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裸足でたどりついたら、、、。読書記録 とわの庭


読書記録 とわの庭
小川糸先生著
新潮社

買い物ついでに何となく寄った本屋さんで、見つけてしまいました。


夏色の街でサルスベリやキョウチクトウを見かけ、草や木、植物の物語を読みたくて、。

小川糸先生の作品は「キラキラ共和国」以来です。

読み始めたら、止まりませんでした。久しぶりの小川糸さんの文章はやさしく私の心に響いてきました。



◎ざっくりあらすじ
主人公は「とわ」。10歳の誕生日をもうすぐ迎える。とわは、おかあさんとふたり、庭のある家で暮らす。

でも、おかあさんは時々お出かけをする。
お母さんがお出かけをするときは、とわは「ヒメネムリグスリ」を飲む。

すると、幸せな眠りにつけるから。

とわにとっての時計は黒歌鳥合唱団とオットさんだ。黒歌鳥合唱団が7回、歌を聞かせてくれると、水曜日のオットさんがくる。

オットさんは、野菜や果物などの食べ物や必要なものを持ってきて、トントンとドアを叩いて、玄関の外に置いていく。

ある時、お母さんはわたしにドレスを作ってくれた。そして、一緒にお出かけをしよう、という。

コムラサキ


◎気になった箇所
✴︎97ページ
私は生まれて初めて、季節が移ろうことを体で知った。それまでは、季節というものが断片的にしかわからなかったし、私は常に茫洋とした渦の真ん中にいて、そこからは季節など見えなかった。

 特に香りがにぎやかになるのは空気が緩んでくる春の真ん中の頃で、あまりに多くの木々が話しかけるものだから、私は10個の鼻を備えつけても足りないくらいの気持ちになる。


✴︎✴︎175ページ
自分以外の誰かと密接に生活を共にするのは、母と暮らしていた幼い頃以来だった。ジョイと暮らすことで、自分がずっと求めていたものの正体がわかった。 

 私は誰かの温もりを求めていたのだ。そして盲導犬のジョイは私が渇望していたものを日々、惜しみなく私に恵んでくれた。

✴︎✴︎✴︎217ページ 
それに、私の場合は見えないからこそ自由に際限なく想像することが許される。象もキリンもライオンも、私は本当の姿をみたことがない。それらの生き物は私の想像上の生き物だ。

でも、わたしは聴覚や嗅覚、触覚などの他の感覚を駆使して、視覚からの情報不足を補うことができる。


キンシバイ



◎感想
✴︎
草木の香りに包まれたことは、ありますか?
私は故郷の町の海の見える原っぱで遊んでいました。

春はほのかに甘いサクラの花びらを集めたり、菜の花によく似たナズナで草遊びをして、日陰に咲いているドクダミのきつい香りに鼻をつかれました。

主人公のとわの小さな世界は、家の庭の木々や草花の香りが日々の暮らしを豊かにしていたのでしょうか。

✴︎✴︎
人生でまた大切なもののひとつに、一緒にいたいと思う誰かに出会うことが、あるかもしれません。

とわは、幼い頃は母とずっと一緒にいたし、愛されているという実感もありました。それが愛着心を育み気がつかないうちに誰かを求めていたのでしょうか。とわは1人じゃない、いつもそばに誰かいたのですね。


✴︎✴︎✴︎
見えないことを補うために、耳を研ぎ澄ましたり、指先の感覚を鋭敏にしながら、匂いや香りを区別するセンサーがすごい発達するのでしょうか。

そして今は、音声で読み上げてくれることもできるから、更にできることが増えているでしょう。

私達とは違う感覚でイメージを膨らませているなんて、どんなふうになるのでしょう、ちょっと想像を越えて素敵だなと、思います。


◎今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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