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徒然ゆうじ

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実話をもとに現代社会の病理を鋭くえぐった、笑いあり中身なしのショートショートエッセイ。
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記事一覧

徒然ゆうじ 「お見舞いのこと」

徒然ゆうじ 「お見舞いのこと」

某月某日

友人が入院しているのを思い出し、見舞いに行く。

病院は郊外のような中心街にあり、
人通りが多く活気はない道の先に見える。
ワビとサビで裏打ちされた建物は
昭和の面影を全面に出して地方だ。

理由を探すのに苦労するほど混んでいる院内。
患者とナースをかいくぐって部屋へ。

ベッドの並びを確認して堂々の入室。
いきなり友人と目が合って狼狽。
中距離から言葉を散らして歩み寄る。

調子はど

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徒然ゆうじ 「ディーラーのこと」

徒然ゆうじ 「ディーラーのこと」

某月某日

愛車の激しいオイル消費に絶句。
ディーラーに転がりこむ。

1カ月あずかると言われ、自宅待機。
3カ月後に電話があり、取りに行く。

店に入ると無人。
虚をつかれるも、駄菓子屋の要領で人を呼ぶ。

ショールームの車に乗っていると、人の気配。
ふり返ると、店員が激しいジェスチャーでこっちへ座れとイスを指す。

すみやかに着席し、微笑の私。
しつようにガンをつけてくる店

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徒然ゆうじ 「ねずみ再び…のこと」

徒然ゆうじ 「ねずみ再び…のこと」

某月某日

また友人から電話がある。
以下同文。
風化しかけた喫茶店へ。

お世辞でも小汚いイスに着席。
友、世間話を連打。
ヘドを出し続ける私。

友「さて、ビジネスの話がある」
私「やはり」
友「会わせたい人がいるんだ。行くよ、家」
私「家!?」

瞬時に連想。
施錠、監禁、拷問、サイン…

とりあえず待ち合わせをファミレスにしてリスクヘッジ。

到着すると男が1人。
コップは半分。

私「お

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徒然ゆうじ 「定食屋のこと」

徒然ゆうじ 「定食屋のこと」

某月某日

珍しく腹が減る。
定食屋に飛びこみ、常連をかいくぐって着席。
鋭い眼光で「ハンバーグランチ」を指さす。

「ハンバーグランチお願いしま~~す」
ビブラートで告げるバイト。

コックの初動を確認し、一息。
うつろな目で店内を見やる。

経年劣化によるパステルカラー化。
ジョッキ片手にほほ笑む「蓮芳」。
破れかぶれのイス…
一糸乱れぬコーディネートで場末のるつぼだ。

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徒然ゆうじ 「ねずみ…のこと」

徒然ゆうじ 「ねずみ…のこと」

某月某日

顔も思い出せない友人から電話がある。

友「元気?」
私「うむ」
友「久しぶりに顔見たいなあ~」
私「ほう」
友「今から会える?」
私「もちろん」
友「いい話があるんだ。ビジネスの…」
私「……」

そぞろに身支度。
とぼとぼと店に到着。
目が合ったのに無視されつつ、友(?)に声をかける。

私「来たよ」
友(?)「なつかしいな~」
私「だろうな」
友(?)「で、話なんだけど…」

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徒然ゆうじ 「スーツのこと」

徒然ゆうじ 「スーツのこと」

某月某日

思い立って スーツを買いに行く。
適当な店に入り、ぶらぶらと物色。

呼んでもないのに店員があらわれ
聞いてもないのに説明をはじめる。

ふんふんと流していると、いつのまにか試着することに。

……小さくないか?これ。

私「なんか きついんですけど」
店「そんなことないでしょ。肩もきちんと乗ってるし、着丈も…」

店員、自信満々の笑み。
そうかなぁと思いつつ、ん万

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