喜多漠路さんの短編小説「二人の宝は、時を超えて」を読んで

喜多 漠路@ちょんぱんきんたんさんの短編小説「二人の宝は、時を超えて」の感想です!

これは、僕が企画したお題小説企画の参加作品です。
お題は「ノート」。
参加者は喜多漠路さん、アセアンそよかぜさん、幸野つみの3名。

せっかくのコラボ企画なので自分以外の作品についても書いてみようと思います!




「二人の宝は、時を超えて」
ちょっと不思議なプロローグから始まる、母親と子供のお話。
本編はこちらから↓





◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

引き込まれる謎解き

この作品の魅力は、読み始めた時に思わず引き込まれてしまう謎に満ちた書き出しと、真相がわかっていく展開だと思います。


<第1の謎>
まず題名!
「二人の宝は、時を超えて」

お題が「ノート」のこの企画。
もう一人の参加者であるアセアンそよかぜさんの作品の題名は「マレーのノート」。
僕の作品の題名に至っては「ノート」です(笑)

それに比べると、喜多さんの作品の題名は謎ですよね。
二人って誰? 宝? 時を超えるの?
どんな話なんだろうと思いながら読み始めることになります。



<第2の謎>
プロローグを全文載せちゃいます!

木立の間を、初夏の風が吹き抜けた。
夕暮れの公園で過ごす放課後は、2人にとって特別な時間だった。
「すまん。あれ、無くした」
「え?どうして!?あれは大事なものなのに」
「あんなものが無くてもどうってことねえよ」
「そんなこと言わないでよ!私がどんな思いで…」
「つべこべ言うんじゃねえ。今から俺たちは、付き合うんだから。一から、思い出を作ろう」
「…え?付き合うの?」
「いやなのか?」
「末永く、よろしくお願いします」

これでプロローグは終了です!
何かを失くしてしまって揉めているようですが、その直後には交際を始める二人……何があったんでしょうか?
題名の「二人」とは、この二人のことなのでしょうか?
謎です!



<第3の謎>
更に次の章の書き出しを載せちゃいます!

ケージ内を走り回っていたハムスターは、動きを止めた。
おだやかな夕食の時間に暗雲が立ち込める。
「ねえ、お母さんはどうして他のお母さんたちより、おばさんなの?」
「誰もがおばさんになるし、あなたもいずれおじさんになるのよ?」
「そういうことじゃなくて...」
今年10歳になるユウトは、クリっとした瞳で私を見つめた。
私の年齢は、55歳。いずれ指摘されるとは思っていたものの、実際に言葉をぶつけられると動揺を隠せない。森高千里の歌詞でごまかそうとする考えが甘かった。
今日ははじめて授業参観に出席して、周囲の若々しいお母さんたちに囲まれた。

こうして先程とはまったく違う場面で物語が再スタートを切ります。
さっきのプロローグの話はどうなったの?
母親が高齢なのは何か理由があるの?
謎です!
思わずくすっとしてしまう文章を交えて堅苦しくし過ぎず、物語に謎が更に追加されます。



題名、プロローグ、次の章……
たったこれだけ読んだだけでも、スピード感よくこれから解かれていくであろう謎が示されることで、一気に物語に引き込まれていきませんか?


試し読みはここまでです(笑)
まだ本編を読んでいない方はぜひ、実際に続きを読んでみてください。
謎と謎が絡み合い、「ノート」というお題が更に関わりながら真相が明かされていくのがとても面白いです。


同じく小説を書く身としては、この書き出しはとても刺激になります。
まったく同じストーリーを書くにしても、自分だったらあの書き出しを冒頭に持ってくるのか、どうやって組み立てるのか、わくわくします。




自分との相違点

更に喜多さんが自身で書いたあとがきもちょっとだけ引用……

幸野つみさんは状況描写や心理描写が丁寧で登場人物の心の動きまでがよくわかります。
幸野つみさんの作品を読んで、自分と同じテーマで書いてもここまで違うのかと痛感しました。
ぼくの弱点は、
どこにいて、どういう情景が浮かぶ。という表現が書けないのです。
ぼくはただ方程式を解くかのように描き殴ります。
やはり自分は素人ということを思い知りました。
最後の方程式を解くために、会話を増やしてテンポよく会話を進める。
まるで、高速でキャッチボールしているように、闇鍋のように雑多に。

このあとがきの言葉選びからしてセンス溢れていると思うんですがそれはさておき。

良くいえば僕の作品は描写が丁寧です。
悪くいえば、冗長です。テンポが悪く、スピード感がないのです。
意識しなかったら、ストーリーそっちのけで北海道の風景を延々と描写し続ける可能性があります(笑)

喜多さんの作品はいわゆる地の文が少なく、自身が書いたように、どんな場面なのかわかりにくいともいえるかもしれませんが……
良くいえば、ストーリーはわかりやすく、読んでいて爽快感があります。
読者を謎に引き込んでいく、更に謎を解き明かしていくスピード感が、物語の内容にぴったりだったと思います!

更にストーリーの内容も全然違います。
今回僕は「何も起きない話」を書こうと意識したので仕方ないのですが……
喜多さんのあっと驚くストーリー展開は自分に足りない羨ましいところ。

僕もそうですが、クリエイターの性(さが)でどうしても他人と比べてナイモノネダリしてしまいますが、最終的には「いい刺激をもらった!」とお互い思えていたらとても嬉しいです。
(最終的には喜多さんもあとがきの中で「伸びしろがある」と前向きに切り替えたことを書いています)



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

まだ本編を読んでいない方はぜひ一度読んでみてください!
もう読んだという方も、これを読んだ後だとまた違う見方ができるかも?


喜多 漠路@ちょぱんきんたんさん「二人の宝は、時を超えて」

幸野つみ「ノート」

もう一人の参加者の作品
アセアンそよかぜさん「マレーのノート」



そろそろ一度、企画の締めとして、スキやコメントなどについても含め、まとめてみようと思っています。

ぜひぜひ作品を読んで、スキやコメントお願いします!

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