォローしながら追加ビジネスの機会をうかがう。こういった一連の流れをThe Modelと呼んでいます。
営業プロセス全体の分業化をもたらし、各々が自分の役割を集中的にこなし生産性をあげ、それにより顧客側の満足度も上がるとしています。SaaS企業に転職を検討されている方は、必ず読んだ方がいいと思います。

『システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ』

ITプロジェクト全体がどういった流れで進むのかをフェーズに分けて解説してくれる本書は、営業であっても必ず必要となってくる知識です。
顧客が契約した後、実際に買った製品を使えるようにするには導入プロジェクトを行うので、導入プロジェクトがどう進むのか?導入プロジェクトの各フェーズ(要件定義や設計)がどういったインプットでどんなアウトプットが出てくるのか、概要を理解しておくのは必要です。
イメージとしては一戸建ての家を買ってくれたお客様に対して、その家がどう作られて、期間はどれくらいか等ある程度わかってないと家も売れないと思います。本の題名にもあるように、エンジニアではないあなた(営業も含む)が、顧客にシステムを提案するときに必要となってくるプロジェクトの知識をこの本では学べます。

『筋の良い仮説を生む 問題解決の「地図」と「武器」』

今までご紹介した本で、売り方やプロジェクトについて理解できてきていると思います。ここで一歩立ち止まって、顧客がなぜ製品を買って、その導入プロジェクトを進めるのか、必ずしもITツール導入がゴールではないです。
その背後には経営課題や業務課題があって、いろいろやらないといけないことが企業としてあるなか打ち手の優先度を決めて、最後にその打ち手を実行するためにITツールを活用していこうとする思考プロセスがあります。
ここを抑えるためのフレームワークは色々な本が紹介してくれていますが、私は本書をおすすめします。事業全体を俯瞰して課題を発見し、それの打ち手を考え仮説を検証し、実際に実行していく、この流れの中でITの活用があるわけです。
この流れを理解することによって、IT営業として顧客の検討状況の見極めもできるし、どのタイミングで契約が行われるかの感触もつかめてくると思います。

『なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?』

最後になりますが、営業本としてこの本もお勧めです。GWや夏休み、年末年始とかのタイミングで読んでみるのがいいでしょう。
題名にもあるように、MBAでは”営業”を教えておらず、マーケティング科目の一環で少し触れるケースが多いようです。営業自体、学問として何か公式化・定理化できるものでもないので、教えづらいという側面もあるかもですが、いろいろな局面で営業は大切になってくるので、そういったマインドセットを本書は説いてくれます。
副題にある、「拒絶から始まる世界一やりがいのある仕事」は本当にその通りだなと思いますし、世界を動かしてるのも顧客接点の最前線いる営業だなと改めて実感できる本です。

長くなってしまいましたが、本年も宜しくお願い致します。

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