見出し画像

第三章 区役所時代⑪理解される努力が足りない?

 紀香は佳奈子に「仲田課長から話があります」と言われ、人事課に足を運んだ。

 仲田課長は、紀香が新島係長に言い返したことに触れ、

「辻原さんには、ADHDだから何をやっても許される、と考えてほしくはないんです。組織の一員である以上、個人の意見がいつでも通るわけではありません。辻原さんにも、目上の人を敬い、周りの人と協調していってほしいです。そうならなければこの先厳しいかな、もう少しがんばってほしいな、と思います」

 仲田課長の言葉は、組織で働くサラリーマンの良識を代表するだろう。

「……」うつむく紀香。

「どんな人でも、理解されるには、まず本人が努力しなければならなんですよ」

 ということは、自分は、理解される努力が足りないのか? 紀香の心はざわめいた。だがこの場では、わかりました、と仲田課長の言葉を聞き入れるしかなかった。

ここから先は

380字
仕事のつまづきで発達障害に気付き、エアロビクスインストラクターに転身し成長していくヒロイン。周囲の人間関係のダイナミクスにどう向き合っていくか?

現代日本を舞台に発達障害のあるヒロインの成長を描いた小説。ヒロインは学校時代を経て就職後につまづき、発達障害の診断をされて再就職しますが、…

よろしければサポートお願いします。サポートは100円、500円、1000円、任意の金額の中から選ぶことができます。いただいたサポートは活動費に使わせていただきます。 サポートはnoteにユーザー登録していない方でも可能です。