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【掌編小説】 眠れない夜に

「別れるくらいなら殺した方が良かった」

  ローカルニュースでひっそり報じられた加害者の言葉に私は頷いた。


「最初は遊びのつもりだった」

 新婚とはいえ家と職場の行き来に飽き、ワンクリックで繋がる異世界にハマっていった男の死に様を目の当たりにするとは。


「好きで結婚したのに」

 そうは言っても他人との共同生活は甘くはなかった。女は男の要領の悪さに落胆し、男は女の声が耳に障る。互いに魅力を感じなくなると外に刺激を求めるようになった。


「一緒にいることにメリットを感じない」

 感情を押し殺した果て、こんなことを考えるようになるのだろうか。そもそも人はなんのために結婚するのか。


「あなたの骨がほしいから」

 私には人を殺める勇気はないから、勢いで刺したあなたの彼女には感謝している。情事に溺れた末、目の前で眠るあなたの顔は安らかだから、写真に収めて彼女に送信してあげよう。


「眠れない夜に。朝までお付き合いを」

 あなたの足跡をたどる旅にでかけてみたく、
 あなたのハンドルネームでそっとつぶやいた。
 

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