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デジタル版「3C分析」から見出す戦略仮説


デジタルマーケティングに特化した「デジタル3C分析」とは

マーケティングにおける代表的なフレームワークとして、PEST分析、3C分析、5F分析、STP分析や4P分析などがあります。
その中でも、デジタルマーケティングの戦略仮説を構築する段階では、マーケティング戦略全体の視点であれこれ広く捉えすぎずに、デジタル領域特化で顧客・競合・自社を捉える「3C分析」を推奨しています。

ここでは、デジタル領域のマーケットにおける戦況をどのように把握すると良いのか、またどのように戦略仮説を構築すると良いのか、「デジタル3C分析」を活用した方法を解説します。

デジタル版3C分析の全体像「顧客と提供者の整理」

まず初めに、顧客・買い手を俯瞰し見に行きます。

①顧客文脈とマーケットボリューム

ここでは、どの顧客文脈がマーケット的にポテンシャルのある顧客なのかを把握します。

②デジタル競争環境/文脈

次に、①で把握した顧客文脈の視点で、提供者サイド(つまり競合)はどこか?といったデジタル上での競争環境を把握します。

③競合のマーケティング施策

そして、②で把握した競合が現状取っているデジタルマーケティング施策について深堀っていきます。

④自社のマーケティング施策

最後に、自社のマーケティング施策について深堀り、さらに競合と比較していきます。

これらの一連の流れで、自社が選ばれるために取るべきデジタルマーケティング施策は何か?戦略立案の起点となる仮説を構築することができます。

デジタル3C分析の方法とステップ

では、ここからデジタル3C分析の方法をステップ別に見ていきます。

STEP1.顧客文脈とマーケットボリュームの把握

マーケットが今どんな状況にあるのか、自社はどれくらい取れているのかを把握するのはビジネスの基本ですが、専門家に調査を依頼して精緻なデータを取ろうとすると、コストも時間もかかって大変です。
まずは、大ざっぱにトレンドを掴むところから始める必要があります。

ここで使う方法は非常にシンプルで、顧客の検討文脈の主要キーワードの検索ボリュームと現在の流入ボリュームを調べることです。
特に、検索数が多いイコールその課題やニーズをもつ人が多いことにほかならないため、マーケットボリュームの指標として検索ボリュームは非常に有効な指標です。

まず、顧客文脈ごとの検索キーワードのボリューム(想定)を見てみましょう。
具体的な数字というよりは、それぞれのワードの相対的な状況を知ることが重要です。

そして、自社サイトへの「流入ボリューム」の状況を見てみます。
検索ボリュームが比較的大きいにも関わらず、自社内での流入シェアが低い場合は、うまく流入ルートが作れていない、つまりアプローチが足りていないということになります。
現状の課題ではありますが、今後の伸び代であるということも同時に言えます。

顧客文脈別の検索・流入ボリューム

「社会人向け英語学習サービス」のケースで見てみましょう。

  • 英会話文脈:検索ボリュームは最大なのに、流入ボリューム少ないため、ポテンシャルがあると捉えることもできる。

  • オンライン英会話文脈:検索ボリュームがアップトレンドで、流入ボリュームも増えてきているので、こちらも伸び代があると捉えることができる。

  • ビジネス英会話文脈:検索ボリュームは横ばいなものの、流入ボリュームも増えてきているので、相性がよく伸び代があると捉えることができる。

このように、どの顧客文脈にマーケットポテンシャルがあるのかを、キーワードボリュームで調べることができます。

※キーワードボリュームなどは、Googleのキーワードプランナー・Googleトレンドなどの無料で使えるツールを活用すれば、自分自身で簡単に調べることができます。

STEP2.デジタル競争環境の把握

伸び代のある文脈を把握したら、次はその文脈におけるデジタル競争環境を見に行きます。
ここでの方法も非常にシンプルで、各GoogleやSNSなどのプラットフォームで検索し、ヒットする競合を捉えるだけです。
実際にネット検索やSNS検索した際に、検索結果や各種メディアで頻出する競合をリサーチすることで、デジタルで比較検討される競合を正しく把握することができます。

競争環境の把握

「英会話」、「ビジネス英会話」や「オンライン英会話」で検索するとどういったサイトが表示されるでしょうか?
例えば、ビジネス英会話では競合Bが目立つ、オンライン英会話では競合Aが目立つといったように、検索キーワードによって競争環境・競合の顔ぶれは異なっています。
このように、検索するだけでもデジタルでの競争環境を正しく把握することができます。
ここで、競合の「顔ブレ」から、現時点で勝ち筋があるのかを含めて、伸び代を把握することもできます。

