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第4章 横須賀式!戦略的試験攻略法

資格でつくる戦略的人生ロードマップ
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なぜ、試験に受かる人と落ちる人がいるのか?

最初にお断りしておきますが、私は試験勉強のプロではありません。テクニックもあまり持っていません。せいぜい持っているテクニックとすれば、重い参考書を分野ごとに破って持ち歩くことくらいのものです。

そんな私でも、資格試験については言えることがあります。それは、「落ちる理由はテクニックや勉強方法に原因があるわけではない」ということです。

よく考えてみてください。試験に受かるための参考書や問題集は山のように市販されています。テキストだけで物足りなければ、予備校に行けば合格方法を講師が教えてくれます。

しかし、現実には落ちる人と受かる人がいるわけです。この違いの根本的な理由はなんでしょうか。

それはズバリ、自分自身です。テクニックやノウハウがあるのに合格できないのは、方法論の問題ではなく、自分自身のほうに問題があるのです。言い換えれば、試験合格の材料を自分以外に探してしまうから、いつまでも合格できないのです。

重要なのは、他人が合格した方法を追いかけるのではなく、自分が合格できる能力を高めていくことです。

ですから、自分自身に基礎的な知識がないと思えば、基礎的な知識を身につけるための勉強方法を探せばいいのですし、また発展的な知識がほしいと思えば、予備校の講師から直接指導を受ければいいのです。

やはりここでも、自分を軸に置かないと、いつまで経っても「他人に合った勉強方法」に時間を使ってしまうのです。

これでは合格しないかぎり、毎年勉強方法を変えていかなければなりません。いつか偶然にも自分に合った勉強方法に出会えればいいのですが、そんな大事なことを運まかせにするべきではありません。試験も戦略的に考えるべきなのです。

横須賀式! 戦略的試験攻略法とは

重要なことは、自分を軸に考えること。そして、試験を戦略的に突破することです。

では、戦略的に試験を突破するとはどういうことでしょうか?

戦略的試験合格法とは、まず試験について知るということです。スポーツでも格闘技でも、相手の研究をしないで戦いを挑むプロフェッショナルはいません。

まずは「試験」という「敵」を知る必要があります。そのうえで、自分自身の能力値を客観的に把握する。そして、合格に必要なものは何かを探すのです。

私の例を紹介しながら、具体的に見ていきましょう。

【1】試験を知る
まずは、その資格の試験がどのような制度なのか調べます。私の場合、行政書士を受けましたので、行政書士試験について調べました。

このとき、受験者数や合格率はあまり気にしなくても大丈夫です。受験生の中で、真剣に受けている人の割合は決して多くありません。つまり、統計上の合格率より、「真剣に試験を受けている人」の合格率はかなり高いと言えます。合格率はあくまでも目安にすぎません。

重要なポイントはたったひとつ。

「どんな問題が出て、どれだけ点数を取れば受かるのか?」

これだけです。極端な話、合格率が1パーセントでも、満点を取れば合格なのですから、受験者数より、合格率より、「どんな試験問題が出て、何点取ればいいのか」を知ることが重要になります。

私の場合、行政書士試験(平成14年当時)では、法令問題35問(70点配点)、一般教養20問(40点配点)、記述式が5問(30点配点)で、140点満点。そのうち合格するためには84点が必要でした。

そこで私は、合格ラインを早速、計算しました。

法令7割(49点)、記述7割(21点)、一般教養5割(20点)、このラインをクリアすれば合格できるはずだと考えました。行政書士試験は絶対評価の試験ですので、この数字さえ確実に取れば合格できるという結論に達しました。

このような試験の分析をしないと何が起こるかというと、最初からすべてをていねいにやるという勉強になってしまうのです。試験について調べないと、どこまでどのように勉強していいのか基準がわからなくなり、モチベーションも続きません。

試験については、市販の資格ガイドやインターネットなどを利用して、「試験科目」「合格の基準」「試験実施日」などを調べます。この調査の際には情報の鮮度に気をつけてください。書籍もネットも、必ずしも最新情報ではないことがあります。

