不登校_特殊支援学級

自分や子どもが発達障害かもしれないと思った時に 2 +あとがき

病院に行けばハッキリする?

 よく聞く誤解としてあるのは、病院に行って検査を受ければ発達障害かどうかははっきりするというものです。現実はそんなにクリアではありません。
 これはどんな病気、障害でもそうでしょうが、微妙なラインというのはありますし、医師も発達障害と診断するストライクゾーンが広めの人とそうでない人もいます。発達障害に強いという看板を掲げている所はストライクゾーンが広めだなと感じることがあります。
 病院に行くことで診断が出るかもしれませんが、それはどこでも同じ診断を出ることを意味しません。犯罪を犯した人の精神鑑定などで精神科医がそれぞれが違う診断を出しているのを見たことがある人も多いでしょう。もちろんどなたが見てもというケースもありますが、微妙なケースも多くあるのです。
 病院は発達障害かどうかをはっきりさせる為に行くわけではありません。必要な手立てを知り、今後の方向性を考えていく為に行くのです。
 例えば、学校での個別の支援や仕事上の配慮がどうしても診断が出ていないとできないという場合に診断を書いてもらうという感じです。診断は有効な手立ての為に必要ならば得る。そういう風に考えた方が現実的です。重ねて書きますが、診断が大切なのではなく対策が大切で、診断は対策の為にあるものなのです。


 
  
自分の弱みを伝えられるように 

 発達障害で大事なことは自分が何が弱いかを意識し、それを相手に伝えられることです。義務教育の間なら先生や保護者など周囲が本人の特徴を踏まえ、必要な手立てを講じてくれますが、大人になったら自分の特徴を伝え、どんな手立てがあるとよいかを伝える必要があるでしょう。働く場などの居場所も自分主導で見つけていかなければならない可能性があります。そこで自分が発達障害であるという情報は意味を成しません。自分が何ができないのか、何が弱いのか、何が強いストレスなのか。そういったことを伝えられるかどうかが大事になります。

 
今と次を考える

 これは発達障害に限ったことではありません。
 今の課題を考えながら常に次のステージでの課題を考えます。今の小学校の問題と向き合いつつ、同時に次の場所である中学校での課題を想像します。過度に不安になる必要はありません。しっかりと情報を得て、次の場所での課題をイメージするのです。
 今は高校からはサポート校などかなり個別の配慮をしてくれる場所も多くなっています。元々は不登校の生徒の為に始まったもので、小中学生の為のフリースクール、そういった子達の進学先となるサポート校がここ二十年くらいで増えてきました。授業料はかかってしまいますが、こういった進路の選択肢ができたことは生きづらさを抱える子ども達にとって希望となるはずです。
 職業選択ではまだまだ難しい部分もありますが、発達障害だからといって必ずしも障害者枠の雇用とは限らず、様々な働き方があります。非正規で自分のペースで働くという選択肢もあるでしょう。
 今の課題に取り組みながら次の進路のイメージもしましょう。決してこれができなければ次の進路はダメだというものではありません。意外に次も大丈夫じゃないかと思える情報を集めながら、今と次の課題に取り組んでいくのがいいかと思います。


あとがき

 テレビやネットで発達障害という言葉を見る機会が増えることで、私は不安になっていることがありました。
 発達障害という存在が今より認知されることは確かにいいことなはずです。私が引っかかっていたのは、「発達障害だから」ということが先行してしまうことです。本来は「発達障害だから」ではなく、誰もがその人にあった教育を受け、仕事をする権利があるのです。必要な配慮を受けられるのは発達障害だからではありません。全ての人にその権利があるのです。
 そういったことが浸透する過程として発達障害がクローズアップされるのならいいのですが、発達障害だから配慮を受けるべきで、そうでない人は個別の配慮を受けるべきではないとなってしまっては本末転倒です。
 これまでの文章で発達障害が増えた社会的要因について述べたのは、発達障害を発達障害だけで考えないでもらう為です。
 以前にある特別支援学校の校長先生からこんな言葉を聞きました。
「障害はその人の中にあるのではなく、その人がいる社会の中にある」
 例えば車椅子で生活している人がいます。もし、スロープなどの設備が揃っていて周囲の支援も万全なら、その人は車椅子で生活する不便をほとんど感じないでしょう。しかし、そうでない社会の中にいたら相当不便に感じるはずです。障害とはその人のではなくその人がいる社会の中にあるというのはそういうことです。
 発達障害についても社会という視点を多くの人に持って欲しいのです。発達障害の人にとってもそうでない人にとっても、社会が変われば生きやすさが変わるのです。この本がその一助になればこれほど嬉しいことはありません。
 ここまで読んでいただきありがとうございました。

参考文献・資料
 

はじめに

文部科学省データ(画像は不登校新聞より)

1 発達障害を増やしたのは二つのグローバル化

「精神医学特論」 仙波純一 放送大学大学院教材 2002
「DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引」
 American Psychiatric Association 医学書院 2014
「クレイジー・ライク・アメリカ: 心の病はいかに輸出されたか」
 イーサン ウォッターズ 紀伊國屋書店 2013 

2 社会はどう変わるべきか

「世界一幸福な国デンマークの暮らし方」 千葉忠夫 PHP新書 2009
「大人のADHD: もっとも身近な発達障害」 岩波明 ちくま新書 2015
「フランスの子どもは夜泣きをしない パリ発「子育て」の秘密」
 パメラ・ドラッカーマン 集英社 2014
「オランダの個別教育はなぜ成功したのか」
 ナオコ・リヒテルズ 平凡社 2006

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