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話が違う童話の世界

これは50回目。よく言われる話です。童話・寓話というのは、本当は結構怖いといいます。そんなお話。

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童話は、童話であるだけに、わかりやすい教訓が筋立てに込められている。と、思っていたら、けっこう一般に流布している童話と違い、原本のほうは恐ろしい話であることが多い。

有名なのは、もちろんグリム童話や、イソップ童話だが、とりわけ恐ろしい内容が露骨に炸裂しているのはグリム童話だろう。DアルジェントやAロメロのゾンビ映画やスプラッター映画も真っ青のグロ話に満ちている。

ここでは、そうした露骨な残酷描写の多いグリム童話を敬遠。(しかし、せっかく読むなら、改訂版や修正版などではなく、どぎつい原本全訳のほうをお勧めする。)一応、まだマイルドなイソップ物語から例を引いてみよう。わたしたちが知っている「お話」とは、どうも原本の意味は違う。話が違うのだ。

よく知られた「兎と亀」の話。兎に歩みの鈍さを馬鹿にされた亀が、山の麓まで、駆けっこの勝負を挑む。当然兎は速い。亀の姿はまったく見えなくなった。そこで兎は余裕をこいてしまい、横になって居眠りをした。その間に、亀は着実に進み、先にゴールしてしまった。

能力的に劣っていたとしても、諦めずに精進すること。能力があっても、油断をしてはいけないということ。そうした教訓話のように読める。

ところがこの話の先には続きがある。亀に負けてしまった兎は、仲間内で恥さらしとなる。その名誉挽回のため、天敵として恐れられていた狼を、言葉巧みにだまして、断崖から突き落とし殺害。これで、また仲間に受け入れられるようになる。

一方、亀のほうは、やる気がでてきて、なんでも積極的に取り組む。ある日、頑張れば空も飛べると思い、鷲に頼んで空高く運んでもらった。鷲は亀の依頼通り、空中高くから落としたのだが、当然飛べるわけもなく、地面に激突して砕け散ってしまった。以来、亀を見たものはいない。

一体、そもそもこの童話はなにを言いたいのだろうか。俗に知られている童話の部分でも、亀が兎に勝ったのはいわば「まぐれ当たり」に近い。相手の失敗で、望外の勝利が転がり込んできただけで、亀が特段の努力をしたとも思えない。後話の、兎が狼を騙すくだりでも、命を懸けてやるほどのことなのだろうか。いわば無謀。ましてや、亀が空を飛ぶなぞ、狂気の沙汰。

この話、もしかしたら、「分を守れ」という話なのだろうかとも思ったりする。少なくとも、地道な努力がどうのこうのといったところに論点が無いような気がするのだが、どうだろうか。

イソップ童話は、古代ギリシャの奴隷アイソポスが、寓話で名声を得たことから、彼のものだけでなく、それ以前から伝承されていたものも含めて、まとめて総称されているようだ。そもそもアイソポスなる奴隷がいたのかどうかもわからない。

さらに有名なイソップものでは、「アリとキリギリス」がある。これは解説の必要もないくらいだろう。最終的にアリは、飢え死にしそうなキリギリスにこう言う。「夏には歌っていたんだから、冬には踊ったらどうだい?」アリは、食べ物を分けることを拒否。キリギリスは飢え死にをする。

この話は、古代の寓話であることもあって、版権の問題もないのだろう。後世、都合よく意図的に内容が改変されている。アリがキリギリスを助けてやったり、キリギリスがお礼にバイオリンを弾いてやったり、と上手に結末をまとめるような工夫がなされたのだ。

しかし、原本は上述のように違う。この原本には、二つの寓意がある。将来への備えを怠るべからずという点。もう一つはアリのように勤勉な者というのは、餓死寸前の困窮者にさえ救済の手を差し伸べないほど、冷酷にして独善的、吝嗇(けち)であるのが常だという点である。

功利主義者たちの解釈になると、もっと「進んでいる」。この話には実は、最後の一文が欠けているのだ、とさえ言うのだ。その最後の一文とは、「飢え死にしたキリギリスは、それでも後悔しなかったとさ。」

こうしてみると、やはり童話というのは、基本、子供が読む話ではないように思う。大人が読んで、背筋が寒くなったりする、リアルな怪談とも言える。

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松川行雄(ストラテジスト/小説家)

1958年生まれ、上智大卒、ブリヂストン入社。大和証券に転職。2社在任中、2度の香港駐在。93年、本社株式本部に戻り、優秀なアナリストたちから相場を学ぶ。99年退社まで、米国株の分析・判断で記録的実績を残す。証券、保険各社から講演会・セミナーを行う。また小説、エッセイなど多才!

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