在日日本人

サヨクでもなくウヨクでもなく「在日の日本人」として

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サヨクでもなくウヨクでもなく「在日の日本人」として

マガジン

  • 目川探偵事務所The GORK 4部「レナトゥスの闘い」編

  • 目川探偵事務所The GORK 3部「煙の如き狂猿」編

  • 目川探偵事務所The GORK 2部「十龍・チェルノボグ」編

  • 目川探偵事務所 The GORK 1部「沢父谷姫子の失踪」編

  • 養鶏場惑星

    「養鶏場惑星」を一冊にまとめました。最終章と、全ての謎が解き明かされる6章は、年齢制限の意味も含めて、課金してあります。

最近の記事

The GORK  41: 「あの素晴しい愛をもう一度」

41: 「あの素晴しい愛をもう一度」  俺とリョウの二人は、博物館脇の植え込み前のベンチと車いすにそれぞれ腰を下ろして、煌々と輝く満月を見上げていた。  ベンチは盛り土の上に設えてあって、リョウがその頭を俺の肩に預けて寄り掛かるには、丁度いい高さだった。 「こうして二人で月を見るなんて久しぶりだな、、。」 「えっ?所長と一緒に月を見た事なんてあったっけ?」  俺は怒ったようなふりをして隣のリョウに視線を走らせる。  リョウは俺の頭に巻き付けた腕の先の指で、監禁生活の間にすっ

    • The GORK  40: 「サムライ」

      40: 「サムライ」  まだ硝煙の匂いが立ち込める銃を両手に握り、それを煙猿に突きつけていたのは、裸の沢父谷姫子だった。  剛人を庇うかのように、ジリジリと、その位置を床に倒れ込んだ剛人に近づけている。 「面白いなお前、、、誰だ、、?」 「沢父谷姫子。」  動き出した人間剥製、沢父谷姫子が唇も動かさず、くぐもった声で応えた。 「沢父谷の顔面は外れるように作った、、それを被っているのか。」  沢父谷との間合いを取り戻しながら、煙猿が楽しそうに反応する。  とても銃撃を受けた直

      • The GORK  39: 「モンキー・マジック」

        39: 「モンキー・マジック」  剛人は一瞬、煙猿に己の背中を見せ、そこから振り向きざま「鞘」を振り下ろした。  常人にとっては神速、、、煙猿には、わざと見せた背中自体が攻撃の的になりかねないギリギリのスピード。  打ち落とした鞘は、何か目に見えない鋭利な刃物によって見事に両断されていた。  その鞘を追いかけるように横払いに撃った剣が、一の太刀の時のように跳ね返される。  剛人は剣を青眼に構えたまま、三度目の間合いを開けた。 「ワイヤーか、、また面倒な得物だな。私の居合いと

        • The GORK  38: 「じんじんさせて」

          38: 「じんじんさせて」 「その悪い癖を止めるのと一緒に、人形も返してもらえると有り難いな。」  煙猿は、突然後ろからかけられた声に驚きもせず、ゆっくり振り返った。  数メートル先に月光を浴びた男がうっそりと立っている。  なめし革のやや丈の長いジャケットが、月の光に濡れているように見えた。  左手には長刀を、鞘ごとぶらさげるように持っている。 「この俺が気づかないとはな、、、あんた、何者だ?」  感覚がオーバーフローしてる、薬を多く摂りすぎているのかも知れないと煙猿は考

        The GORK  41: 「あの素晴しい愛をもう一度」

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        • 目川探偵事務所The GORK 4部「レナトゥスの闘い」編
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        • 目川探偵事務所The GORK 3部「煙の如き狂猿」編
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        • 目川探偵事務所The GORK 2部「十龍・チェルノボグ」編
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        • 目川探偵事務所 The GORK 1部「沢父谷姫子の失踪」編
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        • 養鶏場惑星
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        • 薔薇の花/灰色の黴
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        記事