その際は、直接実施している機関に問い合わせるか、資格指導の予備校などに問い合わせるといいでしょう。

また、試験を調べるときには、必ず過去問も見ておくべきです。試験を単にイメージするだけと実際に直接見るのでは、雲泥の差があります。試験問題を実際に見ることによって、自分自身がどれだけ問題を解けそうかもわかってくるはずです。

そうすることによって、比較的簡単な勉強方法ですむのか、それとも本腰を入れて取り組まなければならないものなのかもわかってくるはずです。

このように、最初に「敵を知る」。つまり、試験の中身を知るということが重要です。

【2】自分の現状を把握する
試験の内容を理解することができたら、次は自分の現状を把握します。

まずは試験に必要な知識です。つまり、自分自身がどこまでの知識を持っているかということです。

例を紹介しましょう。行政書士試験の場合、行政法や憲法などさまざまな分野の法律知識を学ぶ必要があります。法学初学者はゼロから学ぶことになりますが、たとえば法学部出身で一定の法律知識がある場合には、自分自身が何に強くて何に弱いかを把握します。

私の例でいえば、当時、私は行政書士試験に必要な行政法、憲法などは押さえていましたが、労働法や戸籍法などはまったく勉強していませんでした。そうした自己分析をすれば、自分自身の不足箇所が浮きぼりになってきます。そして当然、合格に必要な知識が足らなければ、埋めていかなければなりません。

この確認をしないと、「知っていること」までもう一度学ぶことになり、効率が落ちます。得意科目の復習も必要ですが、それより、まず不足分を埋めなければ合格にはつながりません。好きなことを学ぶのももちろんですが、試験の合格には好きな科目だけでは合格できません。こうした全体分布の把握が重要なのです。

このように自己分析をおこなうことによって、本当に自分自身に必要な勉強の要素が見えてきます。自分自身に必要なものが見えてから、テキストや予備校を選ぶようにすれば、無駄な投資をしなくてすむでしょう。

【3】注意事項
試験になかなか受からない理由のひとつに、「勉強をやるからには最初からきれいにノートをとってすべて完璧にしてしまおう症候群」があります。

試験に関係する知識を、どうせならすべて学ぼうとする完璧主義と、ノートをきれいにとろう、失敗したからまた最初からやり直そうという完璧主義が試験の合格を遅くします。

大学受験でも、たとえば日本史の勉強では、多くの場合、石器時代から始めますので、やり直しで勉強しようとすると、また石器時代から勉強することになり、いつまで経っても現代人に進化できなかったりしてしまいます。

目的は試験に合格することです。勉強は無駄にはなりませんが、合格したあとに好きなだけ勉強することができます。「試験に合格する」という最初の目的を忘れないようにしましょう。

ちなみに私の場合は、行政書士試験では民法という科目を捨てました。当時35間中4問程度しか出ないのにもかかわらず、条文は1000以上あるということを知り、効率が悪すぎると考え、民法を捨てて勉強を最低限に抑えました。

一部の試験科目を捨てるのは勇気がいりますが、結果として、他の重要な科目の勉強に時間を費やすことができたのです。

試験に落ちる最大要因はモチベーションを間違えていること

試験に受かる人と落ちる人の最大の差は、勉強方法ではなく、その人自身に問題があるとお話ししました。自分を客観的に見ることができれば、より戦略的に試験を突破することができます。そして、より重要なのが試験の「モチベーション」です。

結論から言えば、試験勉強の方法より、モチベーションのほうが圧倒的に重要です。なぜなら、どんなにすぐれた勉強方法があっても、モチベーションが維持できなければなんの役にも立たないからです。

ですから、日々試験勉強のやる気を維持するということは、実は最も重要なポイントなのです。

そして、多くの受験者がこのモチベーションの設定方法を間違えています。

よく「試験に受かったときのことを強くイメージして勉強に取り組みました」などという合格体験記がありますが、これはよほど意志が強い方にのみ通用する維持方法です。多くの場合、そのくらいではモチベーションは維持できません。なぜなら、「受からないかも」と少しでも思ったら、モチベーションはあっという間に落ちてしまうからです。

では、いったい何をモチベーションにすればいいのでしょうか?

