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仏師とデザイナー

以前テレビで見たある仏師(仏像を彫る彫刻師)の言葉が印象に残っています。仏様を彫るという行為は「彫るのではなく、木の中にすでに居る仏様を表に出してあげる行為だ」というお話でした。
仏様のようなありがたいものは人間の手で生み出すものではなく、すでに唯一無二の存在としてそこにあるのだというようなニュアンスだったと思います。

一本の木や角材から仏像を削り出していく作業は仏師に「こうしたい」という意図があって掘っているのではなく、木の中にすでに存在する仏様に耳を傾け、仏様の「こうしたい」「こうありたい」「こうあるべきだ」 を感じながらその姿を見える形にしていくのだそうです。

デザインってそういうことなんじゃないか

デザイナーの仕事の一つに企業やサービスのブランディングを行うものがありますが、その行為は仏師のそれに似ているんじゃないかなと思います。
企業のらしさが見える形になっていないのであれば、経営者の想いにしっかりと耳を傾けビジョンやミッションを明確に、そしてわかりやすく表面化させてあげる作業。そしてそれを視覚化(ビジュアルデザイン)し、誰もが一目でわかるような状態にする仕事かなと思います。


サービスや商品の魅力が見える形になっていないのであれば、その開発コンセプトや核心をしっかり掴みとり、わかりやすく魅力的な形にアウトプットしてあげるということではないでしょうか。(商品の開発コンセプトから関わるような場合は別です)


これらは「すでに木の中に居る仏様」を見える形にしていくのと同様に、「すでに内在しているが表面化していない企業や商品の魅力」を見える形にするのと同じように置き換えられますよね。

デザイナーの個性はエッセンス

デザイナーであれば「カッコいい実績をつくりたい!」とか「自分らしいデザインにしたい!」と思うかもしれません。私もそう思います。笑。が、ことクライアントワークにおいて、早い段階からそればかりに固執するのはあまりおすすめできません。


デザイナーがやたらと個性を主張するようでは、経営者のビジョンや商品の魅力が濁ってしまい、本来伝えたいメッセージが伝わりにくくなってしまいますよね。それではその企業は長くステークホルダーを魅了し続けることは難しいでしょうし、商品はただのトレンドで終わってしまうでしょう。それではお互いにとってハッピーな結果とは言えませんよね。
デザイナーの個性は、これらの「あるべき姿」「本来の姿」をしっかりと見極めた後の+αのエッセンスで良いのです。
(しかし同時に、その+αに全身全霊全力で挑むことが、その企業や商品を輝かせる絶対的な魅力となるのです。これについては別でまたまとめたいと思います)

「仏と人」を、「企業やサービスと人」をつなぐ存在

話がそれましたが、デザイナーという存在は、仏師が仏様を人々に見える形にし、認識できる状態にするように、企業やサービスの魅力を見える形にし、人々に伝えていく役割を担っているのだと思います。
その存在すらも曖昧な仏様の存在を具現化し、信仰の対象とまでさせたように、輪郭の曖昧な企業やサービスの魅力を具現化し、人々の行動や感情を動かすことこそ、デザイナーの本質なのではないでしょうか。

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