          The GORK  37: 「ミスター・ムーンライト」

          37: 「ミスター・ムーンライト」  煙猿が鼻歌を歌いながら上機嫌で俺の元に帰って来た。  なんとその曲はビートルズの「ミスター・ムーンライト」だった。  ・・・もしかして、今夜は見る者を酔わせる程の美しい月が出ているのかも知れない。  それに煙猿は、資金繰りがつき薬の買い付けの目処がたった安心感で、いつもより多くの薬を服用している可能性もあった。  俺は、ここ数日の監禁生活の中で、煙猿という人間の人となりと日常をかなり知ることが出来た。  悪党というわけでは、ないのだ。

          The GORK  37: 「ミスター・ムーンライト」

          The GORK  36: 「勝手にしやがれ」

          36: 「勝手にしやがれ」  ボディガードの福西は、少しの間、目を閉じて、自分の耳に挿入してあるイヤホンから流れ込むムラヤマ達の猥雑音を締め出し、代わりに先ほど確認したトイレの中にある小窓の様子をもう一度思い出した。  個室が外部に晒されている箇所は、ドアを除けばその小窓しかない。  それは隣の空き部屋のものだったが、この手の建物では、しつらえが部屋ごとに変わる事はない。  ムラヤマ達がいる背後の部屋にも同じ小窓がある筈だ。  重要なのは、その小窓の存在より、隣の建物との間

          The GORK  36: 「勝手にしやがれ」

          The GORK  35: 「我が良き友よ」

          35: 「我が良き友よ」 『この仕事の報酬で、薬を何グラム購入するか、、』  薬を大量に買い付ければ、薬に枯渇していると思われ、こちらの足下を見る判断材料に使われるだろうし、かと言って少量の購入では、半島からの影響を下げる為にストックを増やすという目的が達成出来ない。  煙猿はそういった事を、ある人物を待つ間に、一人考えていた。  これから、人一人を殺すというのに、その事に付いては、何の緊張感も不安もない。  待ち人とは、煙猿が数日前に深層催眠を仕掛けておいたクラブアポロ

          The GORK  35: 「我が良き友よ」

          The GORK  34: 「氷の世界」

          34: 「氷の世界」  煙猿の説明によると、俺が受けた第一段階の注射では、身体の剥製化はまだ始まらないのだそうだ。  ここでは極端な身体の不活性化だけが見られ、体内でプラスティネーションの準備だけが進められる。  それも第二液を使わず、数週間その状態を放置しておくと、身体は元に戻ってしまうらしい。  しかし、過去の複雑かつ大仰なプラスティネーション技術と比べると、この二薬の体内への注入だけですむネオ・プラスティネーションは革命的なのだそうだが、浅学の俺にはそこのところがよく

          The GORK  34: 「氷の世界」

          The GORK  33: 「くちなしの花」

          33: 「くちなしの花」  月の光りもない闇の中で、庭園の植え込みに潜みながら、博物館の様子を観察する。  博物館の周囲の地面には、アッパーライトが埋め込んであって、その幾つかが未だに点灯していた。  そのせいで、博物館は巨大な石碑のように見える。  剛人さんは視線を左右に走らせると、迷わず右前方に進み出した。  博物館の裏手の方向だ。  僕も遅れないように必死でついて行く。  博物館の裏手に回ると縦長の大きなシャッターが目に飛び込んでくる。  剛人さんはそのシャッターの隣

          The GORK  33: 「くちなしの花」

          The GORK  32: 「年下の男の子」

          32: 「年下の男の子」  田沼工場地帯を縦貫する主幹道路からそれて、奥まった支道をしばらく走っていると、ヘッドライトの光の中に、東洋ケラミック製造山那工場と印刻のある大きなプレートが、厳つい門と共に浮かび上がった。  道は門前から左右に別れている。  それを見て剛人さんは、GT2000の進路を左にとった。  車の窓越しに工場の煉瓦積みの壁が、延々と続くのが見える。 「さっきのは、此所の裏門だ。正門の方は工場とは思えないほど豪華な作りだよ。勿論、正門から攻めるつもりはない

