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第11章 資格フリーランスの次のステップ

資格でつくる戦略的人生ロードマップ
2009年、インデックス・コミュニケーションズより刊行された「ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本」を全文無料公開中。横須賀輝尚の著作の中では、初めて「これから資格を取る人」に向けられた書籍。2019年全文無料公開。

迷ったら立ち戻ってほしい質問

「スキル資格」も「ステータス資格」も、頑張って勉強して、資格を取ることそのものはとても素晴らしいことで、価値あることだと私は考えています。

不景気の影響などもここ数年騒がれて久しいですが、成人して就職し、一定の職につき、一定の仕事さえこなしていれば、ある程度の収入を得ることは誰でも可能です。ですから、極端な言い方をすれば、勤勉でなくても、資格を取らなくても、生きていくことは可能なわけです。

現在、職がないといえども、求人はありますので、選ばなければ仕事を得ることはできます。そして、一定の収入さえあれば、成長意欲がなくても、あとは惰性でも趣味に興じるだけの人生を送ってもかまわないわけです。当然、資格を取る以外にも、いろんな選択肢があるわけです。

こうしたある意味では「楽な道」も選べるなか、「資格を取る」という自らに試練を課し、成長しようとする人を私は本当に尊敬します。私自身も資格を取りましたが、やはりそれは大変なことであり、多くの苦労をしました。こうした苦労をするからこそ、もっと望むような人生、ありきたりな言葉ですが、「幸せな人生」を送ってほしいと思うのです。

ところが、資格についてはTVコマーシャルや広告がしているような「取れば収入が上がる」「転職に必ず役立つ」などの過度な表現により、自分にとって本当に必要かどうかもわからず、なんとなく資格を取ろうとして、なんとなく資格取得の道を選び、時間をただ消費してしまっているだけの人が多いのも事実です。

本書では何度もお伝えしていますが、資格のためにあなたの人生があるわけではありません。あなたの人生をよりよくするために資格があるのです。

しかしながら、「スキル資格の悪しき専業理想主義」をはじめとして、資格中心に物事を考え出すと、悪魔のスパイラルに陥ってしまう可能性も高いわけです。これは資格の強い魅力でもあり、同時に大きな落とし穴でもあります。

そんなとき、やはり立ち戻ってほしいのが、「結局、自分は何がやりたいのか?」という根本的な問いかけです。

行政書士を取る、税理士を取る……たしかに価値のあることです。しかし、その資格を取る前の本来の目的はなんだったのか? 収入を増やしたいだったのか、家族を幸せにしたいだったのか、そうしたことをつねに忘れないでいてほしいと私は思うのです。

本当の意味での「人生の成功」とは?

ちょっと大げさな言い方かもしれませんが、資格を取ることで人生を間違った方向に向かわせてほしくはありません。何度もお伝えしていますが、資格は価値あるものだと思います。しかし、それがすべてではありません。

とくに行政書士や社会保険労務士、税理士などの士業系の資格は、その職業につくことが大きな目標になっている人も非常に多いのです。

もちろん、資格を目指して、その資格を取ることは価値あることです。ただ、多くの資格取得希望者、取得者を見て感じるのが、資格そのものを目的にして、人生の夢のような位置づけにしてしまっているのです。

しかし、子供のころに描いた「大人になったらなりたいもの」に「行政書士」や「税理士」をあげていた人はほとんどいないでしょう。なにかしらのきっかけで資格取得の道を選んだのでしょうが、それまでは違った夢を持っていたはずです。そうした、心からの夢をぜひ忘れてほしくはないと、私は思っています。

少し話が大きくなりますが、資格を目指すことで、「成功」の定義もすこしぶれてしまっているような気がします。資格を取ったら勝ち組、取れなかったら負け組。取った資格の中でも勝ち組と負け組があって……というような優劣のつけ方や、資格取得者同士の無駄なヒエラルキーのようなものほど、無意味なものはないと、私は強く思います。

そうした意識があることによって、本来目指すべき方向がわからなくなっているのです。

「○○という資格を取った。しかし、××という資格に比べてレベルが低いと言われた。悔しいから××の資格を何年かけても取る」

ハングリー精神は私も重要だと思いますが、プライドや意地によって、ただ資格を取ることだけを目的にして、その先の夢がないとなるとやはり本末転倒になってしまうと思うのです。

