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【年齢のうた】クリープハイプ●30オトコの応援歌として書かれた「二十九、三十」

ビートルズ、最後の新曲は衝撃でした。
元々はジョンが自分のために書いた楽曲なので、そのたたずまいが強めなのはもちろんながら、ほかの3人の匂いもちゃんとあって。ただ、それゆえに突っ込み不足の感もあり……などと思ったものです。しかしこの曲はMVも込みで捉えて、すごい。

60年以上の時空を一気に超える映像で、もう存命していないメンバーを含むグループがここまでやってしまえるということ。しかもその主役は、ポップミュージック史上屈指のバンドであるビートルズ。この事実は後世に残るはずだと感じました。

僕は先月下旬から、優河とodol、原マスミ、そしてアジカンとライヴに行ってました。どれも素晴らしかった。


それから先週は、獨協大学でサエキけんぞうさんの講義にゲスト講師としてお招きいただきました。毎年のことですが、毎年ここで得られるものは異なりますね。とても刺激的で、楽しい時間でした。

#獨協大学 #メディア社会とロック 先週火曜日のこと。今年もサエキけんぞう先生の講義「メディア社会とロック」に、ゲスト講師としてお招きいただきました。 今回は、主に<今年のトピック>に取り上げた内容と、講義後に少し話せた学生たちの雰囲気...

Posted by 青木 優 on Monday, November 6, 2023

そして阪神タイガースは日本シリーズを戦い抜いて、昨夜、見事に日本一に! 長年のファンだけに、この喜びを味わっております。

珍しくスポーツバーにて家族で観戦し、
盛り上がりました。
負けた試合だったけど

今シーズンの阪神の強さについて今思うのは……夏のオールスター戦で、阪神から選出された選手たちがほとんど活躍できなくてディスられたんですけど。あれは選手たちの低調以上に、タイガースというチームが、突出した存在の力でなく、各選手の総合力で勝つ野球をしていた裏付けだったということです。それからもうひとつは、オリックスバファローズはケガ人が多すぎて、彼らが完調ならば阪神を上回ったのでは、ということ。言い換えると、今年までリーグ3連覇を飾ったバファローズは、強さの裏で、それだけ過酷な戦いを重ねてきたのだと思います。ともかく楽しい秋を過ごせました。阪神には黄金時代を築いてほしい!

それからメジャーリーグではテキサスレンジャーズがワールドシリーズを制覇して、うれしかったです。こちらは火力の高い打線のたまものでしたね。


ではでは。今回はクリープハイプです。
僕は、この紹介する曲が出たのと近い時期に、彼らに2度ほど取材しましたね。その頃は、自分が年間で最もたくさんライヴを観ていたバンドだったぐらい。

「二十九、三十」が世に出たのは2014年、もう9年前か。その記事は、web上には残っていないようで、残念ですが。

それから尾崎世界観くんには、東京ヤクルトスワローズのファンとして……というよりも、スタジアムグルメ好きの観点から、『スタグル』という本でもインタビューしました。2年前か。

R25の企画から生まれた曲


この歌は、R25というメディアが主導する企画から生まれた曲だった。
R25は、2000年代半ばに始まった、25歳前後の世代に向けたフリーペーパーだった。僕はまったくこの世代ではないが、街中で見かけるたびにもらって帰ってたものだった。

で、この曲が出た2014年頃は、その世代はもう30代になっていて、今度は30代を応援する曲を制作しようという流れになったようだ。

なるほど、こうして自分の世代だとか自分たちの年齢という着眼点からあれこれと思いつく人はいるものだなあ……と思った。というのは、僕もちょっとそれ的なものに絡んだことがあるから。
1966年生まれのミュージシャンたちによるROUTE66というライヴイベントがそうだった。

失礼。話を戻す。
「二十九、三十」は、下記の記事によると、「30オトコをテーマにした歌がほしいよね」「社会で奮闘する30オトコの背中を押すような主題歌があったら、どれほどすてきだろう」と話したことがきっかけで始まった企画とのこと。この企画について、ここで尾崎世界観も話をしている。

自分と同世代の人たちが新しいことを始めようとしている、という事実を、素直に面白いなあと受け止めました。「どうなるか分からないけど、やりたいからやる」みたいな動きがいいなあと感じたし、30歳前後の人たちにしかできないようなことを進めようとしているところにも力を感じたし。その手助けを僕ができるならうれしいなと思いましたね。

こちらは上の続き。

「二十九、三十」の中にあるのは、変わらないようで変わっている、等身大の自分の姿。迷い、苦しみ、楽しんでいる、今の自分そのものです。これからも嘘をつかず正直に、自分を表現していきたい。自分に分かる本当のことだけを、素直に、歌い続けたいと思っています。

