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外資テック系の転職活動① 採用側は何を考えているのか?

今回のトピックは、転職活動についてです。
私は今までのキャリアで2回転職をしましたが、2回とも総じて上手く行きました。希望の会社には幸運にも全てオファーをいただきましたし、自分の選択自体も、私にとっては正解でした。
2社目でチームマネージャーをしていた時期は、チームの拡大のタイミングや退職者のバックフィルも含め、合計5人の採用をHiring Managerとして行いました。また、他のチームの採用活動のパネル(*採用を行うマネージャーではないが、面接官に入って評価を行う担当者のこと)に入ることも多く、合計10以上の採用枠の意思決定に関わっています。
転職対策の記事は数多くありますが、多くが転職系のサイトやサービスへの誘導が主目的になっているため、一般的すぎることが書かれていて重要な部分がきちんと書いてある記事はあまり無いな…と感じています。
私が経験した領域は、外資系×テック×営業職のみですが、その分転職準備の勘所がもっと具体的にイメージしやすい内容を紹介できればと考えています。
①採用側は何を考えているのか
②転職者側におすすめの面接準備
③その他お役立ち情報(オファー交渉、その他)
今回は、①採用側は何を考えているのか です。

「ヘッドカウント」と「Hiring Manager」とは

日系にいると馴染みが少ない言葉かもしれないですが、外資の転職活動において「ヘッドカウント」と「Hiring Manager」を理解することは必須です。
各組織やチームのビジネス規模やその後の成長見込み、どのくらいその組織に本社からの投資が入っているか次第で、チームに「ヘッドカウント(=採用ができる枠)」が生まれ、そのチームのマネージャーは「Hiring Manager」として採用活動を開始します。あるいは、退職者が発生したら、退職により空いた「ヘッドカウント」を埋めるための採用活動が始まります。(バックフィルの「ヘッドカウント」が取れないケースもあります)
つまり、多くの場合「Hiring Manager」がその採用活動の最終意思決定者です。私が採用活動をしていた時にも、自分の上司や更にその上の上司に面接に入ってもらい評価を聞くケースもありましたが、あくまで最終的な意思決定者は「Hiring Manager」である私でした。
理由は割愛しますが、マネージャーが「ヘッドカウント」を取ることは大変です。当然自分の組織の業績を伸ばすために欲しいのですが、中々取れません。貴重な貴重なヘッドカウントなので、ベストな候補者を採用したいという気持ちは強いはずです。その一方で、特に退職者の空きを埋めるケースにおいては、退職者の発生により元の仕事量を少ない人数で回している状況のため、一刻も早く優秀な候補者に来て欲しいと考えています。

どういう人を採用したいのか

一言で言うと、「現在のチームが抱えるビジネス課題と、その課題を解くために練られた今後のチームの成長戦略と合う人材を採用したい」です。当たり前すぎるように聞こえますが、採用側として色々な候補者と面談していると、面接準備の段階でこの前提を捉えられていない方達が多いことも事実です。
次に、①スキルと経験、②コンピテンシー(行動特性)、③カルチャーフィット、に分けて説明します。

①スキルと経験
チームの課題と成長戦略、それを実業務に落とし込んでいくと、必ず必要なスキルセットが明確になります。
中途採用は即戦力が基本なので、その業務に必要なスキルを持っていれば持っているほど望ましいのは当然のことです。
ですが私が更に重要視していたことは、チームが必要としているのに既存のメンバーが誰も持っていない重要なスキルや経験を持っているか、という点です。
必要なスキルや経験であっても、既存メンバーの多くが持っているものであれば、入社後にトレーニングは可能です。ですが、成長戦略を実行する上で必要なのに、既存のメンバーが持っていない知識や経験(営業の場合は人脈なども)は、Hiring Manager にとっては喉から手が出るほど欲しいものです。

②コンピテンシー(行動特性)
簡単に言うと、「成果を出し続ける素養があるか」です。
社会人をある程度の年数経験していると、当然何度か成功していて、何度か失敗もしているはずです。候補者の方達は全員、自分の成功体験や出した成果を履歴書に書いたり、面接で話して下さります。採用者が見ていることは、成功体験そのものではなく、その成功に再現性はあるのか、です。
具体的に挙げると・・・
課題はどのように特定し設定したのか、その裏側に論理的な思考はあるか。
課題に対しどのように戦略や戦術を立てたのか、どのように考えた結果そのプランを選んだのか。
戦略や戦術を実行する上で、何が重要なポイントで、それをクリアするためにどのように進めたのか。
実際に進める中でのブロッカーは何だったのか、それをどう解決したのか。
結果はどうだったのか、今から振り返るとどこが成功で何が反省か。
・・・このような深掘りをしていく中で、その候補者の、論理的思考力や戦略性、コミュニケーション能力、達成マインド、リーダーシップやオーナーシップの強さ、成長意欲など、その業界で「成果を出し続ける」ために必要な素養や行動特性が浮かび上がってきます。
長い間一緒に働く相手を探しているHiring Managerにとって、前職での1回の成功にはあまり興味がありません。環境が味方をするケースもその逆もあり得ることも知っているので、成果は時に本人だけのものではないと思っています。そうではなく、「どんな環境でも、会社が変わっても、ビジネス課題が変わっても、長期にわたって高確率で成果を出し続けることができる人材なのか」を知りたいのです。
完璧な候補者はいないので、こちらも①と同様に「入社後にトレーニングでカバーできるか否か」で優先順位をつけていました。例えば、私がアソシエイトレベルのメンバーを採用した時には、リーダーシップはその候補者が昇進するまでの期間につけてもらえれば良いと考えていました。(リーダーシップは能力開発が可能な分野です)一方で、営業にとって必須の「コミュニケーション能力」などは譲れないポイントとして定義していました。「達成マインド」や「成長意欲」など、トレーニングで引き上げることが難しいコンピテンシーで重要なものは、もちろん譲れないポイントです。
その業界やポジションで「成果を出し続ける」ために必要なコンピテンシーは何か。そのコンピテンシーの中でトレーニングが不可能なもの(候補者が最初から持っているべきもの)は何か。採用時点から必要なものと、採用後に徐々に身につけてもらえれば良いものは何か・・・。これらを考えて優先順位をつけ、候補者と話しながら判断をしていました。

