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第6章 タイプ別資格戦略構築法

資格でつくる戦略的人生ロードマップ
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自分のキャリアと一貫性のある資格を選択する

資格を選ぶときには、資格のカタログからではなく、「自分がやりたいことから選んでください」ということをお伝えしました。

自分自身がやってきたキャリアと、自分が本当にやりたいことをリンクさせて、それにふさわしい資格を選び、スキルアップするのが、本当の意味での「人生戦略」になりますし、収入アップにつながります。

しかしながら、ただ「自分のやりたいことに合った資格を選びなさい」ということだけでは、あまりにも漠然としています。それに、取っても効果がない資格を選んでも勉強の時間が無駄になってしまいますので、フリーランスとして動きやすい資格と、キャリアから選びやすい資格のジャンルを紹介します。

資格を見極める際のポイントは、第3章で説明したとおりですが、もうひとつ気をつけておきたいポイントがあります。それが、あなたの「キャリアや人生経歴との一貫性」です。この一貫性がないと、フリーランスとしては信用されにくいので、できれば一貫性のある資格を選択するようにしましょう。

たとえば、法律系の行政書士や社会保険労務士の方の中には、前職が法律とまったく関係のなかった人も多く見受けられます。

決してそれが悪いとは言えないのですが、お客様から見たら、「なぜこの人はその仕事を選んだんだろう?」と不思議に思えることも多いのです。ですから、できれば一貫性がある資格を選んでください。

人事や総務にいたから社会保険労務士、経理や経営にかかわることが多かったから税理士など、客観的に見て一貫性がある人とない人では、明らかにある人を信用するものです。

すでに資格を取ってしまっている、あるいはもう資格の勉強を始めているという場合には、「なぜ、その資格を選んだのですか?」と聞かれた際に、「私は○○○という理由からこの資格(仕事)を選んだのです」と言えるようにしておけばいいのです。多少こじつけに近くても、まったく一貫性がないよりはマシだと言えます。

もちろん、なかには心機一転、なるべく前職に関係ない仕事がしたいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、よほどの理由がないかぎり、180度の方向転換は一貫性に欠けることがありますので、選択は慎重にしましょう。

また、せっかくこれまで積み上げてきた経験を、最初からなかったことにしてしまうのも考えものです。ないものを見つけたり身につけたりすることはとても大変ですが、あるものを伸ばすのはそれに比べれば簡単です。

あなたにもこれまで積み上げてきたものがあると思いますので、ぜひそのキャリアにも光を当ててみてください。

ビジネス系資格 行政書士、税理士、社労士など

本書では、独立できる法律・会計系の資格を「ビジネス系資格」として分類しました。この手の資格は、難易度が高いことと、独立開業に向いているというのが大きな特長といえるでしょう。

【向いている性格、思考】
独立志向があり、細かい仕事が好きな人に向いています。とくに税理士の数字や行政書士の許認可などは、ミスが許されない仕事です。ですから、仕事をやり遂げる根性も必要です。

また、これらの資格は「話し下手でも看板で仕事が取れる」と考えられがちですが、実際はその逆。難しいことを簡単に伝える必要がありますので、コミュニケーション能力を高めていく必要があります。書類をつくるだけというイメージも強いのですが、実際はそれ以上に人と会う機会も多いのが現実です。

経営者と仕事をすることも多いので、自らの経営能力を高めていく必要も当然あります。さらに、以前に比べ資格者の数も増えてきており、取れば安泰という時代は終わったと言えます。

ただし、将来的に独立したい、法律というジャンルで仕事がしたいと強く決意できるのであれば、多くの人に会えるので楽しい仕事と言えます。私はこのジャンルに入ります。

【試験についての考え方】
試験は難易度が高いものが多いので、戦略づくりといつまで受け続けるか、そして受からなかった場合にどういう選択肢があるかを事前に考えておくことが重要です。資格のために人生を台無しにすることがないように慎重に考えてください。

資格を取りたいという気持ちが、本当に自分のやりたいこととマッチしているのか。単に資格だけ取れれば、あとは安泰というような無根拠な逃避や、自分が持っている資格をバカにされたから難易度の高い試験に受かるなどという憤怒だけでは、本来自分がやりたいことと離れてしまう可能性があります。

そのため、試験に受からなかった場合の戦略もセーフティネットとして考えておくことは重要です。一見逃げ道のように見えるかもしれませんが、資格で人生を台無しにしないためにも、考えておくべきなのです。

【資格の概要】
①弁護士……ロースクール、旧司法試験などから受験可能。ただし、超難解試験。受験するなら落ちた場合のことも考えて戦略を練るべき。扱う仕事は、裁判や法律事務。最近は弁護士事務所に就職できないケースもあり、合格したからといってそれで安泰とは言えない。

②行政書士……年1回の試験がある。一般教養があるため(平成21年現在)、運にもかなり左右される。短期間で受かる試験ではあるが相性があるため、受からない場合のことも考えて戦略を練るべき。

