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「広く浅く」で行き詰まった人はプチ専門を見つけるべき

「広く浅く」で行き詰まった人は、プチ専門を見つけて深掘りするといい。

宣伝会議の編集ライター養成講座:米光コースという講座で、プチ専門の決定と深掘りを受講生にやってもらっていたので、それをベースに、どうやればいいかを書いていく。
半年ぐらい熱心に研究調査すればそのジャンルで一番になれるぐらいにジャンルを絞りに絞って、その小さな専門家になってもらうという試みだ。

プチ専門を育てていく

半年の講座内で、「プチ専門」を育てていく。考え調べ書いて、第一人者になってもらう。

1つ「プチ専門」を育てあげると、次にまたもう1つ育てるのは簡単だ。そうやって「プチ専門」を7つぐらい持てば、いくらでも書くべき内容を見つけられるようになる
「広く浅く」から脱却し、「狭く深く」をいくつか持つことによって、他のいろいろなものにも深さがあることを実感して、編集し、書くようになると、他者をなめずに書く姿勢ができてくる。

これができてない人は、専門家に聞くべきことと、そうじゃないことの区別ができなくなる。そのせいで、おうおうにして専門家をなめる。多くのつまらない原稿は、他ジャンルや他者をなめすぎてることが原因だ。
(専門家気取りで、専門家にトンチンカンなツイートをしている人が多いが、まさにこのタイプなのだろう)

編集ライターをやりつづけるものはプチ専門を7つ持つべきだ」と言っている。

プチ専門を決める

だが、「プチ専門」を何にするかは、案外むずかしい。広いテーマにすると、いくらやっても第一人者になれない。「映画」「スポーツ」では広すぎる。もっと狭く。
なるべく、誰もやっていない専門を見つけること。誰もやってなければ一番になるのはスピーディーだ。

たとえば、米光の場合は「こっくりさん」だった。1999年にゲーム会社を辞めて、ライター業を広げようと考えたときに、自分をピックアップしてもらうための「強み」が必要だと考えた。

ひとつは「ゲーム」だ。ゲームに関しては詳しい。製作者側の視点から書くこともできる。だが、この「強み」は、本職に近すぎる。それだけだと幅がない。

そこで、ゲームとは関係ないもの。だが、実は奥底では関係していて、でも、一年後の夏には、多少は仕事になってるといいなーというジャンルはないか。

あれこれ探っているうちに「こっくりさん」が浮上してきた。飲み会でなーんの話題もないときに「こっくりさん、やってた?」とふって、そのときに聞いた体験談がみょうに印象に残っていたのだ。

しかも調べてみると「こっくりさん」について研究している人は、日本に数人しかいない。しかも、そのほとんどは学校の先生で、「こっくりさんなどいない」ということを立証する方向の研究だ。不可思議な現象としてのこっくりさんについて本を出している人は中岡俊哉さんぐらいしかいなかった。

しかも、その中岡俊哉さんも今(2000年ごろの話です)ではこっくりさんについて書いたり発言したりしている様子はない。

つまり、不可思議な存在としてこっくりさんについて語る人は、いない、のだ。ライバル0

そこで、一年間、こっくりさんについて調べまくった。日本で「こっくりさん」について書かれている文章のほとんどを集め、読み、分析した。人に会うたびに体験談を聞いたりした。「大日本こっくりさん同好研究調査会」というサイトを作った。

その結果、調べ始めて一年たった夏ぐらいから、仕事の依頼がぽつぽつやってきた。
怪談や怖い話の特集で「こっくりさん」をピックアップするときに声がかかるようになった。こっくりさんで検索すると、「コックリさん同好研究調査会」が上位に出てくるからだ(2022年現在は出てこないよ)。

その後、毎年夏になるといくつかの「こっくりさん」仕事が入ってくるようになった。ビキニ美少女とこっくりさんをやるという雑誌付録DVDの企画は、行ってみたら「ビキニ美少女がいないので編集部のおじさんとこっくりさんをやる企画」に変わっていた。「俺はいいけど、雑誌の企画として成り立つの?」と心配になりつつ、おっさん3人でこっくりさんをやった(このときのカメラマンが九龍ジョーさんだった、人に歴史あり)。

その後、雑誌で毎月1ページ「こっくりさん月例調査報告書」という連載がスタート。
DVD『ほんとにあった!こっくりさんの呪い~実録・狐狗狸~』に「こっくりさん同好研究調査会会長」として出演。
映画『コックリさん』試写会上映&コックリさんイベントに、ゲスト講師として参加。こっくりさんの歴史、韓国のコックリさん事情、体験談など解説。その後、約300人全員でコックリさんをやってギネスブックに挑戦
など、いろいろな「こっくりさん」仕事をした。

そうやって仕事をしていくなかで、編集者と知り合い、仕事の幅も広がっていった。で、宣伝会議で編集ライター講座なんてやるようにもなった。あれもこれも「こっくりさん」のおかげだ。

一点に絞って活動するのは不安だ。こんなニッチなもの誰にも見向きもされないかもしれないと不安になる。
だが、半年だ。半年、ぼんやりと何かを書き散らかすより、半年1テーマで、しかもやれば一番になれるテーマを見つけて、一番を目指してやる。明確な目標を持って行動する。
明確な目標があれば、方針も立てやすい。楽だ。
深く深く分析する方法を身につけるトライになる。半年たてば、その身につけた方法論を持って、ふたつめのプチ専門を加えればいい。そうやって続けていくうちに、必ずフックアップされる。

以下、「プチ専門を見つける方法」と「プチ専門を見つけて最初にやること」。

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