隠れすぎた名盤 | GO AHEAD -僕の描く夢- 第55回

世の中には「隠れた名盤」というモノがたくさん存在する。そのうち、幾らかは数十年経ってから評価されるものも存在している。

だが、ほとんどが世に評価されることもなく、一部ファンにのみ熱狂的な支持を受けているという作品ばかりだ。今日は、そんな「隠れた名盤」を一枚紹介しよう。

そもそも、「和幸」というグループをご存知ないという方も多いかもしれない。だから、今回はちゃんと紹介しよう。

「和幸」という名前は、ザ・フォーククルセダーズサディスティック・ミカ・バンドで活躍された加藤和彦さんの「和」と、THE ALFEEで現在も活躍中の坂崎幸之助さんの「幸」を組み合わせたものである。

残念ながらメンバーの加藤和彦さんが2009年に自ら命を絶ってしまったため、この“偉大な隠れた名グループ”を御目に掛けることは二度と出来ない。

でも、いつかは取り上げられてほしいし、取り上げられなければならない。わたしは、このアルバムを「日本のフォーク界の世代交代」を見つめ直す上で、最も重要な位置付けにあると考えている。

ここで思い出してほしい。00年代といえば、ゆずやコブクロといったフォークデュオが再び全盛を極めた時代だ。そんな中、和幸というオールドのフォークシーンでは“大物”とも呼べる二人がフォークデュオという形でデビューした。

もしも、これが数十年前なら。少しは状況が違っていただろう。しかし、今ほど配信も繁栄しておらず、サブスクリプションの音楽アプリもない時代に、オリコンチャートで最高29位という成績。売上がすべてとは口が裂けても言えないが、決して良いとは言えない。

わたしが和幸に出逢ったのは加藤さんが亡くなられてだから、加藤さんのご存命中にCDを購入することは出来なかった。亡くなられてから、この和幸というフォークデュオの良さに気付いたのだ。

……悔しい。本当に悔しい。一度だけでいい、お話したかった。

肝心のアルバムの方だが、時にヒストリカルで、時にユーモラスな『聴くJ-POP以前の日本のポピュラー音楽ヒストリー』となっており、J-POP以前の音楽シーンを手っ取り早く抑えておきたいという方にもおすすめできるし、フォークソング初心者の方にもオススメできる非常に人懐っこい一枚となっている。

カヴァー曲の「黄昏のビギン」「見上げてごらん夜の星を」は現代でも歌い継がれている名曲だ。

「あの素晴しい愛をもう一度」の作曲者である加藤和彦さんと、“フォークソングの伝道師”と名高い坂崎幸之助さんの渾身の一作。

「和幸」をこのまま埋もれさせてしまうのは、あまりにも勿体なさすぎる。

いつでも、どこでも、優れた音楽に触れられる今だからこそ、このフォークデュオグループを多くの方に知ってほしい。そう切に願い、今回のエッセイを締めさせていただく。

2019.06.23
Yuu

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