扱う仕事は許認可の手続き代行や外国人の各種手続きなど。業務そのものは単発系の仕事が多いので、自分自身でそのほかに関連したビジネスを展開することで大きな展開が期待できる。経営コンサルタントを目指す場合にも有効。

③社会保険労務士……年1回の試験がある。年々難易度が上がっているが、行政書士よりは努力が報われやすいと言える。仕事は企業の顧問、労務手続きなど。顧問を取ることができれば、社労士だけでも安定させやすいと言える。

社労士は顧問となると値段勝負になりがちなので、同業他社との差別化がキモとなる。

④税理士……科目ごとに受けるという特殊な試験。その意味では努力が報われやすい。経理から申告というのが法人の義務であるため、税理士が増えた現在でも堅い資格だと言える。経営者の懐を見ることになるので、「信頼できる人間」になるのが最重要。

⑤中小企業診断士……年1回の試験がある。いわゆる独占業務がないため、自分自身のサービスのメニューづくりと実績が重要。コンサルタントはこの資格があってもなくてもできるので、資格の取得のみを目的とすることでは意義が薄い。扱う仕事は主にコンサルティング。講演をおこなう診断士も多い。

⑥司法書士……筆記と口述試験がある。弁護士の次に難易度が高い。しかし、その一方で扱う仕事の幅は、さほど広いとは言えない。

扱う仕事は登記、破産手続き、簡易裁判など。ただし、登記に関しては会社や不動産の手続きでは必ず必要となるので、本人の営業力によって成果が決まるケースが多い。

コミュニケーション系資格 コーチング、カウンセリングなど

人と人との対話を中心に仕事をする資格を「コミュニケーション系資格」と本書では呼んでいます。比較的資格取得が容易で、ビジネスの基本となるコミュニケーションに関することなので、今後はより注目されるジャンルであると考えています。

とくにコーチの発展はめざましく、コーチングを受ける人は急増しています。そういう意味でも注目の資格だと言えるでしょう。

【向いている性格・思考】
人と話すことが好きで、他人の成長を喜べるような人に向いているのが、このジャンルの仕事です。いい加減な仕事はもちろんできませんが、法律のような厳格さは求められませんので、始めやすい仕事であると言えます。

技術さえ身につけてしまえば、あとは顧客を増やすだけで仕事を取ることができますが、お客様を選べないという面もあるのが、このジャンルの仕事です。

コーチングもカウンセリングも、自分が苦手なタイプの人も来ます。もちろん、ある程度のふるい分けはできますが、ときには苦手だと思うタイプの人も相手にしなければならないこともあるでしょう。

また、コーチもカウンセリングもお客様の状況によっては、きわめて人生に重大な問題を取り扱うことになります。ときには「話を聞きたくない!」と思うこともあるでしょう。場合によっては、そういうお客様もいるということを忘れないでください。

心や感情を扱うわけですから、人一倍相手のことを考えることが重要ですし、本当の意味で「人が好き」でないと務まらない仕事だと言えます。また、個人の能力によるところが大きいので、いつまでも現場で自分の能力を高めていきたいという成長意欲のある人にもお勧めです。

【試験についての考え方】
コーチやカウンセラーは「スキル資格」ではありませんので、なくても活動はできます。しかしながら、能力向上のためと、フリーで活動するための「信頼」を得るためには資格は持っていたほうが有効だと言えるでしょう。

試験については、講習を中心としたものが多く、難易度は比較的低いと言えます。ただし、そのぶん講習にかかる受講費も高くなっているケースが多いので、自分自身の懐事情と相談して、受講を決めましょう。

【資格の概要】
①財団法人生涯学習開発財団 認定コーチ……コーチングの資格の代名詞ともいえる資格。コーチを目指すのであれば、この資格があれば十分。

コーチの仕事の内容は「セッション」といわれる対面・通信によるコミュニケーション。コーチングの技術に基づき、質問を重ね、クライアントの悩みをクライアント自らに解決させる手法。

②各種カウンセラーの資格……認定カウンセラー、産業カウンセラーなどの資格があるが、実際のところそれだけで収入を増やせるということはあまりない。カウンセラーとして実績を積み、サービスのメニューをつくることによって初めて収入につながるケースが多い。扱う仕事は悩みやストレスを抱える人の相談など。

デザイン系資格 DTPエキスパート、カラーコーディネーターなど

いわゆるデザインに関する資格のことを「デザイン系資格」と本書では呼びます。ウェブサイトのデザインなどは、これからも増えていくと予測されますので、この分野で堅い人脈と腕があれば、ビジネス系の資格よりも「手に職」だと言えます。

カラーコーディネーターやスタイリストなどの仕事も、地道にお客様を取り、ひとりひとりのお客さんとつながりができてしまえば、口コミや紹介で仕事が増やすことができ、大不況がないかぎりは好調な仕事ができます。

