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テンペラ画の制作過程

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テンペラ画の制作手順と実施過程を記録しています。
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【テンペラ画制作過程8】下地色でモチーフを描く

【テンペラ画制作過程8】下地色でモチーフを描く

前回のプロセスでは背景色である金色を準備しました。

今回からやっとモチーフの描画にかかります。

まず、細かく陰影を意識し、固有色を塗る前の下地色(緑、紫、茶色、赤)で、立体感を意識しながら描画をしていきました。

※下地色は、最終的には見えなくなるものですが作品画面のもつ個性に大きく影響させる工程です。
下地にどんな色を使用するかが決まっているわけではありません。作家が描画を最終的にどんな印象

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【テンペラ画制作過程7】白亜地の上に箔あかしで金箔を貼り詰める。

【テンペラ画制作過程7】白亜地の上に箔あかしで金箔を貼り詰める。

ずいぶん間が開いてしまいましたが、今回は黄金テンペラを作るために白亜下地に金箔を貼る作業が進行したので【制作過程3】の続きをレポートします。

今回は、初取り組みとして日本の技法である「箔あかし」という方法で画面に金箔を貼ります。
また、320㎜×210㎜と以前に作った作品の4倍以上の大きさなので、失敗は覚悟の上で取り組みます。

●うまくできるかどうかわかりませんが「えいっ」とやってみました。

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【テンペラ画制作過程6】描画完成

【テンペラ画制作過程6】描画完成

2023年12月27日。
今回は描画の仕上げをして画面を完成させました。

ハイライト部分の調整と衣類の装飾をアキーラゴールドを使って描き入れました。

アキーラゴールドというのは水溶性の描画絵具ですが油彩画の上にもテンペラ画の上にも書き足すことができるの大変便利です。(乾燥すると耐水性になります)

このような古典技法の絵画は、例えばダヴィンチが終生描きこんでいた「モナリザ」のようにいつまでも描

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【テンペラ画制作過程5】図像を描きこみ、精度を上げる。

【テンペラ画制作過程5】図像を描きこみ、精度を上げる。

2023 12/13(水)
今日は、朝から一日アトリエで作業をしました。

この技法、クリアな発色と堅牢な画面を作ることができる古典技法なのですが、テンペラ絵の具(卵の黄身をメディウムにした絵の具)に延伸性が無いためハッチング(細長い点描)を塗り重ねながら描きます。
6時間描きこみましたが、テンペラ絵画は点描での描写なので、時間がかかり、まだ図像の完成には遠いようです。

絵の具と技法の特徴によ

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【テンペラ画制作過程4】金箔を貼った画面に着彩していく。

【テンペラ画制作過程4】金箔を貼った画面に着彩していく。

体調もそこそこ回復してきたので、コロナ禍で指導する人を失ってしまって制作途中で放置していた作品を続けて作ることにしました。

このモチーフはボッティチェリの「マニフィカトの聖母」の一部をリメイクしたものですが、美しいプロフィールが気に入ったので使わせていただきました。
実物はちょっと首のデッサンに不明瞭な点があって気になるので修正していますが、あくまでリメイク作品(二次創作)であり、模写とは違うの

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【テンペラ画制作過程3】下書きを完成させたのち金箔をはるための画面をと整える。

【テンペラ画制作過程3】下書きを完成させたのち金箔をはるための画面をと整える。

制作時間がかかりすぎて自分も何やってるのか忘れそうになってきています^_^

今日はカーボンでトレースした下絵をイエローオーカーの水彩絵の具でなぞって下書きを完成させたのち、金箔を貼るための下地として赤茶の砥粉を膠水で解いて3回ほど塗り重ねて整えました。

石膏ボードに空いた細かな凹凸や穴を粒子の細かい砥粉でさらに埋めることによって表面の滑性をたかめています。
テンペラの箔は滑性の高い表面に張り、

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【テンペラ画制作過程2】下書きをつくる。

【テンペラ画制作過程2】下書きをつくる。

前回までは、支持体である石膏パネルの制作手順について記録しましたが、今回は描かれる図像の制作プロセスについてになります。

絵画は、下書きを作ってイメージを再現するタイプと、即興性を重んじ、下書きのようなものは作らず、そもそも描きたいものも決めないで描き始めるライヴ感重視のもののグラデーションですが、この、テンペラ画については日本画同様に下書きを制作してからそれを再現するような制作過程をとることが

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【テンペラ画制作過程1】支持体を作る。

【テンペラ画制作過程1】支持体を作る。

●マニアックな技法が好きというだけでつくってます。

タイトルから「そもそも、テンペラってなに?」と思われるかもですが、それは長い作業工程と技術が必要な(だけど地味すぎる)イタリアの古典絵画技法、作っている人が少ない技法なのでノートにプロセスをまとめることにしました。
美術館の絵画作品のキャプションをみて”テンペラ”って書いてあったら、それはこの技法(笑)
古典ではボッティチェリが有名ですが、近代

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