というわけで、曲が書かれたのは、このR25の企画がきっかけだったようだ。こうしたいきさつがあるため、クリープハイプにしてはちょっと応援歌的というか、聴く側を励ますような楽曲になっている。かといって、他者を大っぴらに鼓舞するような姿勢ではないのが、さすがはこのバンドだと思う。

なお、この歌は3年後の2017年に銀杏BOYZがカバーしている。いかにも峯田らしいエモい歌唱で、サビのところなどはまるで彼自身の曲のようにさえ聴こえる。

それから昨2022年には、クリープハイプの曲を朗読する企画において、あのちゃんがこの歌の詞を読んでいる。

一緒に暗いところで落ち込んでくれる、ここにいるだけで意味があるんだよと言ってくれる曲……! あのちゃん、かなり深いところを突いている。クリープハイプというバンド、尾崎世界観というアーティストの本質というか。

なお、彼女はano名義でのソロで、同じく去年、尾崎からの提供曲をリリースしている。またレコーディングには、クリープハイプのギターの小川幸慈が参加している。


変わる手前の言い切れない感じ、続いてる感じ


それにしても自分と同世代についての歌を書くのに、尾崎が「二十九、三十」というタイトルをつけていることは引っかかる。そう、彼がこれを29歳で書いたとはいえ、30代がテーマだとしたら「三十」でもいいじゃないか、という気もする。

ここで書いたように、奥田民生はこのアラサー付近の年齢で『29』と『30』というタイトルのアルバムを作った。

しかし尾崎はこのふたつの年齢をひとつの曲のタイトルにしたのだ。
これについては、下のインタビューでの答えがいいヒントになる。

「こういうタイプの曲が出てきたのは初めてだったし、1回合わせてみたときにすごいしっくりきて。そこにちょうどもらったお題が“同世代の曲で”ってことだったんで、この曲だったら言葉を乗せられるかもしれないって思ったんですよね。何かアツい言葉で“頑張れ!”とか言われても、やっぱり“うるさいわ!”って思ってしまうんで(笑)。何となく同じスピードで一緒に歩くみたいな感覚で書けたらいいなって。まあ自分がどう言われたいかというか、結局は自分に書いたっていうのが大きいですね」

自分に向けて書いた。尾崎はそう言っている。

「(前略)これは『十九、二十(じゅうく、はたち)』(原田宗典著)っていう僕が好きな小説のタイトルを意識して付けたんですけど、そういう“20歳”とか“30歳”じゃなくて、変わる手前の言い切れない感じとか続いてる感じが、自分にすごい合ってるなって。“どこを聴いて欲しいですか?”とか言われても、“ここです。あ、いやでも、ここもですね”、みたいな(笑)。曲全体を聴いて欲しいなってすごく思う。Aメロから頑張ってるし(笑)。そういう感じはすごくあります」

たしかに。言い切れない、続いてるその感じは、感情の揺れ動きやどっちつかずの感覚を表現するクリープハイプ、尾崎世界観らしいと思う。

それだけこの歌詞の主人公は揺らいでいる。「いつか」「誰か」について自分が決断することの遅さ。そこに気弱さが見える。しかも、帰る場所も、居場所もない。周りを気にしながら、恥ずかしさをちょっと抱えながら。それでも彼は、前に進めというメッセージを入れたのだ。

人生は続いていく。続いていってしまう。いや、続けていかなくてはいけない。
若い頃には先のことなんて考えられなかったのに、やがて大人になるにつれて、そんなふうに思い、考えたことを思い出す。それもいいことのような、そうでもないような感覚。アラサーというのは、そうした事実に立ち向かっていくぐらいの年齢のような気がする。いや、そこは断定しないほうと思うので、人それぞれだとは思うが。

そんなふうに考えていると、やっぱり、さっきの民生の回で書いた時と同じようなことを思う。でも30代なんて、まだ可能性が残っている年齢だと。それから先のことをもっと積極的にでも、攻撃的にでも考えられると。
いや、先の自分を、消極的に、保守的に考える姿勢だって、また人生だとも思う。

「二十九、三十」のリリースから、来年でちょうど10年。
アラフォーになった尾崎世界観は、どんな思いを抱えて過ごしているのだろうか。ライヴ、ひさしぶりに観に行きたいな。

アンテノールのクッキー、
ビスキュイ・オ・ショコラが
絶妙な甘さと香ばしさでおいしかった!
松坂屋屋上野店限定(たぶん)の
パンダスリーブ入りでした

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