人によってモチベーションの維持方法は変わりますが、絶対的に必要なものとして、「合格後、資格を使って活動して成功している自分」を強くイメージする必要があります。

本来の目的は資格を取ることではなく、資格を取ってなりたい自分になることですから、このイメージは必須です。

私の場合には、「行政書士として事務所を構え、スタッフ3名くらいで活躍している。売上は年間3000万円くらいある」。こんな感じでイメージしていました。

スタッフや売上の数字は適当です。重要なのは、そこに向かっていくプロセスにいるんだ、という認識を持つことです。

「行政書士として成功したいなら、試験勉強くらい楽勝でやらなきゃ。仕事ではもっと大変なことがあるはずだ」

勉強が嫌になったときも、このように言い聞かせていました。

勉強が苦しくなって、気持ちが折れそうなとき、「本当に自分がなりたい姿」のために勉強する資格でないと、簡単に気持ちは折れます。

「スキルアップのために社労士試験でも受けるか」と考える人と、「人材に関する分野で活躍したい。そのために社会保険労務士はどうしても必要」と考える人では、モチベーションの厚みがまったく異なります。ですから、やはり資格の選び方は、試験を受けるときにもきわめて重要になるのです。

試験の勉強方法は悩まずにプロに聞く

実際の勉強方法については、自分で情報収集するのもひとつの方法ですが、プロフェッショナルに聞いてしまうのがいちばん早いと言えます。そのために活用できるのが、資格試験の指導をする予備校です。

そうした予備校は、定期的に「無料相談会」などの名目で、試験や資格選びのための相談を受けています。その際に、勉強方法を具体的に聞くのです。私はこの直接聞きに行くということをお勧めします。

なぜ、直接聞きに行くことをお勧めするかというと、ひとつは最新情報が手に入るからです。ネットや本の情報は、どこまで新鮮かわかりません。やはり、最新の情報を持っている予備校から新しい情報を取り入れるべきなのです。

もうひとつは、単純に時間の短縮です。本やネットでもいろいろと調べることはできますが、時間がかかります。友人を通じて合格者を探すのも時間を使ってしまいます。その点、予備校に行けば、すぐに聞くことができるので、時間の短縮にもなるのです。

とくに試験は時間との戦いですから、年に1度しかない試験は、早く試験の準備をしないと、すぐに来年になってしまいます。ですから、時間の短縮はつねに意識しましょう。

私の場合も、東京にある資格指導の予備校に最新の情報と勉強方法について、相談に行きました。大学生だった当時はお金もなく、担当の方に「実はお金がなくておそらく模試も受けられないとは思うのですが……独学で勉強する際のコツはありますか?」と頭を下げて聞いた記憶があります。

そこで得た情報は、最新の試験の傾向と今年の注意点、独学で学ぶ場合の注意点でした。このように直接聞きに行くことで、時間の短縮と最新情報の取得が可能になります。

自分に合った勉強方法を選ぶポイント

独学、通学、通信などさまざまな勉強方法があります。最近はパソコンのソフトウェアを使ったものもあり、勉強の方法も多様化しているようです。

試験合格のためのひとつの判断として、勉強方法の選択があります。よくあるご相談が「どの勉強方法がいいでしょうか」というものです。

結論を言えば、いろいろな勉強方法を試し、自分に合ったものを見つけるしかありません。予備校に行けばモチベーションが上がり、仲間もできるかもしれませんが、時間とお金を使います。独学で勉強すれば、時間は自由ですが、孤独でかつ最新情報を自分で手に入れなければなりません。

ただ、勉強方法の目安を考えれば、お金がかけられない場合には、私のように市販のテキストと無料で得られる情報をもとに、徹底的に独学で取り組んでください。

この場合、「予備校のほうがよい」というような情報には耳をふさぐのです。自分が決断したのですから、自分のやり方を信じましょう。

お金をかけられる場合には、迷わず予備校を選択してください。通信講座もありますが、独学でおこなうのとそれほど大きな差はないので、予算を組める場合には、予備校に通ったほうがいいでしょう。

