ふつうの男
「千マイルブルース」収録作品
ふつうの男になりたかった俺は……。
ふつうの男
『普通じゃないステキなあなたへ はあと』
まただ。俺は箱根峠の路側帯で、うんざりしながら携帯電話を眺めていた。昨夜、沼津の飲み屋で知り合った女だ。かなりのメール魔らしく、もう三十件以上送られてきている。コーナーを攻めようとするたびにポロロンと鳴るのだから、なんともたまらない。どうやら「普通じゃない」俺が気に入ったらしいが、誤解だ。人一倍、普通のつもりで生きているのである。
「ふつう、か。そういえば、ここいらだったな……」
急いで帰宅する理由のない俺は、お気に入りの場所に寄ることにした。
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