③カルチャーフィット
最後に重要な点はこちらです。
会社のミッションやビジョンに共感しているか。会社のコア・バリュー(価値観)に合うか。既存のチームメンバーと良好な人間関係を築けるか・・・などです。
どんなに優秀な人材であっても、カルチャーがフィットしないようであれば採用しません。理由は簡単です。仮に10人のチームだとして、1人の人がネガティブな空気を発したり、チームの和を乱すような言動を取ると、その他9人メンバーの士気やパフォーマンスが下がるからです。その1人がどんなに優秀であろうと全く割りに合いません。
カルチャーとして何を重視するかは会社次第、チーム次第だと思いますが、非常に重要なポイントです。

採用活動の進め方

基本的なプロセスは以下です。
①リクルーターによる履歴書や会話でのスクリーニング
②Hiring Manager による面接
③パネル面接
④Hiring Managerによる最終判断
⑤オファー

①リクルーターによる履歴書や会話でのスクリーニング
採用チームが、Hiring Managerの要望に合わせた候補者を探し、履歴書の内容を見て募集しているポジションに合うかを判断したり、電話やZOOMなどで話した上でスクリーニングを行います。
自分で応募してきた候補者の案件、リクルーター自身がLinkedInで声をかけた相手、従業員の紹介(リファラルと呼びます)など、色々なチャネルから候補者を集めます。

②Hiring Manager による面接
リクルーターから連絡を受けた候補者を確認し、面接をしたいと思った相手と面接を行います。
どのようなポイントを見ているかは前述の通りで、ここで自分が採用したい(あるいはもう少し話を聞いて判断したい)と思った候補者のみを③に進めます。つまり、最終意思決定者と1番最初に面接を行うケースが多いのです。
ここで失敗したら逆転はない…くらいに思っていた方が良いと思いますし、候補者の立場から見ても、自分の直属のManagerと合わないようであれば入らない方が良いと思います。
Hiring Managerにとっては、どのような経路から来た候補者であっても全員同じ候補者です。採用側としてこの段階の候補者と会話していると、特にリクルーター側から声をかけた方達は準備不足で面接に来られる方が多かったように思います。一方、Hiring Managerとカジュアルチャットをして、受けるか受けないかを決めてから面接…と言うケースもあります。Hiring Managerと話すときは、カジュアルチャットなのか面接なのかを必ず確認し、面接であれば「1次面接」ではなく「最終意思決定者との面接」だと思って準備をしてください。

③パネル面接
Hiring Managerの他に数人が面接に入り、候補者を判断します。一緒に働くことになるチームのメンバー数名と、業務で関わる別部署の数名、Hiring Managerの上司、などが入るケースが多いです。
Hiring Managerが事前に「あなたには候補者のこのスキル・コンピテンシーを判断して欲しい」など明確な依頼をそれぞれのパネル(面接官)に出していて、それに従って面接が進むケースが多いです。
リクルーターに聞いたら教えてくれるケースもあるので、聞けるのであればそのポイントを確認した上で面接準備をすると良いと思います。

④Hiring Managerによる最終判断
自分がつけたスコアと、パネル面接の評価を確認し、どの候補者を採用するのか最終判断をします。
私は、パネルの方達と一度ミーティングをして最終判断を行うことも多かったです。
決め手にかける時は、最有力の候補者には答えを出さずに(オファーも出さないしお断りもしない)他の候補者と面接を続けるケースもあります。

⑤オファー
Hiring Managerが「採用」の判断をしたら、晴れてオファーです。前述の通り「ヘッドカウント」が空いている分しか「採用」は出せないため、まずは最も採用したい候補者にオファーを出します。そこでオファーを受諾してもらえれば採用活動終了、受諾してもらえなければ2番目の方にオファーを出すか、他の候補者を探し続けるかと言う判断になります。
逆に、採用したい人が2人いるけど1番目の方で決まってしまった…と言うケースにおいては、他のチームで採用活動をしているマネージャーに「こんな良い人がいるけど興味はあるか」と聞いてみるケースもあります。(ただし面接は②からやり直しです)

最後に

いかがでしたでしょうか。
新卒採用とプロセスも視点も全く異なるのはもちろん、日系と外資で違うところも多いのではないでしょうか。
私は逆に中途採用は外資しかわかりませんし、外資の中でも色々なパターンがあると思います。(ケーススタディやプレゼンテーションが入るケースもありますし、私も経験しました)
あくまで私が最も経験したパターンを書きましたが、これから外資系に初めて転職活動される方のお役に立てたら幸いです。

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