見出し画像

息子が戸籍から抜けた日、空はいつもと変わらなかった

今日の空は真っ青で、真っ白い雲が額縁のようにまわりを縁取っていた。気持ちのいい朝だということは間違いなかった。ベランダに洗濯物を干す、ありふれた朝。でも、決定的に違うことがひとつある。

息子が入籍した。

ふたつの家族でお祝いした時の気持ち。それは、嬉しくて、誇らしくて、楽しみで…そこにいる全員が幸せな気持ちを共有した、素晴らしい時間だった。幸せをシェアしてくれた若いふたりに感謝し、心からふたりの幸せを願っている。

それなのに、それなのに・・・。
私はこんなにも幸せな母親のはずなのに、ひとりになり、静かな時間を過ごすと何とも言えない寂しさが襲ってくる。

新しく戸籍を作るということは前の戸籍から抜けるということ。つまり我が家の戸籍から長男がいなくなった。4人家族は3人家族になった。


息子からそろそろ入籍しようと思ってると言われた時のこと。

「そんなことは考えたくないけれど、もしも何かがあって病院へ運ばれたりした時に、一緒に住んでいても入籍していないと連絡が自分たちの所には来ないって考えたら、それは嫌だなと思って。」
と入籍に踏み切る理由を話してくれた。

うんうんと聞きながら、正直な私の気持ちは頭を石で殴られたようだった。

何かあった時に最初に連絡して欲しいのはもう私や夫ではなくて、別の人なんだ

多分とっくにそうなっていて、当たり前のことなんだけどすごくショックだった。子離れ、出来ていたつもりだったのに、まだまだだったという情けなさ。

そんなことも気が付いてなかったなんてちょっとバカみたい。でも、息子に言われるまで、そんなふうに考えたことがなくて、思いつかなかった。

息子が病気になった時に本気で心配してくれる人、看病してくれる人がいることは心から嬉しい。安心だ。私は息子より先にいなくなるのだから。

だけど、

もう熱を出した時に看病するのは自分じゃない、
おでこにそっと手をあてるのも、スープを作るのも自分じゃないんだ

そう思うと、心にぽっかり穴があいたようだ。

おそらく、こんな母親の気持ちに息子は気づいていない・・・そして、気づいてほしくはない。幸せな時間に、水を差したくない。希望に目を輝かせて、ふたりで前に進んでほしい。後ろを振り向かせる原因になんてなりたくないのだ。

寂しいけど、悲しくはない。
自分が情けなくはあるけれど、それを見なかったことにはしないで、この寂しい気持ちも今は大切に抱きしめていよう。

親って、いくつになっても新しい経験をする。息子が結婚するのは初めてだし、子どもが何人かいたって、ひとりひとり全然違う人間なんだもの。

自分なりに一生懸命子育てと向き合ってきたんだから、今、寂しい気持ちになったっていい。泣いたっていいや。

そうして、私も前を向いて歩いて行こう。

一番近くにいる人ではなくなったけれど、いつまでも私は息子の母親だ。それはいつまでも変わらない。

この記事が参加している募集

子どもに教えられたこと

いただいたサポートは、素敵なnoteのサポートや記事購入に充てさせていただきます✨