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バランスが取れないと悩む人へ

バランスは、取りたいですか?
私も『バランスを取る』って、難しいなと思っていました。

体のバランス、心のバランス、栄養バランス、ワークライフバランス、左脳と右脳のバランス…

こうして『バランス』という言葉を羅列みると、「はぁ」っと思わずため息。バランスの継続は難しい

でも、よくよく考えてみたら、バランスが取れるのは、開拓精神があるからなのではないかと思う出来事がありました。


継続という感覚


バランスが取れている人のことを、ここでは『バランサー』と表現することにします。私のバランサーのイメージは、コツコツ同じことを繰り返しできる人。

私の場合、始めることは得意でも、長く続けることに息切れをしてしまうタイプ。心の余裕があれば継続が可能、という感じ。

それが、息を吐くように続けるにはどうしたらいいんだろう?ヒントを探し続けていた時、村上春樹さんのエッセイに出会いました。

「体が今感じている気持ち良さをそのまま明日に持ち越すように心がける。長編小説を書いているとかと同じ容量だ。もっと書き続けられそうなところで、思い切って筆を置く。」

村上春樹著『走ることについて語るときに僕の語ること』文春文庫

「ストン」と腹落ちしたこのフレーズ。はぁ、思い切って筆を置いてしまえばいいのか。つまり腹八分の要領で繰り返したらいいのか。

肩の力が抜ける思いでした。

よし、この通りにやってみよう。

このフレーズに出会ってからは、調子がいいときも悪いときも、いつもこの言葉の感覚を思い出し、今までよりも継続することができるようになっていったのです。


始めることへの恐怖感の誕生

しかし、また新たな壁にぶつかることになりました。今度は、新しいチャレンジへの恐怖を感じるようになったのです。

「始めたところで、また続けられなかったらどうしよう」というもの。

これは今まで感じたことのなかった感情で、続けることを意識し始めたからこそ、初めて炙り出された恐怖という感情だったのです。

恐らく、喪失を恐れる感情。

恐怖という痛みを感じるくらいなら、初めから「始めること」をしなければいいのではないか。いつの間にかそんな風に考えるようになっていました。


私にとって、始めることには快感があります。自分で自分の未来を祝福し、ワクワクするから

それは、ものすごく陽のエネルギーが放出される体験。ですが、「始めることと継続することのバランス」を考えた時、その陽のエネルギーをも打ち消してしまう「恐怖」という陰のエネルギーが放出されたのでした。

もうそんなエネルギーが必要なことはやらずに、省エネで生きようか、と。

もう嫌だ。
そんなこと、あれこれ考えることさえもめんどくさい。


結果、「何もしない」と決めたのです。それが去年の年末のこと。「2023年は何もしないぞー」と目標まで掲げました。


それでこの3カ月、本当に何もしなかった。
するとどうだったか。
なんと、それはそれでとても不健康なことでした。

何もしなかった結果



何もしない選択は、自分で何かを始めようとすることもしないし、誘われても大体断る。とは言え、全く行動していないのかと言われると嘘で、何かを始めたい気持ちはずっとありました。

けれど、続けられない恐怖感がしこりとしてあって、そこが解消されないまま。だから何かを始めようとしても一向に始まらないのです。私が「始めたい」って、本気で思ってなかったのです。

年が明けてから、大きな仕事の話が舞い込みました。これはやらねば‥!と一度は思ったものの、関係者と話をすればするほど、だんだんやる気が萎んでいき、最終的に「やっぱりやめます」という結果に。

