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同期が会社に来れなくなるまで、何もできなかった1年目の私へ。

あの時、わたしはどうするべきだったんだろう。社会人になって4年目になるけど、1年目の後悔をときどき思い出す。同じチームに配属となった同期の男性が、ある日突然会社から消えた。仕事がつらすぎるあまり、精神的に追い詰められて会社に来られなくなったらしい。わたしはチーム内唯一の同期だったし、配属前の研修でよく話していた。彼はおとなしい性格ながら、我の強い営業マンタイプの男性に真っ向から議論していた。そんな彼を見て、芯があって強い人だと感じていた。そんな彼がつらい時期、私は何の手助けもできなかった。

同期の彼は、率直に言って全然営業向きではなかった。わたしの会社の新入社員の9割は外勤営業となり、彼も営業だった。でも資料の準備からアポでの姿勢、クライアントとのやり取りなど、些細なことで失敗を重ねていた。周りの先輩たちは最初はやさしくフォローするものの、何度も失敗することで口調は厳しくなっていった。「何でできないの」「これくらい自分でやって」まじめな彼は、先輩たちの悪口を同期にこぼすこともなくどんどん追い込まれていった。

わたしは同期の彼がつらそうなのは気づいたけど、ほとんど何もできなかった。私は当時営業アシスタントで、営業の辛さはあくまで想像でしかなかったので、気軽に「つらい気持ちわかるよ」なんて言えなかった。それに研修でみた彼の芯の強さを知っていたから、彼は何だかんだ大丈夫だと考えていた。

だけど彼は日に日に顔色が悪くなっていった。資料を印刷するためコピー機へいくだけで何十分もかかり、しばらく席には戻ってこない。1つ1つの動作が異様にゆったりしていた。人によって彼の動作がやる気のないように見えるのか、「アイツは使えない」とイライラを募らせる先輩もいた。「同期なんだから声かけてやってよ」と私に心配するそぶりを見せる人もいたけど、自分から彼に声をかけてはいなかった。私も同じだった。はじめて弱っていく同期を目の当たりにして、彼に声をかけるのが怖かった。それに「大丈夫?」とか「頑張ろう」とか、「まあ気にすんな」とか、どんな言葉もふさわしくない気がした。

そして入社1年目の夏になる前、彼は会社に来なくなってしまった。

ことばを発して”無力”から”微力”へ。

あのとき、彼へのことばがまったく出てこなかった。話しかけて元気づけた方がいいとわかっていても、会社で目の前に座る彼の青白い顔を浮かべると全然言葉が浮かばない。

でも、無理やりにでも声をかけるべきだったと思う。「このコピー機調子悪いよね」とか「今日すごく遅延しててさ」とか、本当にどうでもいいことを明るく優しく声をかければよかった。私が声をかけたところで何も変わらなかったかもしれない。ただ全く声をかけなければ”無力”でしかないけど、どうにかひねり出した言葉は”微力”になる可能性はあるし、ひょっとしたら”協力”になるかもしれなかった。社会人1年目のわたしには、ほんの少しでもチャンスがあるなら、どんなに拙くても”微力”になれることばをひねり出してほしい。

※ちなみに彼はいま職場に復帰し、ふたたび同じチームになった。職種は営業から内勤職になり、システム関連の運用保守でバリバリ活躍している。

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