実際にリサーチしてみると、同業界でベンチマークしている競合も、デジタルでの比較検討上では全然競合していない、逆にベンチマークしていないところが競合しているといったケースがあります。

例えば、自動車業界において、HONDAのベンチマークしている競合はトヨタだと言えるでしょう。
しかし、HONDAの車種「N BOX 購入」と検索すると、もちろんHONDAの公式サイトが検索結果で表示されますが、カーセンサーやグーネットなどの自動車メディアや価格ドットコムのような比較サイト、ガリバーやネクステージのような中古車サイトも情報提供しており、検索上に表示されます。
つまり、デジタル環境においてはHONDAとトヨタといった業界でいう対立構造ではない、インターネット上特有の比較検討の構造が存在しているということです。

STEP3.競合のマーケティング施策の把握

そして、想定した競合のデジタルマーケティング施策を把握します。

競合のマーケティング施策の把握

こちらは競合調査をした後のアウトプットの例ですが、それぞれの想定した競合が顧客層ごとに「何のデジタルマーケティング施策をしているか」を調査し、マッピングしています。
そこから、競争環境で自社が何をすべきかの仮説を立てることができます。

競合Aは、潜層層に対してインフルエンサーを活用してSNS・YouTube施策を実施しています。
コンテンツでも、体験コンテンツ、英語学習法BOOK公開など潜在層獲得に向けた施策に注力していることがわかります。

また、顕在層に対しても、顧客別に複数パターンのLPを訴求したり、診断コンテンツでスムーズにコースを選べるようにしたりと、しっかりと施策を打っていることがわかります。

このように、想定した競合のデジタルマーケティング施策は、ネット検索やSNS検索をするだけでも、簡単に把握することができます。

さらに、ここでも、競合のリサーチを深堀ると発見があります。
競合していると思っていた同業他社が検索広告よりも、SNSやYouTubeでの露出を増やしていたり、特定のSNSや比較サイト、ランキングサイトでの露出を増やしているかもしれません。

例えば、実店舗の商売において、徒歩数分のところで同業他社の店舗が出れば、どんな風に施策を売っているのか?少し気にして見れば何となくわかります。
しかし、オンライン上で、どんな風に競合しているのかは、自ら検索してリサーチしてみなければわからないものなのです。

STEP4.自社のマーケティング施策の把握

続いて、自社のデジタルマーケティング施策を把握します。

競合に対して行なった調査を、自社でも同じように行います。
ここでは主観が入ってしまいやすいですが、なるべく客観的に調査、評価をしていきましょう。
実際に、簡易的に顧客にヒアリングするなどはおすすめです。

その後、競合と比べて各項目が「うまくできているのか」「手薄になっていないか」などを評価していきます。
もし、自社評価が△や×といったように悪い評価が多くなってしまっても、悲観するのではなく「伸び代ポイント」と捉えましょう。

自社のマーケティング施策の把握

自社は、潜在層向けにブログの記事をでコンテンツマーケティングを展開しているのみですが、ベンチマークしている競合AB社は、ブログの記事でコンテンツマーケティングを展開しているだけでなく、インフルエンサーを活用したり、SNS・YouTubeなどで「動画コンテンツ」や「セミナーコンテンツ」を積極的に展開したりしていることがわかりました。

ここから、この潜在層の段階で顧客が他社に興味関心をもち、流れている可能性はないのか?といった具合に、競合と自社の比較から仮説立てをすることができます。
そうなると、課題が明確になり、自社も潜在層向けにアプローチを強化する必要があると判断することができます。

このケースでは、潜在層をピックアップしましたが、他の顧客層でも同じように競合と自社の比較から仮説を構築していきます。

STEP5.戦略仮説の構築

そして、まさにこの競合と自社の比較から仮説構築をしていくのが、戦略仮説の構築になります。
戦略仮説の構築は、ファネル別と競合別のマトリクス表をベースに検討することをお勧めします。

戦略仮説の構築①

この表をつかって、競合と自社のデジタルマーケティング施策を整理して比較してみると、
現状足りていない部分やより強化した方がいいところが明確になり、自社がとるべき戦略の仮説を立てることができます。

今回の「社会人向け英語学習サービス」のケースでは、2つの仮説が洗い出されました。

仮説①:潜在層~比較検討層といったまだライトな顧客に対して、十分にアプローチができていないが、競合ABでも顧客アプローチができているので、最適なアプローチを強化することで顧客の拡大を実現できないか?

