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拝啓、モラハラなお父様へ

私が生まれた時、あなたはどう思いましたか。
嬉しかった?それとも失敗したなって思った?
かわいそうって思った?だから、私にだけ優しくしてくれたのかな。
その同情的な偽りの愛は、氷のようだった。
偽物の愛情。それが欲しいのなら、どうぞもっていってください。

あなたに好かれたかった。本当の意味で愛されたかった。
でもあなたが怖かった。罵声が飛び交う家の中は酸素なんてなかった。
あなたが帰ってくると、空気が重たい。
いっそ帰ってこなければいいのにって何度、思ったことだろう。

洗面所に髪一本でも落ちていたらダメ。電気の消し忘れは罵声の対象。
分かってるのに心にプレッシャーがかかって、守れない。
すると、あなたの鋭い言葉が飛んでくる。
「お前はバカか」と。「とろくさい」と。「そんなんじゃ、笑われる」と。
ボロクソな言葉で心は、何度も殺された。

食事の時間が大嫌いだった。無言で食べるご飯は味がない。愚痴を聞かされるご飯。ため息がおかずがわり。それが嫌で、イヤホンをして食べた。それでも心は辛かった。
だって、目には光景が入ってくるから。

耳をいくら塞いでも目は塞げない。見たくない現実が毎日、眼球に映し出されていく。
もう、いっそ何もみたくないと思った。何も聞きたくないし、笑いたくもない。
なのに、笑わなきゃいけなかった。家の中での私はピエロだったから。

決定的に心が殺されたのは、スーパーの駐車場で殴られたあの夜。私が全て悪いと言わんばかりの顔で、頬に拳を突き出したあなた。浮き彫りになった問題だけ照らされて、私は悪者になった。

そうなったのは誰のせい?そんな議論が無駄だと知っていたから、悪者のままでいいと思った。何も聞いてくれない。私が悪いだけ。いつもそう。それでいいや。すべて面倒だ。

殴られたあの日以降、記憶がない時期がある。知らない男と微笑むプリクラ。そこに映っているのは笑顔に自分なのに、相手が誰なのかまったくわからない。その瞬間、何をしていて、どうやって離れたのかも覚えていない。自分が何をしていたのかも全く記憶がない。もしかしたら解離ってこういうことなのかもと、ぼんやり実感した。

モラハラなあなたと遠ざかれた私は、ちゃんとした大人になれているのかな。いまだに大きい声にビクビクして、背後から話しかけられるのが苦手な自分が情けない。誰かの裏に見え隠れする父親の残像に震える自分が嫌いだ、

あなたは、一度でも私の頭を撫でてくれたことあったかな。私にはそんな記憶がないよ。
触れられなかったのかな。それとも、触れたくなかったのかな。私はあなたの子どもとして、ちゃんと受け止められていたのかな。そんなことを悩むほど脆い親子の絆。父の日が近づくたび思い出す。最低で一番愛してほしかった父親のことを。

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