それは、①受験に必要な環境を整えるための時間を短くする、②投資をすることによって自分の決意を確かなものにする、という2つの理由からです。
「予備校にかけるお金がもったいない」という考えもあるでしょうが、自分の人生をよりよくするための投資です。数十万円の投資ができず、数千万円の年収が手に入るなんてことはあり得ません。ですから、お金がある場合には、迷うことなく予備校に通うという自己投資を選択してほしいのです。

会社に勤めながら予備校に通うのは大変かもしれません。しかし、すべて楽をして思うような人生が手に入るはずはありません。

なお、参考までに私の場合、お金がなかったということもありますが、①講義を受講しても、聞いているようで実は時間の無駄になっていることが多い、②講義を受講しても、結局自分でもう一度勉強していることが多い、という理由から独学を選びました。

結果、合格することができましたが、勉強方法の違いによって、大きな違いが出るとはあまり考えられません。なぜなら、合格するための材料はすべてテキストとしてそろっているからです。

もうひとつ。時間がない人のための時間活用法についてお話ししておきます。

まず、時間はつくるものという考えに立ってください。時間がないというのは、「時間管理ができない」ということにつながります。たしかに寝る間もなく忙しい時期もあるかもしれませんが、多くの場合は管理ができていないことが原因のようです。

そこで、お勧めなのが「早起き」です。シンプルな方法ですが、朝1時間だけ早く起きて勉強をする。これだけでも時間はつくれます。

実際、私は現在も4時半起床を心がけ、勉強や仕事の時間にあてています。ほかにも時間をつくり出す方法はありますが、可能であれば、朝の時間をお勧めします。

なぜなら、朝はいちばん誘惑が少なく、邪魔が入らないからです。テレビも朝はバラエティをやっていませんし、携帯電話が鳴ることもないでしょう。このような朝の時間を活用することをお勧めいたします。

いずれにしろ、合格できない最大の理由は、やはり自分自身にあり、その根源は「甘え」なのではないかと思います。自分の人生を真剣によりよくしたいと考えたら、勉強くらい決意し、自己投資して真剣に取り組めるはずです。

「あなたは本気で試験に受かろうと思っていますか?」「そのための行動を起こしていますか」という質問に、即「イエス」と答えられるくらいの気持ちが大事です。

「そんなことを言っても忙しいし、時間が取れないし……」ということをおっしゃる方もいるかもしれませんが、結局、忙しい自分を選択しているのは、他の誰でもなく、やはりあなた自身です。

資格試験の受験者にありがちな、「試験に受からない理由を自分以外に求めるいいわけ症候群」にも気をつけましょう。受かるも受からないも、基本的にはあなた自身の問題であり、あなたが選んだ結果なのです。

とはいえ、前述のとおりいくら真剣にやっても、受からないことは当然あります。試験制度があまりにもひどい場合、あまりにも自分と試験の相性が悪い場合……。その場合には、もう一度考え直す時間を取り、試験を受け続けるかどうかの判断をしなければなりません。

その際にも大切なのは、誰かがこう言ったなどという人の意見ではなく、あくまでも自分の意思です。試験が自分の人生戦略にどうしても必要であれば、試験を受けなければなりません。その一方で、試験をあきらめることもひとつの判断です。

繰り返しになりますが、基本軸は「資格」ではなく、「あなた自身」であることをお忘れなく。

※掲載されている内容は、作品の執筆年代・執筆された状況を考慮し、書籍販売当時のまま掲載しています。

本書「ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本」は、当初「なぜ、人は資格に恋してしまうのか」と改題し、POWERCONTENTSPUBLISHINGより加筆編集の上再出版される予定でしたが、現在の刊行が未定となったため、現在は横須賀輝尚オンラインサロン四谷会議でその改変原稿を読むことが可能になっております。

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