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知りたくなかった友だちの”残酷な真実”

ある日突然、お友だちができた。

「すみません。友だちにプレゼントする英語の本を探しているんですけど、おすすめの本知りませんか?」

1人で渋谷の本屋にいた時、英語本のコーナー前で突然声をかけられたのだ。振り返ると女性2人組がおり、話しかけてきた金髪でロングヘア―の女性だ。少しふくよかで、人懐っこい笑顔が印象的だった。

わたしは確かに英語本コーナーにいた。しかし何となく店内を散歩しており、たまたま英語本コーナーにいただけだった。そのため友だちにプレゼントするための英語の本など、分かるわけもなかった。
「すみません、知らないです」と伝え、その場を去ろうとしたときだった。

「ちなみにお姉さんはどんな本を見ているんですか?」

なんと金髪の女性が会話を続行させたのだ。
本屋には週1回以上行くが、見知らぬ人と会話するのは初めてで非常に驚いた。

最初は少し警戒し、曖昧な情報しか話さないようにしていた。
ただ彼女たちのことも積極的に教えてくれ、読書が共通の趣味だとわかるとあっという間に打ち解けた。
内気なわたしが、10分前に会ったばかりの人と盛り上がるなんて信じられなかった。

そして一通り話を終えると、金髪の女性がスマホを取り出した。

「お姉さんと話せて楽しかったです。今度ぜひ飲みに行きたいので、LINE教えてもらってもいいですか?」

会話を通して彼女の人柄に惹かれたわたしは、喜んで連絡先を交換した。
金髪の彼女は、ひとみという名前だった。

ちょうど仕事で嫌なことが続いていたので、ひとみとの偶然の出会いがうれしかった。短時間でも非常に盛り上がったので、ひとみとはいい友だちになれるかもしれない。いや、あれだけ意気投合すれば、わたしたちはもう友だちと呼んでいいだろう。
わたしは完全に浮かれていた。

友だちの残酷なヒミツ

ただ、後日わたしは残酷な真実を知ってしまう。
たまたま見ていたサイトで、わたしと似たような出会いをした人を見つけた。見知らぬ人に突然「美味しい店を知っているか」と尋ねられ、最終的に連絡先を交換したらしい。
場所や声掛けのきっかけは違うものの、ひとみとの出会いにとても酷似していた。

この人も、ひとみに出会っていたのだろうか? 
不思議に思って読み進めると、衝撃的な言葉を見つけた。

「このやり方は、宗教やネットワークビジネスなどの勧誘のための典型的な方法です」

…………………………
…………えっ!!!???うそ!!

ひとみの笑顔が浮かび、まさかそんなわけないと思った。ものすごく驚いた。

ただよくよく思えば、おかしいことはいくつもあった。
ひとみ達は友人へのプレゼントを探していると言っていたが、わたしたちの出会った場所は「古本屋」だった。
いくら仲のいい友だちでも、わざわざ古本をプレゼントするとは考えにくい。

ご飯のお誘いも、なぜかすべて日付が指定されていた。わたしの都合にあわせて調整してくれたことは一度もない。
そして誘われるのは、ひとみ曰く「街コン的な飲み会」という、会ったこともない人がたくさんいる飲み会ばかりだった。

そして、ひとみと全く同じ流れで連絡先を交換した経験が過去にもあったのだ。冷静に考えて、同じような偶然が何度も起こるのは余りに不自然だ。

知らないことは恐ろしいと学んだ

結局、真相はわからない。
ただひとみの疑惑を知ってすっかり意気消沈し、ひとみの連絡には応じなくなった。それでもひとみから「街コン的な飲み会」の誘いが何度か来たが、しばらくすると全く連絡が来なくなった。

あのときサイトを見ていなければ、ひとみと再会し、ひょっとしたら危険な目にあってしまっていたかもしれない。

最近はすっかり知らない人から話しかけられることがなくなったけど(ナンパは今も昔もなし……)、少しでも怪しいと思ったら自分で確かめる癖をつけたいと考えるようになった経験だった。

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