感情を出せないし、嘘も下手。そんなわたしが唯一得したこと

クライアントに企画趣旨を説明していた男性が、突然説明を止めた。

「ここで速報なんですが、、、」場の空気が止まり、彼はスマホを手に持った。

「小泉進次郎と滝川クリステルが結婚したみたいです!」

……!!!

一瞬の間があってから、参加者はみな驚いた。そして脇においていたスマホにのニュース速報を見だした。突然の速報は企画趣旨と全く関係なさすぎたが、一気に場の空気が和んだ。速報をお伝えした方は職人肌気質なので、あえて空気を変えるために発したのだろう。数分間は小泉進次郎に関する雑談をしたあと、明るい空気で企画説明が続行された。

ただ、全員が驚いたわけじゃない。実は、わたしは彼の速報に大して驚かなかった。なぜなら数分前に、速報のプッシュ通知が来た瞬間に結婚のニュースを見ていたからだ。その時は「え、この二人結婚するの?」と驚いた。でもその一瞬だけで、すぐに議事録のタイピングに戻ってしまった。何事もなかったように、一切表情を変えず。

あのときわたしが「速報です!」と言えるタイプの人だったら、もっといい人生を歩んでいたのだろうか。

わたしは昔から感情を飲み込む癖がある。どんなにびっくりしても、みんなが知っていたり、「聞くのは何か恥ずかしいな~」と思うと、いかにも知っているような顔をしてしまう。先日飲み会に誘われて行ったら、乾杯の時に「〇〇さんのご妊娠を祝して、乾杯!」と音頭がとられた。〇〇さんは元上司、妊娠されていたのは全然知らなかった。。でも驚きはおさえ、知っていたような顔をして乾杯していた。いつも、空気を読んで感情を出せないのだ。

さらに厄介なのが、完全なポーカーフェイスではない点だ。大人の嘘をつかなきゃいけないとき、空気を読んで対応しなきゃいけないときに限って、自分の感情が思いっきり顔に出てしまう。そして相手から「〇〇と思ってるでしょ」といいあてられてしまう。感情のアウトプットがあまりにも下手すぎて、本当に損ばかりしている。

上手く感情を出せないと本当に面倒だ。ただ唯一良かった点は、心の声が異常な速度で発達する点だ。表に出ない感情は自分の中で形成され、蓄積される。それがnoteのネタや文章のテーマになっている。わたしが文章を書くのが好きだと思えるのは、この下手くそすぎる感情排出があったからだと思う。

今度ビッグカップルが誕生したとしても、わたしは速報を出せないまま過ごすだろう。ただその分、文章にするしかない。何事も生かせば役に立つ。そう思って生きていけば、自分の欠点もそこまで悪くないかもしれない。

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