          The GORK  32: 「年下の男の子」

          The GORK  31: 「モンスター」

          31: 「モンスター」 「助けてやらなかったのか、薄情な奴だな。」  不意に背後から声がした。  俺は振り向きざま銃を撃とうとしたが、下からすくい上げて来るような金属の打撃によって、銃ごと弾き飛ばされていた。  目の前に、まさかりを肩に担いだ黒のセーターとパンツ姿の男が立っていた。  セーターもパンツもタイトな物だったので、その体つきのスマートさが際立っていた。  目立った装備といえば、背中に背負った小さなナップサックとベルトに挟んだ大型拳銃くらいのものだ。  おそらく俺の

          The GORK  31: 「モンスター」

          The GORK  30: 「夜へ急ぐ人」

          30: 「夜へ急ぐ人 」  俺が、この数日ずっと潜んでいた小倉庫の壁面は、コンクリート製で、凹凸が殆どない。  こちらから見ている限りでは、煙猿が屋上に上がる為に梯子を掛けた様子もない。  自分の指先だけで山肌のわずかな凹凸を見つけて登っていく特殊なフリークライマーか、かぎ爪の付いたロープを天井に投げ込んで、それをスルスルと上がっていく煙猿の姿を想像してみた。  やがてその姿に、オカマバーに貼り付けてあったポスターに登場する田崎修の甘い顔が乗っかる。  いや、リョウの話だと

          The GORK  30: 「夜へ急ぐ人」

          The GORK  29: 「ファンキー・モンキー・ベイビー」

          29: 「ファンキー・モンキー・ベイビー」 「君の所長さんは、煙猿にかなり肉薄していたようだな。煙猿は、一時期この国で半島のスパイもやっていたようだ。そこまで調べ上げている。私が、こうやって短時間のウチに煙猿にたどり着けたのは、所長さんの足跡をたどってのことだ。」   剛人さんは、そう言ってくれたけど、僕にはそれが慰めの言葉のように思えた。  あの憎めないけれど、探偵としての実力は今ひとつの所長が、半島がらみの男の身元に、そうやすやすと調査の手を届かせられるとは思えなかった

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          The GORK  28: 「人間狩り」

          28: 「人間狩り」  外の敵は、『十蔵とは違う。』と思った。  十蔵には、あれ程の執拗性はなかった。  第一、まがりなりにも自分が、昔受けた恩義を返す男なのだ。  では十蔵が送り込んできた他の刺客なのか、、俺はそう考えながら、ホットラインで結ばれているスマホを取り出した。  蛇食ならスマホをかけても問題ないだろう。  何故それに早く気がつかなかったのかと、不思議に思ったのだが、考えてみればあのチャイムを聞いてから、まだ数分しかたっていないのだ。  阿木から教えられていた蛇

          The GORK  28: 「人間狩り」

          The GORK  27: 「傘がない」

          27: 「傘がない」  一日目は、何事もなく過ぎた。  一度、阿木から例のホットラインを使って「何か用事はないか?」と連絡があった。  ホットラインのテストも兼ねていたのだろう。  その時、「あんたは何故、この倉庫の中に入ってこないんだ?」と訪ねたら、監視の死角を作りたくないからだという答えが返ってきた。  俺は、倉庫の高い天井につけてある明かり取り用の小さな天窓を見て、その言葉を納得した。  出入り口はドアしかなく、数少ない窓も人の頭がかろうじて潜り抜けられるかどうかの大

          The GORK  27: 「傘がない」

          The GORK  26: 「テントウ虫のサンバ」

          26: 「テントウ虫のサンバ」  阿木のアフロヘヤーの先端が、力のある夕日のせいで、陽炎のように揺らめいて見える。  その襟元は黒いシャツで、さらにその上着は白いスーツだった。  ただしそのスーツの袖口から出ている手は、金のチェーンで飾られているものの、コンビニのビニール袋が幾つもぶら下げているので、少し間抜けな感じがする。  それは、俺達の数日分の食料だ。  いやもしかしたら俺達ではなく、俺一人だけに用意されたものかも知れないが、、。  俺は、廃工場跡の敷地を両左右後方

          The GORK  26: 「テントウ虫のサンバ」