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ネガティブな人ちょっとおいで【書評】岡敦『強く生きるために読む古典』

こんにちは、演劇ソムリエのいとうゆうかです。

この記事は、私のYouTubeチャンネルで公開している動画の内容を「ほぼ」書き起こしたものです。音声がある方が良い方は動画で、文字の方が良い方はこちらで。閲覧のスタイルに合わせてお楽しみください。



今回は、岡敦さんの『強く生きるために読む古典』という本を紹介します。

簡単に言うと、「古典文芸のレビュー本」なのですが、

ただの本の紹介ではありません!

本の紹介よりも、著者の感性が魅力的すぎて、題材となっている本の内容は二の次で構いません。

一応、公式の紹介文を次に引用しますね。

高校三年で肉体労働の現場に転がり込んだ著者は、一冊の古典を読む。ヘーゲルの『小論理学』だ。その哲学書は、日々の土木作業で疲れ切った若者に「未知の地平へジャンプするための勇気」を教えてくれた。正しい理解を目ざすのではなく、自分が生き延びる助けになるように本を読む。そのとき、難解・重厚と思われた古典は、人生を戦うための武器となり、仲間となる。いわば、生きるための読書だ。その実践記録である本書は、「未読の古典にチャレンジするための勇気」を私たちに与えてくれる。

どうですか?なんかちょっと難しそうに思えませんか?

もっとシンプルに、私がこの本を一言で表すとしたら、

「ネガティブな著者がいろんな古典読んで元気出たからちょっと聞いて」

という感じだと思うんです。

したがって、この本はどんな人におすすめかというと、

「劣等感を常に感じてしまう人」「繊細な感性の持ち主に共感する人」「名著の新しい読み方を知りたい人」です。


超絶ネガティブな著者


常に自分は「できそこない」だと思っている著者。「はじめに」ではこんなことを書いています。

ぼくは本を、自分が生き延びる助けになるように読む。無能で不器用で余裕がないから、それしかできない。だから、ぼくの読み方には強いバイアスがかかる。読みが浅い。あるいは反対に、どうでもいい細部に過剰な読み込みをする。ぼくの理解や解釈を聞けば、笑い出す人もいるに違いない。
けれども、「できそこない」のぼくに必要なのは、そんな読み方なのである。(p.11より引用)

わあ…

めちゃくちゃネガティブ…!!!

私もすごく劣等感を感じやすい性格なのですが、これほどつらつらと自虐的に言われてしまうと、自分のコンプレックスを心配してる場合じゃないわ…と思ってしまった。

たしかに、著者の読み方はいわゆる「正しい」読み方ではないかもしれません。でも、そのナイーブな感覚による独自の読み方は他では読むことの出来ないもの。今までに正解とされてきた読み方だけじゃ、新しい扉は開かれません。色んな読み方をする人がいていい。そこからまた新しい解釈が生まれたら、一つの文芸作品の持つ意味が何倍にも広がりるというものです。

劇評や書評を通じて自分の意見を発信することも多い私ですが、「本当にこの見方をしてもいいのかな…?間違っていないかな?」と心配になることもあります。

しかし、この本を読んで、「自分の感覚は唯一無二なのだから、自分が感じたように発信してもいいんだ」という勇気をもらえました。

仮にネガティブな読み方だったとしても、同じように悩んでいる人に共感してもらえたり、誰かの新しい発見の助けになったりすることもある。


色んな感じ方を認め合いたい


感じ方の多様性を認めることは大事だと思います。

どうしても、立場が違うと主張も異なって、そこから対立してしまうという光景をSNSなどでよく見かけます。それほど色々な人の意見が開かれているということではあるのですが、せっかくならできるだけみんながハッピーになれる方法へと向かいたいですよね。

たまには、この本のように、今までの見方とはちょっと異なった見方に触れて、もっと楽に生きていくための糧にしてみるのはいかがでしょうか?




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