私なりの成功の定義をお話しすれば、成功というのはひとつの定義ではくくられません。ひとりひとりに成功の定義があり、内容が異なります。

ですから、「資格を取って成功」というのもひとつの形ではあります。しかし、それだけでは、必ずしもあなたの成功とはかぎりません。成功したいと思ったら、まずはあなただけの成功とは何かを考える必要があるわけです。

私が自らの経験から、成功に必要だと考える要素は、①経済的成功、②人間関係的成功、③社会実現的成功、この3つです。

まずは経済的な成功ができなければ、好きなものも買えませんし、食べることも住むこともできません。次に人間関係。お金があっても、資格があっても、人間関係を壊してしまっては、やはりそれは不十分になることが多いのです。さらに社会的実現。これを私は「使命感」とも呼んでいます。

とくにスキル資格は画一的な仕事です。人は誰しも「人と違うこと」が好きで、そこに魅力を感じたりします。ところが、資格はある意味では同じ資格を持っていれば、誰がやっても同じような内容になりやすく、「なぜこの仕事をしているんだろう?」と自問自答してしまうことも、実は多いのです。

ですから、「本当は何がやりたかったのか?」を追求していかないと、資格を取って開業しても、3年から5年くらいで、急にモチベーションが下がってしまいます。

資格を取って独立開業する人ほど、自分なりの社会的使命感を見つけることが重要なのではないかと思うのです。その中で資格が必要であれば、資格を取るべきなのです。

私自身は資格を取ったあと、自分自身の使命を見つけることによって、今日に至っています。もし、あなたが自分自身の成功を定義したときに、あるいは幸福を定義したときに、「資格」があるのであれば、真剣に資格取得をし、その成功を成し遂げてください。

あなたが資格の世界に入って活躍されることを期待しています。

「資格起業家」という次のステップ

資格取得したあとのステップには、いくつも選択肢があります。転職するもよし、社内で昇進を狙うもよし、独立するもよし。

ただ何度も本書の中でお伝えしているとおり、いつ自分自身がリストラ対象になるかわからない現代では、今後は自分自身の収入は自分でコントロールしなければ、安定はありえません。最終的にはフリーランスにならなくても、「フリーランスで活動できる」ようにはなってほしいとお伝えしました。

私自身も23歳の若さであっけなく失職し、収入を失いました。そんな場合に、必要とされる人材になっていること、自ら収入を得られる人材になっていることはきわめて重要です。その際に使い方・考え方を間違わなければ、資格は必ず役に立ちます。

私自身、行政書士で開業することを決めたときに、「独立起業した」と言うのはなんだか大げさで、自分自身をそう表現することに躊躇がありました。その際にフリーランスで活動するという言い方をし、納得した覚えがあります。ですから本書でも、まずはフリーランスで活動することをお勧めするというような言い方にしました。

しかし、フリーランスといえども、自分で仕事をつくるようになれば、どんなに小さくても、それは立派な「起業」です。何億ものお金を動かすことだけが起業ではありません。「起業家」というと、とても大きなことのように思えますが、資格を使ってフリーで活動することも起業なのです。

ただし、安直に「資格で起業」となってしまうと、本書で何度もお伝えしているように「スキル資格の悪しき専業理想主義」にさいなまれ、負のスパイラルに陥ってしまいます。それは、やはり最初の目的と離れてしまうわけです。

資格を取ったといえども、あなたらしい仕事のつくり方、収入を得る方法は無限にあります。資格を取ることで不自由になってほしくはないのです。

税理士だってモノを販売してもいいでしょうし、社労士だってセミナーをしたり、コンサルティングをしたりしたっていい。資格を取ったからといって、その資格に縛られることはないのです。

私は、こうした資格にとらわれず、本来の自分自身のやりたいことと経験、能力を生かして自由な発想でビジネスを起こす人のことを「資格起業家」と呼んでいます。

最初はどんなに小さくても、自分自身でビジネスをするのですから、月数万の収入アップを目標にすることももちろん重要ですが、せっかく自分自身のやりたいことが見つかったのならば、夢は大きく持ってほしいと私は考えています。

年収300万円を目指していては、年収1000万円にはなれないでしょう。1000万円を目指していくから、400万円、500万円というような年収が得られるのだと考えています。

スケールは大きく描いてください。あなたの可能性はあなたが決めているのです。

私も「資格起業家」です。もし、あなたが資格起業家を目指し、大きくビジネスをしようと考えれば、それは実現できることだと思います。

フリーランスで始め、目標を高く持ち、もうワンランク上の資格起業家を目指すというのも、ぜひあなたの次の選択肢に入れておいてください。

何のために学ぶのか?

