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森田芳光監督「(ハル)」を鑑賞する。

パソコン通信かぁ・・・懐かしいなぁ。時代がインターネットへ移行する際の捨て石になってしまったんですよね。この映画は、そんなパソコン通信をモチーフにした「ひとつの時代の記録」であります。

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え~、一応『ネタ』はバレてないつもりですが、
構成に触れているところがあるので
本作を見ようと思っている方はご注意を-。

さて、本作の何がニクいって・・・・
鑑賞者が1番見たいトコロを見事にハズしてくれてる
トコロなんです。

-というのは、まさにラストシーン。

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『え・・・そのあとを見せてくれないの~~!?』
と、おそらく誰もがそう思う。
しかし、『その後を見たいのに~~!!』と思わせる
ことすなわち、『良作』であるということ。

『ストレイト・ストーリー』や『善き人のためのソナタ』
なんかがこれにあたるのかな。
本作や『ストレイト・ストーリー』に関して言えば、
あくまで主人公が、ある目的に到達するまでの過程を
非常に丁寧に綴っている。
その後は想像してね、なんてのがなんとも心憎い。

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しかし『(ハル)』にはいい意味で裏切られた。
あらすじを読む限りでは、あくまでネットを通して
知り合った2人が何度もデートを重ねて
心通わせる話だとばかり思い込んでいたのだ。

しかし鑑賞開始から30分・・・1時間・・・
なかなか『2人が会う』ということにならない。
・・・?もしかしてこれって・・・
そこまでの過程を描いた話なのか!?
と途中で気付く。

しかし、これがこの作品が成功した要因。

会ってデートを重ねる話ならば、フツーの恋愛モノに
なってしまう。
そこで本作は『パソコン通信』というツールを最大限に
使って極上のラブストーリーを作り上げた。

一体主人公の2人が会わずして、どうやって盛り上げていく
つもりなのか?
と思っていたところで、アノ事実が明らかになり、
なるほど、コレを持ってきたのか、と。

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そして、本作の名シーンとも言える、
『会う』のではなく『お互いを見る』といった演出もです。
見ず知らずの、互いの声さえ知らない2人の『大接近』に
ここまで切なくなれるなんて。
とても、珍しい手法である。
日本映画史に残る名シーンと言ってもいいんじゃないだろうか。

『ハル』というたった2文字のタイトルが、鑑賞後はとても温かく
心に染み入ります。
そこまで恋愛モノを見ない私でも十分に楽しめたので
もともと恋愛モノが好きな方ならまず楽しめると思います。

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森田芳光監督、ステキな映画を、ありがとう。

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