仮説②:顕在層に対しても、複数いる顧客文脈に対して最適なランディングページ用意できていないので、まだまだ最適化における改善余地十分にあるのでは?

このように、潜在層向けのアプローチが不十分であると現状認識し、潜在層へ拡大できる余地があるといったビジネス機会を捉えたり、顕在層でも競合に負けている事実に気づき、リプレイスする戦略を検討したり、ビジネス課題に紐づいた有効な戦略仮説が構築できるようになります。

この場ですべて決めきると思わず、まずは戦略仮説として、設定するスタンスが重要です。
なぜなら、ここから必要に応じた顧客調査などを行なっていくからです。
正確性や確実性を求めすぎて不必要に立ち止まることなく、戦略仮説をアウトプットしてみましょう。

最後に、戦略仮説が構築できた段階で、戦略の方向性としての「目的・ゴール」を定義します。

戦略仮説の構築②

今回のケースでいうと、

  • 新規ポテンシャル顧客の拡大

  • 文脈別LP改善によるCVR向上

といったものがゴールイメージになります。

また、このあと戦略仮説を検証するために、

  • 必要な論点は何か?

  • その仮説を検証するために、どんな調査を行うと良いのか?

といった検証ポイントについて詰めていきます。

例えば、戦略仮説上のポテンシャル顧客はどんな顧客なのか?果たしてどれくらいいるのか?どんなニーズを持っているのか?といったことを定量・定性調査の両方で確認をするのも重要な論点になります。
また、顧客がなぜ選ばなかったのか?なぜ検討を止めてしまったのか?などのマイナス要素も調査で確認する必要があるかもしれません。

このように、戦略仮説があることで、デジタルマーケティングとして何を明らかにしたいかの目的・ゴールが明確になります。

まとめ

デジタル3C分析は細かい分析より大枠を捉えて戦略仮説をもつことが大切

いかがでしたでしょうか?
デジタル領域におけるマーケット把握から戦略の仮説構築までの一連の分析リサーチですが、精緻なデータを取ろうとしなくても把握することができます。

ここでの重要ポイントは、デジタル3C分析の段階では、細かい分析をしすぎずに大枠を捉えることです。
なぜなら、売上拡大に向けた「戦略仮説」をもつことで、定量調査・定性調査によって実際にこの仮説を検証し、具体化することができるからです。
えいやで決める面と、着実に情報を積み上げていく面をうまく使い分けて、戦略立案のスピードと精度の両立を目指しましょう。

最後に。日経ビジネススクールの講座紹介

日経ビジネススクールのオンデマンド動画講座では、「デジタルマーケティング戦略立案」について、より詳細を解説しております。
デジタルマーケティング戦略立案において、概念的な基礎知識だけなく、実践的で再現性の高い「戦略立案方法」を解説しております。ご興味があれば是非試聴してみてください!

講座の想い
「未経験でもデジタルマーケティングを活用してもらいたい!」

私自身は、営業出身で新規開拓営業からソリューション営業まで多くの企業様への営業経験をさせてもらい、そこで強烈に感じたのは、ほぼ100%に近いクライアントがデジタルマーケティングに課題を感じており、「事業を生かすも殺すも、デジタルマーケティングをものにできるか否か」といった現実でした。
そこから、デジタルマーケティングの必要性を強く感じ、未経験でデジタルマーケティングのコンサルティング業に転身しました。
そして、BtoC、BtoB問わず、大手企業からベンチャー企業までデジタルマーケティングを活用した事業成長支援を、通常の倍速以上で濃縮に経験させてもらいました。
もちろん、クライアントへバリューを提供するために、ご飯を食べるように書籍や動画など、デジマケ関連の情報は読み漁りました。
そこで感じたのは、WEB広告、SEO、SNS、LP改善などなどなど施策単位のナレッジ・方法論は人生賭けても読みきれない程解説されていますが、「何をすべきか?」の戦略的な問いに対して理解することが難しいと感じました。
というのも、デジタルマーケティングは、「施策メニューが多い!分析データ量も多い!」と「忙殺の沼」にハマりがちです。
今回の講座では、デジタルマーケティングは何から始めるべきか?といった問いに対して、「顧客文脈」と「競争環境」から紐解いていけるように解説した講座になります。
デジタルマーケティング特有の横文字が多いのはご容赦いただきたいのですが、デジタルマーケティングに関わる方には、お役に立てる講座です!
僕自身がそうであったように、未経験でも体系的に理解できるように、出来る限り解説しております。
是非、ご興味あればご試聴ください。拡散も嬉しいです。

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