ただし、この手のジャンルは、結果が「見えるもの」であり、しかも「オリジナリティ」を強く求められますので、より職人気質も必要だと言えるでしょう。

【向いている性格・志向】
これもビジネス系と同じく、作業も多いですが人と会ってコミュニケーションをすることがとても多い仕事です。ですから、人と話してアイデアを出したり会議をしたりすることが苦手だと、かなり苦痛な仕事であると言えます。

デザインに関する仕事なので、結果がすべてです。ビジネス系資格のように、「法律がこうなので……」というような何かに頼った説明はできません。ウェブサイトデザインの腕が悪ければ、他にも腕のよいクリエイターはいるわけですから断られる可能性もつねにあります。自分自身の能力を高め、クリエイターとして自信をつけていかないと成立しないでしょう。

また、作業そのものはひとりでやることが多くなりますから、仕事そのものが好きでないと続かないようです。「デザインが三度の飯よりも好き」でないと、最終的には続かないでしょう。

【試験についての考え方】
この資格も「スキル資格」ではなく、「ステータス資格」になりますので、資格取得そのものではなく、能力の向上を目的とすることを忘れないでください。

資格にはパブリックな資格と民間資格がありますが、クライアントから見るとあまり差がわかりませんので、やはり自分の技術がすべてということになります。ただ説明する際に、公的資格のほうがやや信頼度が高いとは言えるでしょう。

【資格の概要】
①DTPエキスパート……雑誌や書籍、パンフレットなどの文字入力からレイアウトデザインまでおこなうのがDTP。出版・編集、ウェブデザイナーに多い資格。ステータス資格であるため、クライアントから見れば名称から「デザインのスキルが高い」という印象を持たれることが多い。

②Webデザイナー検定……ウェブサイトのデザインから構築までを学ぶ。1級から3級があり、1級がいちばん難関。全体の合格率は高いので、フリーのウェブデザイナーとして活動するための取得としては始めやすい資格と言える。

③色彩検定……文部科学省認定の色彩検定試験。色は生活・ビジネスシーンのあらゆるところにあるので、サービスのメニューがつくれれば、フリーランスとしても十分通用する。

技術系資格 ソフトウェア開発技術者など

ソフトウェアの開発、システムの開発などを請け負うフリーランスのことを「技術系資格」と本書では呼びます。

インターネットを通じて集客やサービスの提供をすることが当たり前になってきた現在、フリーランスで開発を受けられることができれば大きなメリットです。なぜなら、ソフトやシステムの開発は本来数百万円、数千万円かかるのが当たり前となっており、中小企業が経営上必要と思っていても、なかなか投資できずにいるからです。つまり、個人が法人の価格より安価に請けられれば、小さな会社を相手に仕事が無数にあるのです。

【向いている性格・志向】
このジャンルで活動する場合にも、やはりコミュニケーションが必要です。人と話すことが好きでないと厳しいと言えます。

なぜなら、ソフト開発やシステム開発には専門用語が多く、それをわからない人を商売相手にするため、より高度なコミュニケーション能力が必要だからです。

また、この仕事もやはりこの仕事そのものが好きでないと、苦しむことになる可能性が高いでしょう。作業に没頭する必要がありますし、また一所懸命つくったとしても、クライアントがそのすごさを理解できないことも多いからです。

【試験についての考え方】
技術系の資格も多数ありますが、やはり「ステータス資格」ですので、資格取得そのものを目的にする必要はありません。どちらかというと、資格も大事ですが、コミュニケーション能力を磨くこと、自分自身の成果物(システムなど)を見せられるように普段から準備をしておくことが重要です。

自分自身の能力を高めることとPR活動が、技術系フリーランスにとっては最重要課題になりますので、資格は技術向上のために取得するという考え方がベストでしょう。

【資格の概要】
①ソフトウェア開発者試験……プログラムなどの設計や開発、テストまでできる能力を問う試験。合格率はやや低め。これがなくても当然仕事はできるが、国家資格のため信頼度はきわめて高く、あれば開発のプロフェッショナルであることを口頭で伝える必要がなくなる。

②各種テクニカルエンジニア試験……ネットワーク、データベースなどの能力・知識を問う試験。国家資格だが、合格率は低い。この種の資格もなくても仕事はできるが、あれば大きな信頼を得られることになる。

※掲載されている内容は、作品の執筆年代・執筆された状況を考慮し、書籍販売当時のまま掲載しています。

本書「ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本」は、当初「なぜ、人は資格に恋してしまうのか」と改題し、POWERCONTENTSPUBLISHINGより加筆編集の上再出版される予定でしたが、現在の刊行が未定となったため、現在は横須賀輝尚オンラインサロン四谷会議でその改変原稿を読むことが可能になっております。

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四谷会議は横須賀輝尚が考えていることの公開と実践と結果、検証、問題勃発などを一番近くで見られるところです。リアルタイムの舞台裏とでもいいましょうか。そのうえで考える力を身に付けてもらえるよう、毎日記事を投稿しています。コンセプトはGet "Think more."です。


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