最後にもうひとつ。資格にはパワーがあります。信頼やスキルアップという効果があります。だからこそ気をつけたいことが、実はあるのです。

それは、「資格がなくなったら、どうするか?」ということ。

「行政書士だから、仕事を頼んでいる」「税理士だから、仕事を頼んでいる」というように、最初はなるでしょう。もちろん、それは資格の特長ですし、いいことです。

しかし、それでは本当の意味で必要とされているとは言い切れません。仮にあなたが行政書士だったとして、あなたが行政書士だから仕事を頼まれているとしたら、いまはそれで仕事があり、ビジネスが成立していたとしても、あなたより安く仕事をしてくれる行政書士がいたら、もしかしたらお客様はあなたからいなくなってしまうかもしれません。

また、極端な話、たとえば行政書士という資格がなくなり、誰でも行政書士の仕事ができるようになった場合、お客様は同じように仕事を頼んでくれる保証はないかもしれません。

これが資格のよいところでもあり、怖いところでもあります。

では、どうしたらいいのか? あなたから資格を除いたとき、残るのはあなた自身です。つまり、「資格があるから仕事を頼んでもらえる」のではなく、「あなただから仕事を頼んでもらえる」ようにならなければならないと、私は思うのです。

資格取得者は、これからも増えるでしょう。今後は資格をただ持っていることだけではアドバンテージにはなりません。資格の能力とはまた別に、あなただけの能力を磨き、あなたの人間性を磨き、あなただから仕事を頼まれる。そういう自分の成長のさせ方をしていかなければ、いくら資格を取っても望むような状況にはなれないでしょう。

逆の言い方をすれば、資格にあぐらをかくのではなく、お客様、スタッフ、家族、自分自身の関係者のためにつねに学び、自分を磨いていけば、仮に資格がなかったとしても、一所懸命な人間をまわりが助けないはずがありません。

資格が功を奏すこともありますが、資格そのものがあなたのアイデンティティにならないようにしてください。

資格を取るということは、勤勉で真面目であることの証拠です。その勉強の先に、自分だけではなくて、お客様、スタッフ、家族の存在をぜひ考えてください。

私が尊敬する人のひとりに中村天風さんという方がいます。もうすでに亡くなられている方ですが、その著書などの中に次のようなエピソードがあります。

中村天風さんにはお弟子さんがたくさんおり、お弟子さんがあるとき、こう尋ねたそうです。

「先生、なぜ私たちは学ばなければならないのですか?」

そう問われた中村天風さんは、

「勉強とはね、人に好かれるためにするんだよ」

と答えたそうです。

勉強することはとても価値がありますが、大変なことです。ときには苦しいです。でも、その先では、あなたの大切な人が喜んでくれる。そう思えば、勉強の苦しみもやわらぐはずです。

本書を通じて、あなたの努力がよい方向に結びつき、よりよい資格人生となることを願っています。

※掲載されている内容は、作品の執筆年代・執筆された状況を考慮し、書籍販売当時のまま掲載しています。

本書「ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本」は、当初「なぜ、人は資格に恋してしまうのか」と改題し、POWERCONTENTSPUBLISHINGより加筆編集の上再出版される予定でしたが、現在の刊行が未定となったため、現在は横須賀輝尚オンラインサロン四谷会議でその改変原稿を読むことが可能になっております。

四谷会議:横須賀輝尚"無料"オンラインサロン

四谷会議は横須賀輝尚が考えていることの公開と実践と結果、検証、問題勃発などを一番近くで見られるところです。リアルタイムの舞台裏とでもいいましょうか。そのうえで考える力を身に付けてもらえるよう、毎日記事を投稿しています。コンセプトはGet "Think more."です。


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