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やさしさ故に苦悩する、少年と家族の物語〜読書記録 一人っ子同盟〜

読書記録 『一人っ子同盟』
重松清先生著
新潮文庫
2017年





図書館で見つけて最近重松先生の本を読んでいないなぁと思い、この文庫本を手に取りました。

言語や聴覚に課題のあるお子さんの教育を仕事にしていた私にとって、重松清先生の『青い鳥』は繰り返し読んだ一編でした。

重松清先生ご自身も吃音があり、自分の思いを充分に伝えられないもどかしさ、自分の話し方に注目される恐れなどがあったのでしょうか。

代わりに、ことばにならない思いへの洞察は本当に深いと思います。

さて、まだまだ残暑の残る9月中旬ですが、静かに記録を書いてみます。


◎あらすじ
主人公は小学6年生の大橋信夫、ノブ。大きな団地に父母と住んでいる。

団地の友だちは小学1年生の時転校してきた藤田公子、ハム子だ。

実はハム子とあだ名をつけたのは、ノブだった。ハム子が転校してきたその日、担任の先生が黒板に書いた公子の名前を見て、

ふじた ハム子!

と、いってしまったノブ。クラスのみんなは爆笑した。だが一瞬のスキをついて、ハム子はノブの机に飛び蹴りを喰らわせた。

そんなハム子だったが、ノブと同じ団地に越してきたので、時々、団地の会館で遊んでいると見かけるようになった。そしてお互い一人っ子であることを知る。


6年生になったある日、ハム子は小さな男の子と一緒だった。男の子はハム子にまとわりつくように遊びたそうだったが、、、。



夕日を背にした山々



◎感想
✴︎これは小学6年生の目を借りた家族の物語だ。
6年生11歳でも、家族の深い悲しみを慮り、自分の言動を押さえてしまうこともある。
そんな子ども時代を過ごしている人も少なくはないのかもしれない。

大人、親は子どもにとって心理的、経済的、社会的な支えであるはずだが、時にはそれがくずれてしまうこともあるだろう。

親もただの1人の人間だから人生の波乱に飲み込まれてしまったら、自分が立っているだけで精一杯だろう。

でも、そんな子ども時代を送った人も「社会に出て幸せになってほしい」と、いうメッセージを込めて重松清先生もこの物語を書き上げたらしい。



✴︎✴︎子ども時代に大切なものは、たくさんあるけど、子ども同士で遊んで遊んで、その中からものの扱い方とか、誰かから教えてもらう楽しさとか、小さな子どもたちとどう関わるかとか、自然に身につけていけるといいなぁと思う。


✴︎✴︎✴︎この物語の根底には、団地に住むそれぞれの家族が抱えている哀しみや他の家族の哀しみを共有しながら暮らしていく、やさしさとやるせなさみたいなものが流れているような気がした。

私の家族には表面的には4人家族で両親共稼ぎで、地域のみなさんにお世話になりながら、なんとか私と兄を自立させてもらった普通の家庭だ。

だがたった一つ、父の出自が謎に包まれている。最期まで自分の出自を明かさなかった父の思いを考えると、ファミリーヒストリーに感化され、ルーツ探しをしようとする足が止まってしまった。

どんな家族にも、切なくてやるせない物語はあるのかもしれない。


アベリア




◎最後までお読みいただき、ありがとうございました😊

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