全然だめじゃないか。

ぐるぐる頭を悩ませる時間が、長すぎました。あまりにも勿体ない。でも決めたくても決められない。選択肢が多すぎたのでしょうか。

不安と恐怖が私を占拠し、余計動けなくなってしまっていました。


待て待て。そもそも私は、バランサーになろうとしたのでした。現状うまくいっていないのであれば、「何もしない」という方向性はちょっと違うのかもしれない。

そこに気づき始め、次はどういうスタンスでいようかと模索し始めました。


筋肉の"開拓"をしよう

「何もしない」生活をしていたある日、パーソナルトレーニングに通うようになりました。今年は体づくりをすることが目標の一つにあったからです。ずっとやってみたいなと思っていたことで、やっとコミットしようという気持ちに。目指せ美尻。

そのパーソナルトレーニングの体験会に行った時のことです。

「お尻を鍛えたいです」
トレーナーにそう伝えて、お尻を鍛えるトレーニングを体験させてもらいました。その時に、びっくりするくらいお尻がプルプル。お尻の外側の筋肉が、めちゃくちゃ痛い。

「うわぁ。開いてゆく〜。」と声がしました。脳内で。ホントに。

私は登山がライフワークなので、蹴り上げる力が一般的な女子よりめちゃくちゃあります。でも全体の筋肉は不均一。具体的には、縦方向は強いけれど、横開きは全然だめ。弱い筋肉と強い筋肉の差が明らかで、強いところばかりが発達して、弱いところを補っていたのです。

弱さを強さで補うって、美しい響きのようにも聞こえますが、本当のところ"強さ"が優っているモノだって、支えて欲しい気持ちがあると思うのです。

強い筋肉にも、弱い筋肉にも、なんだかとても苦しい想いをさせていたんだなぁ。

でもこの発見が面白いなぁとも思ったのです。

長時間歩くことで膝の痛みを感じたことが、今回トレーニングをしようと思ったきっかけなのですが、体力はあるし。私、結構イケてる方かと思っていたのに、こんなに脚の筋肉がバランスが悪かったなんて自覚していませんでした。

恐らく何十年と歪みが蓄積されていたし、これを続けたら年齢が上がるにつれて体のあちこちが痛くなっていくのでしょう。

「私は今のままでバランス取れているから大丈夫!」って思っていたら、本当は体に負担がかかっていて、体調を崩してしまって‥。こういう展開って、あるあるだよなぁ。

自分のことは、自覚が無いだけで、まだまだ知らないことがたくさんあります。お尻がプルプルしてしまった体験は、私としてはとてもワクワクする体験でした。

未開拓な部分が開拓されていく面白さでした。


こうやって、未開拓な筋肉を開拓して使えるようにすることで、体のバランスは整っていきます。ということは、バランスの取り方って、「未開拓な部分を開拓していくこと」なのではないか。ただ目の前にあるものを「続けていく」というルーチン的なイメージではなくて、もっと静かなアクティブさがそこにあるのではないか。

そうか、だからバランスが大事なんだ。バランスを取るって、動かないことではなかった。動くことでバランスは取れるものなんだ。


まだ開拓していない要素を開いていくことは、その要素が育つまでは時間がかかるかもしれないけれど、長期的にバランスが良くなっていくのです。

この長期的に物事が見れる人こそが、『バランサー』。つまりは、本当の意味でバランスの良い感覚の持ち主なのではないでしょうか。

真のバランサーとは

バランサーは、じっと何もせずに動かずに止まっていることはしないのです。

真のバランサーは、もともと持っている要素を見つめ、未開拓な部分を開拓するチャレンジ精神を持っています。

とても探究心があり、かっこいいではないか。

パーソナルトレーナーがこんな事を言っていました。

「パーソナルトレーニングを始めて2〜3ヶ月経つと筋肉が鍛えられてきます。でもこれって、使っていなかった筋肉を使い始めた段階。ここで辞めてしまうと、また筋肉は元に戻ってしまうので要注意。継続が大事です。」

やっぱり村上春樹さんのこの感覚ですね。


「体が今感じている気持ち良さをそのまま明日に持ち越すように心がける。」

「うわぁ。開いてゆく〜。」と感じた、あの快感を、日々持ち越していこう。

未開拓な部分がある人生って、楽しい。


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